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佐藤航陽
1986年生まれ。早稲田大学在学中の2007年に株式会社メタップスを設立し、代表取締役に就任。2011年にアプリ収益化事業、2013年に決済事業を立ち上げ、2015年に東証マザーズに上場。現在は、お金の流れを予測する人工知能の研究開発プロジェクトに従事し、時間市場の創出を目的に「タイムバンク」を初秋にリリース予定。フォーブス「日本を救う起業家ベスト10」、AERA「日本を突破する100人」、30歳未満のアジアを代表する30人「Under 30 Asia」などに選出。
https://metaps.com/ja/
※本サイトに掲載している情報は2016年10月 取材時点のものです。

INTERVIEW

インターネットやグローバリゼーションが発達した今、何十年も前からある経営理論は通じなくなっていて、新しい仕組みを作ってどんどん試していかないと競争に勝つことはできません。 実際、私たちは「経営とは、海外展開とは、こういうものだ」という通説とはまったく異なるやり方で結果を出しました。 世の中で常識としてまかり通っていることが必ずしも正しいわけではありません。健全な懐疑心をもって、何事もまず自分で試してみることが大事だと思います。

弁護士の道を目指すが、大学中退を決断

佐藤航陽

私の育った環境は一般的な家庭に比べると異端だったと思います。「何をしてもいいけど、自己責任で」が我が家のルール。子供の頃から、人間というものはひとりで生きていくものなのだと認識していました。 おもちゃの代わりに与えられたものは紙と鉛筆と粘土だけ。でも、そのおかげで自分のイメージしたものを形にする習慣がつきましたし、デザインのセンスも磨かれたと思います。与えられたものは少なかったけれど、 そんな環境が当たり前だったから自分の頭で考えて工夫をするということが自然に身についたのかもしれません。

弁護士になろうと思って大学の法学部に入りましたが、なるまで時間もお金も掛かりすぎると気づいて早々に断念。普通に就職してうまくやる自信もないので、 自分で商売をやろうと思い大学を1年で学費の150万円を使ってITの会社を立ち上げました。実はその頃、パソコンもろくに扱えず、起業と同時に勉強し始めたぐらいのスキルだったんです。 それでもホームページ作成やプログラミングの仕事を受注し、分からないことがあればその都度本屋に駆け込んで調べる毎日でした。会社運営のノウハウもまったくなく、身近に手本となる人がいるわけでもないので、 何もかも独学で手探り状態でしたね。誰かに教えてもらったほうが早かったかもしれませんが、自分で試行錯誤を繰り返すことで、物事の本質を見抜く力、何が肝で何が不要かを見分ける力はかなり身についたと思います。

失敗もたくさんしましたが、そう簡単に成功しないのが当然だと思っていました。商品や製品がヒットするのはまれなことで、大半ははずれなのです。でも勝負ははずれてからではないでしょうか。 経営というのは、仮説や製品が思い通りにいかなかったとしても会社を成長させるような技術のことだと思っています。

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いち早くスマートフォン市場で勝負をかける

起業から2、3年もすると会社経営、事業も軌道に乗り始めました。その頃、海外に行って多くの経営者や投資家に話を聞いて回ったのですが、スマートフォン市場がビジネスの新たな潮流として注目されていて、 これはチャンスだと感じました。中でもアプリの開発者が収益化に苦労していることに着目し、ユーザーの行動や傾向を分析してリワード広告を導入し、収益化を図る仕組みを開発しました。

アジアから世界に事業を展開したいと考えていたので、まずスマートフォンのシェア率が高かったシンガポールを拠点にしました。最初の半年は地道な営業活動に奔走して月商が数十万円程度でしたが、 一年後には「話を聞かせてほしい」と世界中から問い合わせが殺到し、月に数億円売り上げるようになったのです。私たちの力というよりは、マーケットの波に押し上げられた感じでした。 今後は、今まで蓄積してきたユーザーの行動データを駆使し、お金の流れを予測する人工知能を開発し、新しい経済システムを構築していきたいと思っています。 人工知能は特殊技術のように思われていますが、2~3年後には誰でも無料で使える時代が来るでしょう。今からどれだけ有益なデータを集めて、分析や予測モデルを使ってどれだけ経済的な価値を生み出せるかが勝負です。

未知のことが目の前からなくなれば、私の精神は持たないでしょう。もし経営のことが何もかも分かるなら、他の誰かに任せてしまうでしょうね。常に新しいもの、分からないものを探しています。 個人的には、宇宙や生命の領域も追求してみたいですね。どちらも事業化が難しそうな分野ですが、いつでも着手できるように、お金や人的なリソースはできるだけ多く持っていたいですね。 私は、常に背伸びをするように心掛けています。無難な道は選ばずに、今の自分には少し難しいかなと思うぐらいの道を選び続けることで、新しい可能性は開けていくと思っています。 挑戦できなくなった時が、人としての成長が終わる時です。

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