profile
若山健太郎
1982年生まれ。福井県出身。2005年、オレゴン大学ビジネス学科マーケティング専攻卒。帰国後、丁稚奉公として眼鏡フレーム製造の専門メーカーに入社し、プレスや切削加工など眼鏡製造の基礎を学ぶ。08年よりワカヤマ入社。16年より代表取締役社長に就任。
https://www.wakayamapp.jp/
※本サイトに掲載している情報は2020年2月 取材時点のものです。

INTERVIEW

当社は眼鏡や時計、アクセサリーなど高級小物の外観塗装およびメッキ加工を生業とし、創業から約35年を迎えました。業界では人口減に伴う職人不足も叫ばれる中、高級品に特化した塗装やメッキ加工を行っているのは全国でもごくわずか。超高級品の加工に限れば、当社の名前が必ず挙がるほどです。だからこそ、そうした技術に誇りを持ち、医療品や建材などの新たな分野にも挑戦していきながら、当社にしか成し得ないミッションに向かって突き進んでいきたい。そのための改革は、まだ始まったばかりです。

経営者としての葛藤

若山健太郎

幼い頃から好奇心旺盛だった私は、何事もやってみなければ気がすまないタイプでした。中学時代には地元新聞社主催のカナダ・米国への2週間ホームステイ研修に参加し、英語を流暢(りゅうちょう)に話している日本人の姿を見て海外留学を決心。高校卒業を経て、米国のオレゴン大学へ入学しました。現地では人種差別を受けた経験もあります。また、様々な国籍や異なるバックグラウンドの人と付き合うことが当たり前でした。そうして得た経験が今の自分の礎となり、現在の価値観や考え方にも大きな影響を与えていると感じます。

米国から帰国後、留学で得た経験を生かし「大阪に出て貿易の仕事がしたい」と父に就職の意思を伝えると、父は猛反対。「会社を継げ」「社長になったらお前の好きなようにすれば良い」と説得され、眼鏡フレームメーカー大手の浜本テクニカルに入社することになりました。表面処理を行う前の製品がどのように製造されるのかという過程を学びながら、切削部門、プレス部門、組み立て部門をそれぞれ半年程渡り歩き、約2年間の就業を経てワカヤマに入社することとなったのです。

そして2016年、60歳を迎えた父から打診を受け社長に就任。最初の1年は何をしていいのかさっぱり分かりませんでしたが、父と同じスタイルのマネジメントは私には真似出来ません。かといって我流のマネジメントスタイルがあるわけでもなく、私は自らのスタイルを模索するためにビジネス書を何冊も読み漁り、様々なセミナーにも積極的に参加するようになりました。そして現在、経営者として大きなテーマに掲げていることは「いかに社員全員の力を一つに結集するか」ということです。そもそも社長に就任した際、「鯖江から世界に向けて発信できるくらいの企業にならなければ、米国から戻ってきた意味がない」と感じていました。だからと言って、私の力だけで会社を成長させることは出来ません。今いる社員全員の力をまとめることが、会社が成長するために一番大切な事だと考えたのです。

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社員がいるから、会社がある

そこで全社員の意向を一つにするため、2カ月にわたり合計6時間の全社員での話し合いの場を持ちました。そしてたどり着いたのが、「最高の表面処理サービスで、世界にWOWを届けます」というミッションでした。そこから環境整備活動や個人目標の設定など、社員の力が発揮しやすい環境を整えました。とくにメッキ業界は3Kというネガティブなイメージがつきまとう業界ですから、「きれい」「かんたん」「きもちいい」というワカヤマ流のポジティブ3Kを策定し、これまでにない取り組みを社員一丸となって推進しているところです。
また当社では毎年初めに、全社員でミッションツリー(葉っぱの目標)と言われる個人目標の設定を行うようにしています。社員一人ひとりが「なぜここで働くのか?」という根底に立ち返り、働く意義を真剣に考える時間を持つことで、自己実現に近づく第一歩を感じてもらえたらうれしい。 そんな思いを込めて、私が社長に就任して以降の恒例行事としてきました。

現在は新たな試みにも力を入れ、CMFカラーサンプルというツールも研究開発中。塗装色はパール感やツヤ感、手触り等、写真や電話では伝えられない情報がたくさんあるため、デザイン段階から表面処理を考慮した高付加価値商品の開発が行えるツールを提供していきたいと考えているところです。色に機能性や実用性はありませんが、人をわくわくさせるような大きな価値を持つことが色の素晴らしさ。そうした色の奥深さや魅力を伝えていくことも、私たちの存在意義だと考えています。

例えば最近の事例では、美顔器が挙げられます。美顔器といえばどれも似たようなキラキラした見た目で派手な物が主流で、差別化が難しい商品です。そこでお客様の「使っている姿も美しく魅せたい」という要望に答え、今までの美顔器にはない落ち着いた色と手触りを提案しました。色の価値とは感性、つまり心の価値だと考えています。図面では伝えきれない感性に寄り添う色を作り出せるのが私たちの強み。製品の最後の仕上げという大切な仕事をさせていただける喜びを感じながら、今後も挑戦し続けていきたいと思っています。

これからの時代を担う若者には、様々な国へ行き、経験を通して自分の色を深めていってほしいです。日本という国に生まれただけでももうけものですから、その恵まれた環境を存分に生かし、自分が生まれてきた意義を見つけていってほしいと思います。

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