- 柴崎洋人
- 1986年生まれ、埼玉県出身。2011年、京都大学経済学部経営学科卒業後、野村證券に入社し、本店営業部にてリテールセール、ホールセールスに従事。レコフやEYTASなどで多数のM&A案件成約を手掛ける。フィンテックベンチャー企業で新規事業の立ち上げを経て、20年12月、Shylphを設立。個人M&Aメディアの運営やサービス提供、トークン発行による資金調達のアドバイザリーサービスなどを手掛ける。
- https://www.shylph-capital.com/
M&Aと聞くと、事務的でドライなイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし実際はかなり人の感情が色濃く表れる、人間味のある手法なのです。オーナーは我が子のように育てた会社を手放すわけですから、「本当に大丈夫だろうか、大切にしてもらえるだろうか」と最後まで会社の行く末を案じるのは当然のことかもしれません。M&A仲介業者として、オーナーの思いを丁寧にくみとって、一つひとつの案件に真剣に向き合うことを大切にしています。
子供の頃は、サッカー中心の生活でした。中学生の時所属していたクラブチームの練習はハードで、毎回辛くてたまりませんでしたが、チームメイトたちと励まし合ってどうにか乗り切っていました。そのおかげで県大会で優勝することができ、優秀選手にも選ばれ、結果を出すためにはそれなりの努力が必要なのだということを身をもって学びました。
2浪の末、念願の京都大学に合格することができました。浪人中は大きな挫折を味わい、2浪期間中は精神的にも堪えましたが、それでも諦めなかったことが良かったと思います。大学合格は、生まれて初めて自分の手で未来を切り開いたと思える出来事でした。大学は無事に4年で卒業し、大手証券会社に就職して営業部に配属されました。上司の言うことに何かと理屈をこねて反論する生意気な新人だったと思います。ある時、「一度言われた通りにやってみろ」とたしなめられ、渋々やってみるとすんなり結果が出たことがありました。それ以来、営業成績も上がりました。自分でゼロから考えるのも面白いのですが、先人の経験や実績に目を向けるのも大切だと思うようになりました。
数年で、M&A仲介やフィナンシャルアドバイザリー業務を手掛ける会社に転職しました。M&Aは私が大学生の頃から話題になっていた手法ですが、当初はハゲタカファンドのような狡猾(こうかつ)な手法だと思い込んでいました。しかし大学でM&Aの第一人者、佐山展夫氏の講演を聴き、売り手、買い手双方にプラスになる素晴らしい手法だと考えを改めました。転職後、様々な案件にかかわる中で、M&Aという手法にますます魅力とメリットを感じました。そして、大企業同士で行うだけではなく、国内の法人の大半を占める中小零細企業や個人がもっとM&Aを活用できるようになれば、社会問題になっている深刻な後継者不足を今よりスムーズに解消できると考えました。そのような社会を実現したいと考えて設立したのがShylphです。
個人が会社を立ち上げる場合、ビジネスモデルを確立させ、人材やオフィスも確保しなければいけません。それなりの金額と時間が必要です。しかし個人M&Aで会社を買えば、既存の事業ですぐに売り上げを作ることができます。まずは、こういった情報を発信することから始めました。最初は個人M&Aのニーズや市場があるかすら分からない状態でしたが、起業から2年たった頃から問い合わせや反響も増えてきて、確かな手応えを感じています。やってみたいが何から始めればいいか分からない、誰に相談したらいいか分からないという方のためにも、情報やノウハウをどんどん発信していきたいと思います。
続けられないから会社を畳んで終わりというのではなく、引き継ぐ会社や個人を見つけることで、その会社を持続していく。M&Aにはそういった持続可能な経済の車輪を回す力があります。しかし、私は事業承継で手当たり次第にどんな会社でも救おうとしているわけではありません。残すべきは、良い製品、サービス、技術を提供する会社です。本当に良いもの、必要とされているものが生き残る、そんな循環型経済の世界を作っていこうとしています。現在のM&Aは株式譲渡や、株式発行による資金調達が主流ですが、将来的にはトークン(仮想通貨)を活用した組織の売買や資金調達も広がると予想しています。M&Aの可能性を広げるためにも、積極的に取り組んでいきたいと思います。まだどうなるか分かりませんし、成功しない可能性だってありますが、簡単に諦めないようにしたいです。その姿勢で周りの人たちを勇気づけたり、良い影響を与えたりできればうれしいです。
何かに挑戦する時、一度失敗したぐらいで諦めないことが大切です。そこで諦めるなら、その程度のものだったということでしょう。本気なら自然にやり通せるはずです。全力で突き進めば、たとえ失敗に終わったとしても悔いは残りません。若者のみなさんもやりたいことがあるなら、諦めずに、必ず道は開けると信じて挑戦を続けてください。