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住谷栄之資
1943年生まれ、和歌山県出身。慶應義塾大学商学部卒業後、藤田観光に入社。直島開発プロジェクトを手掛ける。69年、株式会社WDIに入社後、取締役として主に外食事業に経営参画。「ケンタッキーフライドチキン」「トニーローマ」「スパゴ」「ハードロックカフェ」などのライセンスを取得し、開発運営。同社を60歳で退職後、「キッザニア」のライセンスを取得。2006年に「キッザニア東京」、09年に「キッザニア甲子園」をオープン。
https://www.kidzania.jp/corporate/
※本サイトに掲載している情報は2015年7月 取材時点のものです。

INTERVIEW

新しい事業を始めるときに、事業性とか採算性というものはとても大事な話です。しかし、そこばかりが先行してしまうと、新しい事業はなかなか生まれないでしょう。私がキッザニアを運営していこうと思ったのは、初めてキッザニアを見た時から、子供たちの成長に役立つ施設だという確信があったからです。

観光業界から外食産業へ

住谷栄之資

私が子供の頃は、今みたいにおもちゃがたくさんなかったので、学校へ行って友達と遊ぶのがとても楽しみでしたね。運動場には何もないのですが、地面に土俵を描いて相撲の勝ち抜き戦をしたりして遊びました。与えられたもので遊ぶのではなく、自分たちでルールを決めたり、遊びを考え出したりしていましたね。

大学を出るとホテルやレジャー施設を運営する藤田観光に就職し、最初の2年は箱根小涌園でホテルのあらゆる仕事をたたき込まれました。接客から掃除、厨房の仕事まで何でもやりましたよ。

転機が訪れたのは3年目。瀬戸内海に浮かぶ会社所有の無人島「直島」を開発するプロジェクトの担当に抜てきされたんです。本当に何もない島なので、まず道路を造ったり電気を引いたりというインフラ整備の段階から手掛け、キャンプ場や海の家のような施設を立ち上げることから始めました。

やり方を教えてくれる人はいないので、自分で考えて行動するしかありません。今思えば貴重な経験でした。手取り足取り教わるのも勉強になるので良いけど、そういう環境にいると自分で考えなくなってしまいますからね。とにかくこの時は、責任を持って目の前のことを着実に片付けていく、自分で学んでいくということを心掛けました。

ある時、学生時代の先輩から新規事業の立ち上げに誘われました。私たちが目を付けたのは、米国型のレストランチェーン。今後の日本の食文化を変えるほどの可能性を感じたものです。周囲からは「リスクを伴う」「もうからない」などと反対されましたが、一度きりの人生、自分がやりたいことを貫こうと思ったのです。「ケンタッキーフライドチキン」のフランチャイジーとなったのを皮切りに、「ハードロックカフェ」や「カプリチョーザ」などのライセンスを取得し、次々に店舗を展開していきました。

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子供たちが自分で考える場所「キッザニア」

メキシコに子供たちが職業体験できるキッザニアという施設があると友人から聞いたのは本当に偶然だったんです。勧められるまま現地に見に行き、これは面白いなと直感しました。自分の将来の仕事や社会人の在り方、いわゆるキャリアプランというものをなるべく幼いうちから持つことが大切だと常々思っていたので、キッザニアのコンセプトには非常に共感しました。

キッザニアでは子供たちが仕事を体験するとお給料をもらえるのですが、その時の子供たちは本当にうれしそうなんです。お給料は自分が頑張った対価ですから。社会の中で行われていることに「自分が参加している」という意識がとても大事だと思っています。

キッザニアの中にはデパートもありますから、何を買おうか、もらったお給料をどう使おうか考えるわけです。これも子供にとって大事な経験なんですよね。塾や習い事に通うことはもちろん悪いことではありませんし、否定するつもりはありませんが、大人から与えられるばかりの環境にいると、子供たちは自分で考えなくなってしまうのではないでしょうか。

キッザニアは子供たちが自分で考える場所。何の体験をするか、それにどう向き合うのか、自分で選んで考えて、稼いだお金をどう使おうかというところまで自分で自由に決めることができます。子供にとっては、これが非常にわくわくできることなのではないかと思います。このわくわくした感覚を持った大人になってほしいですね。

若い人たちにはこれからのグローバルな時代に向けて、何でも食べられる、どこでも眠れる、誰とでも話ができる人になっていただきたいと思います。今は何でもそろっている、 いわゆる飽食の時代です。もう欲しいものがない、これからどうしたらいいのか、その先を自分で考えて、世の中の動きを感じながら、チャレンジする気持ちを持って生きていってほしいですね。

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