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吉田紳一郎
1960年12月生まれ、北海道出身。85年2月、金沢医科大学卒業後、87年5月獨協医科大学越谷病院眼科に入職。95年5月獨協医科大学病院眼科講師、2000年6月、獨協医科大学病院眼科助教授、02年医療法人社団玄心会吉田眼科病院理事に就任。02年JOHNS HOPKINS大学留学後、獨協医科大学准教授などを経て12年から函館市医師会理事。16年、院長に就任。21年、理事長に就任。
http://yoshidaganka.com/
※本サイトに掲載している情報は2021年9月 取材時点のものです。

INTERVIEW

この病院が50年にわたり地域に根付くことができているのは、訪れてくださる患者さんたちとの信頼関係があってこそだと思っています。そのために技術を磨くことはもちろん大切ですが、患者さんと一緒に病気に立ち向かう姿勢が一番大切です。「病は気から」という言葉があります。患者さんの病気だけに着目するのではなく、気持ちの部分にも注目して寄り添うことで、本当の意味の信頼関係が築けるはずです。

父が開業した眼科病院を受け継いで

吉田紳一郎

眼科医の父の姿を見て育ったので、当然自分が継ぐものだと思って育ちました。研修医時代に父の後輩で獨協医科大学眼科名誉教授である小原善隆先生の元に入局し、指導を受けました。小原先生は私に眼科臨床をはじめ、手術で最善を尽くすための心構え、患者さんとの向き合い方、医師としての信念など、多くのことを教えてくださいました。少しでも手を抜こうとするとすぐに見抜かれ、ずいぶん叱られました。研究も臨床も、どんなことでも一生懸命やることの大切さを学びました。

地元函館に戻ったのは、40歳を過ぎた頃です。それまで大学で研究や手術に没頭していましたが、年を取らないうちに生活の基盤を移したいと考えていたからです。父の経営する医療法人社団玄心会 吉田眼科病院に入りましたが、経営のことは父と母に丸投げだったので、感覚的には勤務医の頃とあまり変わりませんでした。父から受け継いだ後は、コンサルタントや税理士の方の力を借りながら私も少しずつ経営を勉強しました。精度の高い検査や手術のために最先端の機器を導入し、私が所属していた大学病院からも専門分野を持つ医師を招へいして、都市部の大学病院にも負けないレベルの高い診療を目指しました。院内も改装し、いかにも病院という感じのしないリラックスできる空間に変えました。また函館には一人暮らしの高齢者が多いので、通院手段がない方のためにバスでの送迎や往診もするようになりました。

人一倍努力して今の病院を築き上げた父のことは心底尊敬しています。父が大切にしてきた部分は残しながらも改善すべきところには手を加えて、地域が求めている病院を作り上げ、次の世代につないでいこうと考えています。

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守りに入らず、前に進み続けたい

医療法人社団玄心会 吉田眼科病院が今後も地域に必要とされ続けるためには、治療方法はもちろんの事、患者さんへの説明の充実、スタッフの教育など、従来やってきたことをより高いクオリティで時代に合ったものに変えていくことが大切です。最新鋭の機器を取りそろえていることは私たちの強みの一つですが、どんなに優れた機器を置いていても、医師やスタッフが使いこなせなければ意味がありません。技術を磨き、勉強会や学会に積極的に参加することで知識のアップデートをたえず続けていかなくてはいけないと思っています。

若い頃のような体力はありませんが、年齢を重ねることで技術や経験値は上がります。立ち止まれば衰えてしまうだけなので、守りに入ることなく常に前に進んでいたいです。本当は、もっと大規模な設備投資や分院の立ち上げも検討していたのですが、昨今の新型コロナウイルス禍で考えが変わりました。今すべきことは、病院を継続していくこと。継続は、簡単なようでとても難しいことです。父にも恩師の小原先生にも「患者さんに寄り添い、大切にしなさい」ということを何度も繰り返し言われてきました。患者さんの疾患を治すだけではなく、精神面も含めてトータルで治療するのが良い医師です。たとえば緑内障はストレスや悩みが原因で悪化することがあります。患者さんの話をじっくり聞くことで、疾患の背景にあるものが見えてきます。時代が変わっても、患者さん一人ひとりと丁寧に向き合う診療を続けていきたいと思います。

若い頃は、できるだけ無駄なことは避けたいと思っていました。でもこの年になると、一見無駄に思えることにこそ価値を感じます。無駄なことや面倒なことも、手を抜かずにやる。それが丁寧な仕事であり、その積み重ねで進歩していきます。人間なので損得勘定もありますが、本当に損かどうかはあとになってみないと分かりません。上達は、一足飛びにできるものではありません。面倒で省いてしまったことは、後からしっぺ返しがくるものです。若者のみなさんも、一歩一歩、一日一日を丁寧にこなしてみてください。面倒なことも自分自身のためと信じて、丁寧な仕事を心掛けてみてください。きっと、将来の自分の力となるはずです。

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