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上田重雄
1965年生まれ、大阪府出身。大阪デザイナー・アカデミー(旧大阪デザイナー専門学校)絵本作家専攻卒業。個人写真家・アシスタントを経て、株式会社バウハウス丸栄入社。その後、個人設計事務所「装庵」設立。2015年、株式会社アシェルパ設立。
https://www.genchoya.jp
※本サイトに掲載している情報は2025年4月 取材時点のものです。

INTERVIEW

重要な場面やここが勝負だと思うとき、心の中で「狂になれ!」と自分に言い聞かせています。夢中・熱中・集中はするけれど、執着しないことが私の信念です。若いときは死というものに意識が向かないと思いますが、人生は突然終わってしまうこともある。優先順位は重要です。しかし、自分の直感を信じて、時には優先順位を曲げてでも先に進めることが大切だなと考えます。

内装現場調査会社のファーストペンギンとして

上田重雄

弊社は、建築業界初の「内装専門現場調査会社」です。対象は、商業施設、ホテル、住宅など、建築物全般です。現場調査とは、商業施設などの改装工事をするにあたって、まず設計者が現場に入って採寸業務や写真撮影を行うことです。現場調査をしっかりと行うことで、効率的で正確な計画を立てることができ、完工時のロスも防げるので、非常に重要な役割を担っているのです。弊社では、手作業と3Dスキャナーを使い分ける効率的な調査方法を用いています。最近では、大阪にあるホテルの1064部屋の現場調査を担当しました。延べ300人以上が関わっても4カ月ほどかかる大型案件でしたし、3Dスキャナーでは見えないカーテンの裏などは人海戦術で行う必要がありましたが、良い経験になりました。

デザイン専門学校で絵本作家を専攻し、そこで孔版画の技法の一種であるシルクスクリーンに出会ったことで、写真製版に興味を持ちました。その後、写真家のかたわら、写真製版を行っている個人事務所に入り、日夜暗室で現像の日々を送っていました。シルクスクリーンは商業施設のサインに使われていることを知り、それなら全体をやりたいと、23歳のときに商業施設の設計施工会社に就職。この時の経験と多くのつながりが今の事業の礎となっています。38歳で会社を辞めて、10年ほど個人事業主として設計の仕事をしていましたが、そんなに仕事の広がりが感じられず50歳を目前にこれまでお世話になった内装業界に還元できる業務はないかと考えました。自分の経験上「現場調査」って本当に大変だった。この部分を切り取りひとつのビジネスモデルにしようと決意いたしました。

社会的な責任を果たしたいと2015年に法人化しましたが、新型コロナウイルス禍の3年間でスタッフも減り、大変な状況が続きましたが、世の中が落ち着いてからは、滞っていた商業施設の改装に伴う現場調査が予想を上回る受注になりました。今はまだスタッフが十分にはそろっていないので、私自身も現場に出ていますし、図面作成は外部スタッフにも依頼しています。また、弊社の仕事は前例がないので、新人さんには現場で実際の仕事を見てもらいながら覚えてもらっています。これからマニュアルを整えて、安心して任せられる社員を育成していきたいと思っています。

  • 上田重雄
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シェルパのようなサポーターに

現場調査という分野を専門にすることの面白さは、誰も知らない計画の冒頭に携われることです。「どこにも公表されていない計画が、ここから始まるのだ」と思うと、ワクワクします。現場調査には質が求められるので、これまでもとことん質を突き詰めてきましたが、その過程でより良い方法を見出したり、それを支える3Dスキャナーを導入したりすることができました。今もまだまだ進化中ですが、これからも未知の発見を楽しんでいきたいと思っています。

今後の展望は、内装業界におけるシェルパになることです。シェルパとは、ネパールに住む少数民族で、主にヒマラヤ山脈の山岳ガイドとして知られています。登山者にとって欠かせないサポーターであるシェルパのように、私も内装業界全てのよきサポーターになりたいと思い、社名の一部に「アシェルパ」を採用しました。会社設立から約10年、ようやく弊社のサービスが業界内で認知されてきました。引き続き、建築業界内で現場調査専門というニッチなジャンルを定着させながら、工事の過程で最も大変な現場調査を私たちがフォローすることで、設計者や営業担当者が本来やるべき仕事に集中できる環境を提供していきます。

私のMyRoadは、執着しないことです。今やっていることに集中するのは大前提ですが、それに執着しすぎると次に進めないような気がしています。私は常に新しいことをしていきたいので、「早くこれを完結させて次に移りたい」、そればかり考えています。私は経営者ではありますが、それよりも技術者であり職人なので、何かを興すことには向いているけれど、安定させて続けることには向かない性格なのです。だからこそ、私が最初の立ち上げをして、うまく行くように露払いをしながら、成熟させることは他の誰かに任せる方がいいと思っています。これからも、スピーディーに次に進みながらどんどん新しいクライアントに出会っていくことで、新しい技術を発見したりステップアップしたりしていきたいです。

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