- 鈴木紀夫
- 1957年生まれ、新潟県出身。1982年、杏林大学医学部卒業。杏林大学医学部小児科学教室入局。1984年、十日町病院小児科。1986年、新潟大学第二内科入局。済生会三条病院内科研修。その後、新潟大学第二内科医局員。1992年、医学博士号取得。県立加茂病院、両津市民病院、信楽園病院勤務後、1993年、鈴木内科小児科医院副院長に就任。1998年、鈴木内科小児科医院院長に就任、現在に至る。
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恩師の教授は、「生涯勉強」というフレーズを掲げて一生懸命勉強していました。その姿を見ていたので、私も分からないことはすぐに教科書やスマートフォンで調べて新しい知識を得るようにしています。「もうかるから」とか「名声を得たいから」という理由で医師になる人がたくさんいますが、医師はそんなにかっこいい仕事ではありません。眠れないし、ご飯を食べる暇もない、それが実態です。私も生涯現役、まだまだ頑張ります。
当院は1947年に父が開業した医院で、私は2代目です。赤ちゃんからお年寄りまで家族みんなの「かかりつけ医」として、地域密着型の親しみやすい医療を目指しています。各種検診、予防注射にも対応しており、通院が難しい方のために往診にも力を入れています。定期的な訪問はもちろん、ご本人やご家族の希望があればご自宅でのおみとりもしていますが、近年は核家族化により自宅でのおみとりが減っていて、代わりに施設や病院への往診が増えています。地域に根ざした臨床医は絶対に必要なので、健康に気を付けて、体力が続く限り開業医を続けていくつもりです。
医師を志したのは、もちろん父の影響です。生まれたときから父の背中を見ていましたが、朝昼晩関係なくずっと働いていました。当時この地域の医院はうちがメインで、あとは大学病院くらいしかなかったので、夜中に患者さんやご家族から電話がかかってくることは日常茶飯事。何時であっても父は必ず起きて電話に出て、往診に行くのです。その姿を見て育つ中で、自分が後を継ぐことは当然だと思っていました。運も味方してくれて、現役で医学部に合格。その後、小児科で4年勉強してから内科で8年勉強し、本格的な研究活動や勉強も続け、1992年には念願の医学博士号を取得しました。特に小児科医時代は猛烈に働いていつも睡眠不足でしたが、父が頑張って働いていた姿が励みになりました。
その後当院に入り、しばらくして院長を引き継ぎました。父の患者さんは高齢化でどんどん減っていたので、父は2002年に引退しました。本当はそこからもっと父の地域医療への思いや、戦争で満州に行った話を聞きたかったのですが、残念ながら引退後早々に肺炎をこじらせて、ものの半年で亡くなってしまいました。それがものすごく心残りですが、今は父の医療への思いが分かる気がします。当院が目指すのは、『ゆりかごから墓場まで』。冒頭でお話ししたように、今は往診もご自宅でのおみとりも減っていますが、本当は大多数の人が病院や施設ではなく自宅で亡くなりたいと願っています。私はできるだけその実現を目指し、患者さんとそのご家族に尽力していきたいと思っています。
大事にしていることは、患者さんファースト。常に患者さん側になって考えることです。患者さんは具合が悪くて受診するので、どんな風に悪いのか、何をしたらそうなったのかをじっくり聞いて、患者さんが望んでいることをくみ取るよう努めています。その上で的確な診断をして、その患者さんにとって最高の治療をする。それが開業医の仕事だと思っています。もちろん、副作用を防ぐことが第一ですし、何でもかんでも言うことを聞いてあげるわけにはいきませんけれど。私は色んな病院で、NICU(新生児集中治療室)、小児科、内科で臨床経験をたくさん積んできました。医師としての知識は多いと自負しているので、なるべく色んな相談に乗っています。
「良い医師であること」、それが私の信念です。これからも一生医師でいるわけですから、医師として恥じない生活と勉強を続けていきたいです。100歳になっても医師を続けている人もいますから、そこまでは無理だとしても、あと20年は元気に生きて、父よりも長い医師人生を遂げたいと思っています。今の問題は、当院の跡取りがいないことです。私の子どもたちは医師ではないので、誰かに事業継承することも含めて今後のことを考えている最中です。私の代で終わってもいいのですが、患者さんはたくさんいるので、どなたかが継いでくれたらうれしいです。
私はたまたま開業医の家に生まれて、生まれたときから医師になることが義務付けられていたようなものでしたが、そう思い込んで頑張ってきたからうまく行ったのだと思います。最近は年に1回、医学部の学生さんを受け入れていますが、「まだ自分が何をしたいのか、何科に行きたいのか分かりません」という人が多くて、ガッカリすることがあります。せっかく医学部に入ったのだから、明確な目標を持って頑張ってほしいです。皆さんも、なんとなく生きているのではなく、やりたいことやなりたいものをなるべく早く見つけて、それに向かって邁進してください。必ずしもそれがかなうわけではないけれど、「私はこれがしたい」と意思表示をして、望む人生を送れるように努力し続ける。それがなければ、人生は楽しくないじゃないですか。
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