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横江友則
1956年京都府出身。京都大学法学部卒業後、名古屋商科大学大学院経営学修士課程(MBA)修了。80年、阪急電鉄入社。2000年、スルッとKANSAI創業、代表取締役就任。08年、国土交通省観光庁VISIT JAPAN就任(現職)。13年、大阪市交通局鉄道本部副本部長兼営業部長就任。15年、大阪メトロサービス常務取締役就任。18年、グローカル交流推進機構創業、専務理事就任。22年6月から現職。
https://www.starflyer.jp/
※本サイトに掲載している情報は2023年3月 取材時点のものです。

INTERVIEW

私の座右の銘の一つに「順風なときは地上を走る、逆風のときは空を飛ぶ」があります。飛行機は向かい風があるから飛べるように、逆風のときは空を飛ぶチャンスなのです。私が今の職に就いたときは新型コロナウイルス禍の只中で、厳しい状態でしたが、「これまでできなかったことができるチャンスだ、社員と一緒に頑張れば必ず明るい方に行く」と確信して乗り越えてきました。

天から見て正しい生き方を

横江友則

当社は北九州・東京間を主軸として、国内5路線を運航している航空会社です。他社よりも座席の間隔を広くしていたり、レザーシートを採用したり、「厳選」した飲み物を提供していたりと大手以上のサービスを大手よりも安い価格で提供しています。ただ輸送するだけではなく、乗客に喜ばれるサービスやイベント企画を日ごろから行っています。例えば、一般的にペットを旅客機に乗せる時は貨物室に預けますが、当社では乗客がペットと一緒に機内に搭乗できる便を用意しています。その他にもプラネタリウムを楽しむ夜間フライトがあったり、人気リゾートホテルや人気アニメとタイアップしたりするなど、親和性の高い企業との連携にも力を入れています。

大学時代にバックパッカーとして米国を一周したとき、メキシコ国境沿いのエルパソという貧しい都市を訪れました。地元の子どもたちが「ギブ・ミー・ペニー」と言いながら群がってくるので、私は言われた通りペニー硬貨をあげました。その後である夕暮れどきに信号待ちをしていると、メキシコから出稼ぎに来ていた靴磨きの兄弟がいたので、ペニー硬貨を差し出しました。すると彼らは「ありがとう」と笑って、逆にメキシコ硬貨を私にくれたのです。このときの衝撃は今も鮮明に覚えています。いくら貧乏旅行とは言え、私は親の脛をかじって旅行しているのに、彼らは自分で稼いだお金をくれたのです。「彼らの方がよっぽど立派だ。私はなんて傲慢なのだ」と、自分を恥じました。このできごとは私の人生に大きな影響を与えています。自分は本当に天から見て正しいことをしているか、今も常に意識しています。

大学卒業後は阪急電鉄に就職しました。約20年間現場で運転手、車掌、現場管理などに携わり、本社勤務も経験しました。現場で乗客と接している人たちがどのような気持ちで働いているかを知ることができたことは、とても貴重な経験でした。多くの企業は本社が現場に指示しますが、現場のほうがアイデアが豊富で、しかも実際のニーズに合っています。現場発のアイデアが形になった企画や商品ならば、現場の人はものすごいパワーで販売してくれます。現場と本社が一体となって企画商品をつくることが非常に大事だということを、このとき学びました。

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自分の社会的意義を考えよう

友人から声を掛けられてスターフライヤーに転身し、代表取締役に就任しました。着任当初100人を超えるマネージャーたちと個人面談を行い、1時間ずつ密なコミュニケーションを取りました。社員のことを知らなくては組織を動かせませんし、会社の課題や現場の声を吸い上げる必要があると思ったからです。面談には非常に大きな労力と時間を要しましたが、一対一だと皆本音を話してくれました。このプロセスは非常に有効だったと思います。また、早々に鉄道、バスとの連携も実現し、さらに観光施設とも連携することでビジネス利用以外の乗客も増やしていきました。

今大切にしているのは、「お客様第一主義」と「全員参加の経営」です。企業は顧客からお金をもらって成り立っていますから、顧客に対しては社内の事情や社外との関係性は横に置いて最善のサービスを追求しなくてはなりません。そのために本社も現場も一丸となって乗客の方に向き、同じベクトルで働ける環境を整えています。以前社内で増収のためのアイデアを募集したところ、120件もの応募がありました。今はこれらのアイデアをもとにして、様々な施策を実現しているところです。今後は電車やバスとの連携を強化して利便性を高め、国内外からの多くの乗客に九州の魅力を体感してもらいたいです。九州には手垢の付いていない、素朴な日本の良さがたくさんありますから。

若者の皆さんには自分という存在の社会的意義を考え続けてほしいです。近年は企業の社会的存在意義を明確にする「パーパス経営」が注目されていますが、これからは個人も「パーパス人生」を歩むべきだと思っています。自分の人生のパーパスは何かを考え、それを実現するために、共鳴できる企業に就職するのか、企業に自分のパーパスを移植するのか、もしくは起業するのか、いずれかを選択するべきです。働くことは、傍(はた)を楽(らく)にすることです。自分が働くことでまわりを楽に楽しくすることこそ、働く目的だと考えています。皆さんも私と一緒に働くことで笑顔の人を増やしていきましょう。

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