- 竹田亨
- 1959年魚屋の仲買人をしている父を持つ四人兄弟の三男として福岡県生まれ育つ。大手スーパーへの就職後、歯科医院へ卸売りを行っている歯科ディーラーでの経験を経て独立。「欲の最後に残る食を担保する、お手伝いをさせていただきたい」と消費者のオーラルケア意識を上げていくこと掲げ、現在は歯科医師と同じ目線で一般消費者(患者)への8020運動を行い、今後も歯科治療ではなく予防歯科を啓蒙していく。
- https://www.p-and-a.jp/
弊社は、開業支援から販売商材の調達まで、歯科診療所をトータルサポートする会社。いわば歯科業界のディーラーです。長年にわたり現場の声に耳を傾けてきた経験を生かし、一般消費者向けのオーラルケア商品の開発・販売も手掛けています。歯科業界の情報発信基地として、業界のみならず一般消費者に対しても情報提供をしていくことが私たちの使命だと考え、オーラルケアの啓発に力を注いでいます。これからも「人の役に立ちたい」というブレない思いを胸に、歯の健康の向上のために尽力していきたいです。
魚屋の仲買人として働く父を持つ四人兄弟の三男として、福岡県で生まれ育ちました。父が30歳の時にバイク事故で両目を失明し、順風満帆だった生活は一変。文房具代も支払えないほど生活が困窮し、中学時代は親戚の営む魚屋でアルバイトをしながら、学業と野球を両立する日々を送っていました。卒業後は、給与が高いという理由で大阪の大手スーパーに就職しましたが、将来のビジョンが見えず約2年後に退職。転職先として選んだのが、歯科診療所への卸売を行う歯科ディーラーでした。医療業界であれば、はやり廃りがなく安定して長く働けると考えたのです。
その後、営業として数年経験を積み、27歳で独立しました。事業は順調に拡大していきましたが、歯科業界という狭いマーケットの中でパイを取り合っているだけでは、これ以上の成長は望めないのではないかと、いつしか私は閉塞感を抱くようになりました。「起業したからには一人でも多くの人の役に立ちたい。新しいチャレンジをしてみたい」。そう考えた私は、これまで取り扱ってきた歯科診療所向けの商材を、一般消費者にダイレクトに販売する新規事業をスタートしました。歯科診療所で販売している歯ブラシや歯磨き粉は、通院中は気軽に購入できても、治療が終わった後にわざわざ買いには行きづらいもの。そこで、一般の方が直接購入できるwebサイトを立ち上げたのです。「自分たちが信じたものを売れば、決してお客さまを裏切ることはない」。そんな信念と責任感を持って取り組んできた結果、お客さまから評価していただき多くのリピーターを獲得できました。
新事業を始めた当時は同業他社がなく、弊社がパイオニア的な存在でした。しかし、数年経つと参入してくる会社が次々と現れ、このままでは価格競争に陥ってしまうという懸念が生じてきました。そこで、誰にもまねできない自社商品を作ろうと決意し、オリジナルブランドを立ち上げました。現在では、歯ブラシや歯磨き粉、デンタルフロスといった多くの自社商品を開発・販売しています。従来は、メーカーから問屋、ディーラー、歯科医師を通して患者さまの手元に届く仕組みでしたが、川上から川下まで社内で行うことで、コスト面でのメリットはもちろん、作り手の熱量が冷めることなく、使い手に直接お届けできるという喜びを感じています。
私が今最も力を注いでいるのは、オーラルケアに関する情報発信や啓発活動です。欧米では、自費での予防歯科治療が一般的に行われているほど、オーラルヘルス意識が浸透していますが、日本ではまだまだ意識が高まっていません。そのため弊社では、自社で運営するwebサイトで細やかな情報発信を行うのはもちろん、市区町村が主催する健康まつりなどのイベントがあれば積極的に参加し、オーラルケアの啓発に努めています。歯の大切さを一人一人にしっかりと伝えることができれば、その人が家族や友人に伝えてくれて、自ずと広がっていくはず。そう信じて、啓発活動を日々積み重ねています。
新規事業の立ち上げを後押しした「より多くの人の役に立ちたい」という思いは、今も変わらず私の原動力となっています。私の願いは、高齢化が進む日本において、80歳になっても20本以上の自分の歯で食事ができる人を一人でも多く増やしていくこと。神経が機能している歯が20本以上残っていれば、食事をおいしく味わうことができると言われています。人生の最後まで食事を楽しめるように、食欲を担保するためのお手伝いをさせていただきたいのです。こういった啓蒙活動は「8020(ハチマルニイマル)運動」と呼ばれ、30年以上前から行われていますが、歯科診療所の利益に直結しないため、精力的に活動を行っている歯科医師はあまり多くありません。だからこそ、正確な情報発信や啓発活動を続けていくことは、歯科業界の一端を担う弊社の責務だと考えています。
最後に、これからの日本を担っていく若い方たちに伝えたいのは、「信じることの大切さ」です。仕事においてさまざまな判断を行うためには、覚悟が必要です。その覚悟を持つためには、自分や周りの人たちを信じきることが大切ではないでしょうか。信じたら、あとは精いっぱいやるだけ。自分の限界を決めずに、本当にやり切ったのか、考え抜いたのかと、常に自分に問いかけてみてください。そうすればきっと、自分の想像をはるかに超えた力を発揮できるはずです。