profile
堺直樹
1971年生まれ、神奈川県出身。97年、東洋エンジニアリングに就職し、材料技術エンジニアを務める。デロイトトーマツコンサルティング(同社脱退後、アビームコンサルティングに社名変更)、P&Gジャパンを経て、2011年10月、日本ヒルティに製品統括マーケティング部長として入社。マーケティング部門の製品統括部長、戦略・トレードマーケティング部門の責任者、マーケティング部門の責任者、営業本部長を経て、21年、代表取締役に就任。
https://www.hilti.co.jp/
※本サイトに掲載している情報は2022年6月 取材時点のものです。

INTERVIEW

会社と自分の間に対立関係を持ってしまうと、どんな仕事も「やらされている」と感じてしまいます。こうなると仕事は面白くなくなり、会社に対して不満が募るばかりです。一方、会社のことを「自分事」として捉え、高いオーナーシップを持つことで、仕事は一気に面白くなります。「会社が自分に何をしてくれるか」ではなく、「会社の一メンバーとして、自分が何をできるのか」という主体性を持つことが大切です。

「こういうことをやってみたい」という情熱に素直に動いた

堺直樹

大学では金属工学を専攻し、研究漬けの日々を過ごしました。多くの同期は研究室の推薦枠で就職していく中、私は一般採用でエンジニアリング会社に就職しました。専門性を生かすよりも、組織の中でプロジェクトを動かすことに興味があったのです。建設本部で材料選定に携わりましたが、思った以上に役割が細分化されていて、仕事の全体像が見えづらかったというのがその時持った正直な感想でした。

4年間働いた後、仕事の幅を広げるためにコンサルティング会社に転職しました。前職とは業種が違いますが、早くプロジェクトの中心となってビジネスを回す役割を経験したかったので、業種にはこだわりませんでした。幸い、若いうちにマネジメントを任せてもらう機会にも恵まれ、メンバー同士で個性をぶつけ合いながら何かを成し遂げていくことの面白さと難しさを知ることができました。数年後、関西の大手消費財メーカーに転職し、ブランドマネジャーとしてマーケティングの仕事に携わりました。優秀なメンバーの中でリーダーシップを発揮することを求められ、慣れるまでは大変でしたが、毎日が刺激的で多くの学びがありました。決して計画的に選んだ道ではありませんでしたが、その時々の「こういうことをやってみたい」という情熱に素直に動いた結果が今につながっていると感じます。

40代を迎え、これまで自分が蓄積してきたビジネスマネジメントやマーケティングのノウハウをどのように還元していこうかと考えた時に目に留まったのが、日本ヒルティという会社でした。建設業界向けに測量用の工具やアンカー(建物に部材を取り付けるために打つ鋲)を輸入販売している会社です。シンプルに「世の中の役に立つ仕事だ」と感じましたし、イノベーティブな製品の数々にもひかれました。実際に会社を見た時に、社員一人ひとりが社会に貢献するという強い意識を持っていることが伝わってきて、自分もこのような企業文化の中で一緒に何かを作り上げたいと思いました。また、本社はリヒテンシュタインにあり世界では高いシェアを占めていますが、日本ではまだこれからという状況でしたから、挑戦のしがいがあると感じました。

  • 堺直樹
  • 堺直樹

「製品」「サービス」「デジタル技術」の組み合わせでイノベーションを

マーケティングマネジャーとして入社し、おそらく入社5年目でマーケティング本部長になった頃から次期社長候補の一人になっていたのだと思います。営業も経験させてもらいましたし、海外のステークホルダーと接触する機会も増え、社長就任に向けて着実に準備を重ねることができました。

今までと同じことをやっていても会社の成長はありません。今後は製品に頼ったビジネスから脱却し、製品にサービスやデジタル技術を掛け合わせた大きなイノベーションを起こしていきたいと考えています。物を売るだけではなく、お客様の役に立つソリューションを提供できる会社を目指したいです。そのためにも、お客様のニーズをくみ取り、最適な提案ができる人材を育てていかなくてはなりません。代表に就任してまだ1年ですが、新しい挑戦を楽しめる人が、主体性をもって働ける会社にしていきたいと思います。建設業界の生産性と安全性の向上に貢献していく姿勢は今後も変わりません。私たちの製品とソリューションが建設現場の施工のクオリティーを向上させることで、お客様が地震や災害に耐えうる堅牢(けんろう)な建造物を建てることができ、そこで過ごす人々の生活や命を守ることにつながると考えています。

仕事に情熱をもって楽しむ人が増えれば、日本はもっと良くなると思います。私も情熱をもってここまで進んできました。仕事に情熱を持つことができれば、会社で起こることすべてに当事者意識が芽生え、自分らしいパフォーマンスを発揮することができます。まずは、ささいなことでも「自分はどうしたいのか」ということを自問しながら仕事をする癖をつけるといいと思います。もちろん、会社組織ですから自分のしたいようにできないことだってあるのですが、若いうちからこのような姿勢をどれだけ突き詰められるかで、将来大きな差が生まれてくるはずです。

ページの先頭へ