profile
横田剛直
1963年宮城県出身。83年コンピューター会社に就職。95年に独立。2015年、スカイホエールを創業し、18年にノンコードアプリ作成ツール「PuzzleApp」をリリース。11年3月東日本大震災で実家名取市の両親が被災したことをきっかけに、IT(情報技術)による安否確認・被災時生存ツールの企画を開始。20年新型コロナウイルス禍となり次々と閉店する中野区の名店を見て、地域支援を目的にアプリ「中野ファンクラブ」(中野区特化型情報アプリ)をリリース。22年、ビジネスプラットフォームアプリ「appTown®」をリリース。23年、同アプリに被災時の安否確認・救助支援機能を搭載。
https://skywhale.co.jp/
※本サイトに掲載している情報は2023年3月 取材時点のものです。

INTERVIEW

オイルショックにバブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災、新型コロナウイルス禍と激動の時代に浮き沈みを経験してきましたが、常に周囲の人たちの後押しで乗り越えてきました。この先も何が起こるか分かりませんが、IT(情報技術)という武器を駆使して世の中の役に立つことができればと思います。ITは日々進化しています。コンピューターが出始めたばかりのころは考えられなかったことですが、今やどんなことでもITで解決できる時代です。命という何よりも大切なものを守るために、ITの可能性を追求していきます。

地元が津波に飲み込まれていく光景を見て

横田剛直

1978年の宮城県沖地震に遭遇したのは高校3年生の時でした。バスで下校中に経験したことがない激しい揺れに襲われたのです。道路には亀裂が走り、すべての交通手段は止まってしまいました。高校生の私にはなす術もなく、バスを降ろされとぼとぼ歩きながら「また揺れたらどうしよう」というようなことを考えていた気がします。

進学を機に地元を離れ、東京のコンピューター会社に就職しました。バブル経済の追い風と仲間の応援を受けて32歳の時に独立し、企業や金融機関のシステム更改や導入計画に携わっていました。趣味のゴルフを楽しんでいたある日のことでした。突然すさまじい地鳴りとともに立っていられないほどの揺れを感じました。それが東日本大震災でした。とっさに宮城県沖地震の記憶がよみがえりました。震源が三陸沖と知り、すぐに仙台空港近くの名取市の実家に連絡しましたが電話がつながりません。翌日ようやく両親と連絡がついて無事を確認しましたが、ライフラインを断たれて避難所で過ごしていました。津波で流されて命を落とした同級生もいました。慣れ親しんだ街が津波に飲み込まれていく光景をテレビで見て、当時企画を進めていた5Gや(あらゆるものがネットにつながる)IoTといった技術で人の命を救えないかと真剣に考えるようになりました。

携帯電話以外のIoT端末を使ったソリューションも考えましたが、日ごろ持ち歩かない特殊端末よりも急速に普及の進むスマートフォンによる解決策を模索することにしました。またスマホアプリを開発するにしても普段使わないアプリは非常時にも使われないと考え、日常的に使える機能をメインにしようと考えました。

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普段使いの地域アプリを災害時にも

新型コロナウイルス禍で経済活動が大幅に制限され、私の活動拠点である東京都中野区でもなじみの店が次々と看板を降ろしました。世話になった街を少しでも元気にしたいと考え、中野区限定アプリ「中野ファンクラブ」をリリースしました。地域の店舗がアプリ内に出店すると、テイクアウトやデリバリーの受注、決済システムを無料で利用できる仕組みです。アプリによる地域支援の手ごたえを感じたことで、22年には全国の地域応援アプリ「appTown®」をリリースしました。地域ごとに飲食店や商店、サロンなどがアプリ内で簡単に出店できるプラットフォームです。ユーザーから見ると、地域のお店が一堂に会した商店街のようなイメージかもしれません。

今や多くの店舗がLINEやフェイスブック、ツイッター、ウェブサイトなど複数のツールで情報を発信しているために、消費者はほしい情報を探すのに手間が掛かります。appTown®では複数のツールに点在する店舗情報を一カ所に集約して、スマートフォンに不慣れなシニア世代でも簡単に情報を探せるようにしました。全国各地で少しずつ登録者が増えてきたところで、災害時の安否確認や救助要請ができる機能を搭載しました。身内間の安否確認アプリは既にありますが、救助が必要な場合は地域のネットワークが頼りです。appTown®ユーザーは、被災時の状況に応じて「問題なし」「要救助」「要支援」のいずれかをタップして安否を報告します。要救助の場合、「屋上で孤立」「がれきで脱出不可」等と状況を入力すれば、アプリ内のマップ上で位置とともに他のユーザーに表示されます。救助団体はそれを手掛かりに救出活動ができます。また自治体は地域のappTown®ユーザーの状況を一覧表示して全体像を把握することも可能です。人の命を救うツールなので誰でも無料で登録・利用できるようにしました。災害時に1秒でも早く、一人でも多くの命を救うため、全国の方に広く知ってもらい、地域全体で利用を推進してほしいと思います。

2年後ぐらいにメタバースの中にappTown®を作りたいと思っています。仮想空間で街歩きやショッピングを楽しめる世の中になるかもしれません。ITにはまだまだいろんな可能性があります。ITの力で、未曽有のパンデミック(世界的大流行)でも経済生活を支え、災害時にも迅速に多くの人の命を救う。そこに携わることが私にとって何よりの喜びです。いずれ、国外にもサービスを広げて、appTown®が世界で標準のツールになればうれしいです。

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