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塚原月子
東京大学経済学部卒業後、運輸省(現・国土交通省)へ。在省中、米ダートマス大学タック経営大学院に留学、MBAを取得。その後、ボストンコンサルティンググループ、カタリスト・ジャパンを経て2018年に株式会社カレイディストを設立。同年からG20のエンゲージメント・グループであるW20運営委員会の事務局長も務めている。
https://kaleidist.com/
※本サイトに掲載している情報は2020年5月 取材時点のものです。

INTERVIEW

ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂性)は今後、企業が進化していくための重要な切り札になると思います。日本では性別や国籍の多様化にクローズアップして語られることが多いですが、本来はもっと広範で、目に見える・見えないにかかわらず様々な個性を持つすべての人たちが互いを認め、力を発揮し、組織と共に成長できる状態を意味します。一昨年、私はその実現に取り組む企業や団体のためのコンサルティング会社を起ち上げました。それまで官、民、NPOと異なる世界で仕事をし、培ってきた経験が今、大いに役立っています。

運輸省から外資系コンサルへ

塚原月子

何かを企画したりつくったりすることに関わりたいと、大学卒業後は運輸省(現・国土交通省)に入省しました。日本中がまさに「24時間働けますか?」の時代です。忙しくも充実した毎日でしたが、27歳になった時に転機が訪れました。公務員の人事制度の一環として、米国東部にあるダートマス大学タック経営大学院にMBA留学する機会を得たのです。運輸省というひとつの組織(それも行政機関という、ある意味特殊な組織)しか知らずに過ごしてきた私にとって、留学先で出会った様々な国の人たち、様々な業種・業界から集まった学生たちとの交流は想像以上に刺激的でした。それまでは自分が転職するなどつゆほども考えたことがなかったのに、帰国後は「自分のキャリアをもっと自律的に創り上げたい」という想いが強くなるばかり。結局、2年後に運輸省を離れることを決意しました。

転職先はボストンコンサルティンググループ(BCG)という経営コンサルティングファームです。役所と180度違う外資系企業へなぜ?という人もいましたが、私の中では両者にどこか共通するものを感じていました。例えば、生き生きと活動していただきたい人たちのため、黒子に徹する仕事であるというのもそのひとつ。違うのは、それを制度的に進めるか、もう少し深く入り込んで個別にサポートしていくかです。

コンサルティングが性に合った仕事だということはすぐにわかりました。役所時代をさらに上回る激務の連続でしたが、お客様のそばに寄り添い、役に立てることにこの上ない充実感と達成感を得ることができたのです。BCGには結局12年間在籍し、その間、プライベートでは結婚と3度の出産も経験しました。各国に展開するBCGの全社が一斉に、今の日本でいう働き方改革をちょうど始めたところで、それを日本法人に導入する役割を私が担うことになったこともあり、育児期間中も在宅勤務やフレックスタイムを率先して利用することができました。夕方になったらあとはスタッフに任せて帰宅し、子供と過ごして23時頃に仕事を再開するというように、自由度の高いスタイルで働くことができたのは幸いでした。

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自分の価値を見つけるために

BCG退社後は女性のキャリア推進を支援するNPOのバイスプレジデントに就き、今も活動を続けています。2018年にはダイバーシティとインクルージョン(D&I)にフォーカスしたコンサルティング会社、カレイディストを設立しました。企業や組織がこの先、D&Iを経営戦略にどう結びつけ、どんな領域にフォーカスして進めていくかといったプランニングやアドバイスの提供を主業務としています。ある企業では、中間管理職の人たちや母国語が日本語ではない人たち、女性技術職の人たちだけを集めてフォーカスグループインタビューを行ったことがありました。日頃は聞けないような意見が出やすく、有効な方法ですが、より良い結果を導き出すには私たちが企業や経営者の方にどれくらい共感し没入できるかで大きく変わってきます。また、この業務の領域は組織風土にも深く関係しているため、たとえ解決策が見つかっても一朝一夕に変えられるものではないという覚悟と根気が必要です。それでも、企業や組織がこの先、生き残りをかけていくには多様な力がぶつかり合い、高次元に統合されることで生み出されるイノベーションが欠かせないと思うのです。

2019年はG20大阪サミットで立ち上げられたEMPOWER(女性の経済的代表性のエンパワーメント及び向上)の日本代表の1人を務めるという貴重な体験もしました。サミット後も国際会議は続いていて、現在はリモートで各国の代表と意見交換をしています。常に進化の先端にいようとする人たちと刺激し合うことで私自身はもちろん、会社としても、提供するサービスの基盤となるナレッジが豊かになっていることを実感しています。

明日を担う世代の皆さんには、いろいろなところに自分をさらして、たくさんのことを経験してほしいですね。世の中にはすごい人がいることを知ったり、それまで関心がなかったことに突然興味が湧いたり、人から感謝されることの喜びを知ったり。気づくことはたくさんあると思います。その時、ぜひ大切にしていただきたいのが、他人に対しても自分に対しても、仕事においてもプライベートの場面でも「誠であれ」ということです。自分を偽っていては真の成長は遂げられません。そして、あらゆる経験を通じて、自分が貢献できる先、自分の価値を生かしてお金を稼ぎ、自立できるものを見極めてほしいと思います。皆さん一人ひとりが自分の価値を早く見つけられるよう願っています。

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