- 竹原タカシ
- 1958年生まれ、京都府出身。大阪大学卒業後、研究者と事業家の二足のわらじを履く。97年通信事業に参入するも、事業は破綻。2011年、飲料水に未来の展望を見出し、 アクアバンクを設立。ミッションは「人々の健康寿命を伸ばすこと」。
- http://www.aqua-bank.co.jp/
人間とは、「オギャー」と産まれてから死ぬまで、平均して70万時間の寿命があります。これは漠然と生きていくだけなら、充分に長い時間かもしれません。 しかし大志を抱き何かを成そうとすれば、この時間は実にもの足りないものだと気づかされます。 私の半生を振り返ると、常にどんなことに対しても「なぜ?」という疑問が湧き起こり、それを解明するために時間を使ってきました。 一見すれば、このように疑問ばかりを考えていても、何も生み出さないように思えるかもしれません。しかしその方向性が「世の中の需要」へと向かえば、 その時こそ疑問がビッグビジネスを生み出す原動力になり得るのです。
私の父は生鮮食料品を長期保存する研究者で、いつも図面を引いたり実験をしたりしていました。そんな父の後ろ姿を見ながら育った私はやがて、 どんな事に対しても「なぜ、そうなるの?」と、理系的な疑問を抱くようになったのです。
大学卒業後、私は父の跡を継ぎ研究者となり、その成果を使った事業に進出することに。独自の鮮度保持システムを用いた、生鮮食料の輸送事業に着手したのです。 ところがこれは、研究が途中で頓挫したため撤退を余儀なくされることになりました。しかし私の下には輸送用コンテナが残されたので、それを使ったビジネスを考案し、新たに事業を立ち上げることにしたのです。 それは大きな生花を安く仕入れ、自前の鮮度保持システムで保存してから各家庭に配るというもの。そのビジネスはうまく軌道に乗り、 当時から爆発的に普及が広がっていた携帯電話に関するビジネスにも進出することができました。
「これからは通信の時代だ。こちらのほうが花より儲かる」と私は判断し、 父から受け継いだ研究所をたたみ、携帯電話の店舗を拡大。しかし事業はITバブル崩壊の波を真正面から受けるようになり、私は一気に今日、明日の生活費にも困るほどの窮状に追いこまれました。 そして、そこに追い打ちをかけるようにプライベートでは離婚を経験。さらには父の死という不幸が立て続けに襲ってきたのです。そんなどん底状態を経験した私ですが、不眠不休で過ごしている中で、 父の葬儀の際にふと、睡魔、空腹を感じました。「人間とはどんな状況で何が起こっても、何も変わらないじゃないか」と、冷静に達観できるようになっていたのです
すべてがゼロに戻った私ですが、知人の経営者に助けられ、事業を再スタートさせることになりました。そしてここでも私は、「なぜ?」を追求することとなります。 なぜ人は、お金を払ってまで宅配水を求めるのか? 水道水には不純物が混ざっているから、直接口にできないのか? ならば不純物を安価に除去できれば、 宅配水を購入せずに家にいながら安心で美味しい水が飲めるのではないか? それならコストが安いウォーターサーバーに、ろ過装置を直接付ければどうだろうか?という具合にです。
そこから私は研究者と事業家、両者の思考法を組み合わせ、現在の事業を確立していきました。まず研究者のマインドとスピリットを武器に、水道水を水素化する技術のエビデンスを集め特許を申請し、取得。 これは溶存水素を計る測定法も、独自のものでした。次に事業家として、「健康を売る」というコンセプトに基づき、代理店と顧客を増やしていきながら業界内でのシェアを伸ばしていきました。 そして気が付けば、この業界内でトップ。研究者でありながらモノを売ってきた、多くの経験が生きたのです。
私はこれまで先のことはわからなくても、ともかく必死に生きてきた自分の人生には無駄なものは一つもなかったと断言できます。「必要は発明の母」という言葉をモットーとしていますが、 社会の需要を段階的に理解するよう努めたからこそ、必死に生きていくことができたとも言えます。つまり、いつも自分と向き合いながら、なぜという自問自答を始め、それがわかれば次のなぜへと移る。 そうやってなぜを積み重ねていけば、最終的にはなぜの複合体が一つの体系となっていく。そして一つの体系が見えたらなら、後はそれを実行に移せばいいだけ。ただその繰り返しなのです。
ケンタッキー・フライドチキンの創業者、カーネル・サンダースは68歳で発明と事業を始め、成功をおさめました。逆に言えば、若い方々は、 時間を上手に活用することができればカーネル・サンダース以上のことができるのだということ。「自分は若いから、時間などいくらでもある」などと考えないでください。 時間などあっという間に過ぎ去ってしまいます。どうか時間を無駄にせず、常に挑戦する心を忘れないでください。
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