- 玉木仁
- 1993年新潟大学歯学部卒業。96年医療法人社団一仁会を設立し、院長兼常務理事に就任。2001年東京日本橋インプラント設立。10年東京医科歯科大学で歯学博士を取得。世界規模の有名なインプラント学会である国際プラント学会専門医・指導医。欧州で最も有力な同学会、欧州インプラント学会アクティブメンバー、米国で最も有力な同学会、米国インプラント学会アクティブメンバーなど海外学会でも活躍している。
- http://www.implant-tv.net/
1982年に新潟大学教育学部を卒業したものの、方向転換して歯科を志し、歯学部に再入学。93年に新潟大学歯学部を卒業しました。私がインプラント治療に出合ったのは30年以上前のことです。在学中、インプラント関連の講義はほとんどなく、卒業後に先輩の歯科医に誘われて参加した国際学会で初めて世界の状況を知りました。衝撃を受けた私は寝る間も惜しんでインプラントの勉強に没頭しました。当時はインプラント治療に対する否定的な捉え方が優勢であったため、ネガティブなイメージを払拭することに努めました。その志を形にするため、引き継いだ歯科医院をインプラント専門に衣替えしました。その結果、患者様に占めるインプラント治療率は100%。他院では考えられぬ数字だと思います。
インプラントが登場するまで、失った歯を補うための道具は入れ歯が普通でした。しかし、入れ歯は取り外しの手間が煩雑である上、痛いし、うまく噛めない。その点、インプラントは固定式なので、痛みはなく、しかもよく噛める。機能的にも審美的にも優れているのです。それにもかかわらず、インプラントに対するイメージが良くなかったのは、手術方法や使われる材料にあると思います。以前はブレードや板状の素材を骨のところに置く「ブレードインプラント」、「サファイヤインプラント」が主流でしたが、、問題が多くありました。現在は、削り出したチタンを無菌状態にして顎骨の中に入れて、安静状態にして結合させる手技で行います。昔とは違います。実際、インプラント治療をした患者様は間違いなく、入れ歯よりも快適だとおっしゃいます。
今だから言えるのですが、当院でインプラント治療を導入しようと試みた頃は、逆風でした。当院はもともと、一般的な歯科医院を開業していた義父が運営していたものです。私は別の医院に勤務していたのですが、結婚を機に、妻の実家である歯科医院の医師として働き始めました。しかし、昔気質の義父は、ご多聞に漏れずインプラントには大反対でした。私は通常の歯科治療を続けながらも、インプラントの勉強をずっと続けて、導入の機会をうかがっていました。重い病気を患った後だったので、義父は週に1度くらいの割合で顔を出すだけでした。そんなある日、インプラントを巡って大けんかをしました。勢い余って「勝手にしろ」と言った義父に、私は「はい、勝手にします」と大見得(みえ)を切りました。
こうして「勝手に」インプラント治療を取り入れたものの、猛反対を押し切って始めたのですから後には引けないし、それ相応の結果も出さねばなりません。本当に必死でした。たまたま義父の知人で、入れ歯に不具合のある患者様にインプラント治療を施したところ、非常に喜ばれ「入れ歯よりも調子がいい」と義父に話してくれました。それから数年後のある日、義父は半世紀近く入れていたブリッジの代わりに、「インプラントを入れてみろ」と言うのです。当然うまくいき、よく噛めるようになると、義父は「なんでこんな良いものをもっと勧めないんだ!」と180度考えが変わってしまいました。最大の称賛だったと思います。
とはいえ、世間では現在ほどインプラントが信頼されていない時代です。インプラント治療に携わる歯科医ははみ出し者扱いされていたほどです。当時の歯科業界ではホームページさえなかったため、自分で作ることにしました。折りよく、インターネットの波に乗り、インプラント治療をPRすると、治療を希望する患者様が押し寄せました。それまで数カ月に1人だった新患は、ホームページの効果で1カ月に30人にも増えました。業界に先駆けて導入したホームページが当たったのです。それまでの私は、「確かな技術」を何よりも重視していました。しかしこの経験から、「技術」ばかりではなく、戦略的な「マーケティング力」が相乗効果をもたらすことに気付きました。
当院は東京の中心地、日本橋にありますが、患者様は全国から集まります。つまり、患者様が当院を訪れるのは自宅に近いからではありません。一般的に、多くの患者様には歯科医の違いが分かりません。どこも同じように見える。だからこそ、当院のことをより深く知ってもらうための差別化がモノを言うのです。すでにお話したように、当院の患者様はすべてインプラント治療のために通われます。これが何よりのブランディングです。次に安全対策です。当院では、血液検査と感染症検査をすべての患者様に対して実施しています。当院のような個人医院でそこまで行っているところはないはずです。これは結果的に、スタッフが安心して働くための安全対策にもなっています。
見向きもされなかったインプラント治療が今日のように認知されたのは、患者様から信頼を得られたからだと思っています。私の治療は、初診時の患者様の悩みをどう解決するかを考えることから始まっています。そのために持てる知識や技術、コミュニケーション能力をフルに使っています。患者様と向き合う時には、これまでの信頼を崩さないことを念頭に置き、コミュニケーションを深めてより良い関係を築きたいと願っています。それが、さらなるブランディングにつながるからです。今後も、安全、確実で、患者様に優しい治療を継続していきたいと考えています。
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