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佐藤美鈴
1963年生まれ、埼玉県出身。幼少期に母の介護を担いながら育つ。出版業界を経て、介護保険制度の整備を機に介護業界へ転身。現場での経験を重ねた後、声をかけられたことをきっかけに訪問介護事業を立ち上げ、半年で代表に就任。現在は「誰もが最期まで自分らしく生き切る支援」を理念に、在宅看取りや家族支援に注力。介護の魅力と価値を広め、業界の地位向上を目指している。
https://branch-smile.com/
※本サイトに掲載している情報は2025年5月 取材時点のものです。

INTERVIEW

道は簡単には開かないけれど、できるだけ鮮明に未来をイメージしたり、地図を描いたりして、ニヤニヤしながらコツコツ行動していくことが大切です。そして、自分を満たし、いつもご機嫌でいる。それがまわりのスタッフや利用者さんを幸せにすることにもつながると信じています。「ダメ・できない・無理」は次のステップへのチャンスなので、腹を据えてまずは5年やってみる。未来は自分の心と脳の中にありますよ。

母の介護をした子ども時代

佐藤美鈴

弊社は訪問介護サービスを提供しています。内容は、介護保険事業・障害福祉事業・通院サポート・移動支援・自費サービスと多岐に渡り、一般的な生活援助から医療的ケアまで幅広く対応しています。日々の掃除・買い物・調理から、おむつ交換・トイレ誘導・入浴介助もしていますし、医療的なケアも得意です。特に在宅での看取りに力を入れており、家族関係の改善にも注力していることが特長です。社名のブランチには、「枝葉」という意味があります。大きな木とその枝葉のように利用者の方々を支え、共に成長していきたいという願いを込めています。

私が10歳のときに母が心臓病になり、ヤングケアラーとして母を介護していました。当時は介護保険制度等もなく、色んなことを我慢しながら介護をしていました。母の介護が日常だったので、20歳のときに母が他界してからは、絶対に介護の仕事には就きたくないと思っていました。そうして、介護とは対照的に華やかなイメージがあった出版業界に就職しましたが、私が色々な場所で高齢の人に話しかけられることから、当時の夫が「そんなに高齢者に好かれるなら、高齢者向けの仕事をしたら?」と言ったのです。程なくして、日本の介護保険制度が徐々に整ってきたことが後押しとなり、介護業界に転身しました。最初は色んな会社に所属させてもらいながら、経験を積んでいきました。そこで感じたのは、利用者さんもそのご家族も、自分の人生を諦めてしまっていること。「もうしょうがないよね」というテンションで生きていることを残念に感じていました。

起業のきっかけは、たまたま参加した経営者が集まる場で、ある女性社長から声を掛けられたことです。その方は長年司法関係の事務所をやっていましたが、介護関係の事業を始めたいから手伝ってほしいと言われたのです。当時は「手伝うくらいならいいか」と思って始めたものの、いつの間にか共同代表になり、オープンわずか半年で私が代表を務めることになりました。すでにサービスが始まっていたので、辞めるわけにはいかないですし、「私がやり切らないといけない」と思って走り続けていたら、今になっていましたね。

  • 佐藤美鈴
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介護業界の地位を上げたい

大切にしていることは、介護状態になったご本人やご家族が少しでも自分の人生を諦めなくて済むように、暮らし方や社会資源の情報を伝えることです。人は生きていれば必ず死にますし、その前にはほとんどの人が介護状態になりますが、そうなったら「もうおしまい」ではなく、自分がどう生きたいかを真に考えるチャンスと捉えてほしいのです。人の手を借りることは、自分がダメになったということではありません。本当にやりたいことや生きたい姿に集中し、残りは社会制度や社会資源に助けてもらえばいいだけです。最期まで自分らしく生き切る志を持ち、諦めるよりもできる方法を探してやってみることが大事。私たちは、その気持ちに伴走していきたいのです。

今の最終目標は、この仕事の実態と魅力をもっと広げることで、介護業界の社会的地位を上げて、この業界の人々が胸を張れる世界をつくること。この仕事は確かに楽ではありませんが、利用者さんたちから元気や活力をもらえますし、会話を通してそれぞれの人生の歴史書を読みながら、自らの器も広げていける尊い仕事です。弊社のスタッフはこの業界にしては珍しく20代のスタッフが多いので、技術的な教育はもちろん、利用者さんの輝いていた時代の話を引き出す会話術や洞察力を上げる教育を取り入れていきたいです。これからの時代は外国籍スタッフの教育も欠かせませんし、介護を担うご家族に介護保険制度の基礎知識や、介護の心構えを伝える研修もしていきたいと思っています。

私のMy Roadは、「ハッピーに生き切るためのお節介をやくこと」。昨今は人命を軽んじるマイナスなニュースが多いけれど、皆が根本的に幸せで、笑顔が多い世の中であってほしいと願っています。一人ひとりをもっと大事に見送れる世の中になったら、もっと幸せな世界に変わっていくはず。そのために私たちは、目の前の人ができるだけ幸せに生き切るおせっかいを焼き、幸せな世の中に変わっていくサポートをしています。安心して死ねることは、生きる希望にもつながります。その安心を社会保障だけに頼るのではなく、人々の日常的な関わり方を変えていく努力も必要です。

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