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最首美枝子
1981年司法書士資格取得し、同年司法書士個人事務所創立。2003年みどり創研を創立し、04年司法書士個人事務所を法人化。15年愛の会を創立。16年特別養護老人ホームゆかり八街西林、18年特別養護老人ホームゆかり岬を創立。20年に愛惠会理事長に就任し23年アングルの代表取締役就任。23年にはジャルダンカトレアいすみを開設した。
https://www.s-s-j.co.jp/
※本サイトに掲載している情報は2023年3月 取材時点のものです。

INTERVIEW

若いころは全く別の仕事をしており、会社勤めの経験もありませんでした。何か自立できる職を身につけて独立したいと常々思っていました。どちらかというと理数系で法律はあまり得意ではなかったのですが、30代半ばで必死に勉強して短期間で資格を取り、事務所を立ち上げました。それから地域の人たちに助けられながら、今年で42年目を迎えます。

相談者の情報を複数の士業で共有、サポート

最首美枝子

司法書士資格を取得後、経験を積むため司法書士事務所への就職を希望しましたが、当時は法人化されておらず叶いませんでしたのですぐ独立を考えました。地縁血縁のない新人の私が不動産登記を受注することは困難と考え、裁判所業務を主に扱う事務所に3カ月、登記案件を多く抱える事務所に3カ月、無給で置いてもらって、慌ただしい環境に揉まれながら必死で仕事を覚えました。特に登記の手続きは顧客の大切な財産を預かる仕事ですから、少しのミスも許されず神経を遣い懸命でした。

その中で特に印象的だったできごととして、相当に困難な数次相続を初めて任された際、ほとんど補正もなく法務局に受理され驚いたことがありました。複雑な案件は補正だらけで戻されることが常でしたので、喜んで先生に報告すると「初心者がソツなくできてしまっては私の立場がない」と機嫌を損ねてしまったことを覚えています。その後「すぐに開業できるよ」と勧められ、開業に踏み切りました。

バブル期前の恩恵ですぐに多くのクライアントがつきました。最初の1年は経験の浅さを痛感しましたが、大きなミスもなく乗り切ることができたのは幸いでした。数年後には同業の夫が、行政書士、土地家屋調査士の資格を取得し、司法書士をはじめ行政書士、土地家屋調査士、社会保険労務士、税理士や弁護士など複数の士業を束ね、ワンストップサービスを展開する事務所へと形を変えました。例えば相続相談であれば、対象の土地の測量や未登記宅地登記は土地家屋調査士、税申告は税理士、争いがあれば弁護士等と、それぞれの事務所を訪ねて回り、何度も同じ説明をしなければならないところを士業を1カ所に集めてクライアント情報をそれぞれが共有でき、費用や時間を削減できます。ただしそれには各資格者に高いスキルが必要です。そこで、新しく入ってくる職員には、充分に研修を受けること、関係資格者等との入念な打合せ、また、受け身ではなくこちらからクライアントの元へ出向き、愛される努力をすることの大切さを伝えています。

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高齢の母に何もしてあげられなかったことへの後悔

06年から介護事業に参入し、現在千葉県内13カ所で施設を運営しています。年輩のクライアントからの相談が介護に及ぶことが多かったため、士業ではできなかった分野に事業領域を広げ、より多くの悩みに対応しようと考えたのです。また、忙しい私を思いやって不満ひとつ言わなかった母に対し、仕事にかまけて入院中に何もできなかった後悔も大きな動機のひとつです。一度だけ母のおむつを交換した時の「ようやく親のお世話ができたね」という母の一言がズシンと胸に突き刺さり「私は大変なことをしてしまった」と思ったことが忘れられません。その1週間後母は亡くなりました。たくさんの愛情を注いでくれた母にもっとしてあげたいことがあったのにと悔やみました。今は母にできなかった分まで地域の高齢者の方々の暮らしを支えたいと思っています。

士業と介護事業の両輪でほぼ解決できると考えていましたが、身寄りがなく施設入所に必要な身元保証人がいない、死後の届出やライフラインの解約等、法と介護でカバーできない相談も多くありました。14年には、そのような人たちをサポートする「一般社団法人愛の会」を立ち上げました。高齢者が私たちを家族のように信頼して話をしてくれることに大きなやりがいを感じています。また、このたび開設したサービス付き高齢者向け住宅では、高齢者に限らず、誰でも気軽に遊びに来られるカルチャー教室やイベントを開催して地域の方々が集まりたくなる居場所の提供を目指しています。将来は子どもの教育を支援することが私の夢です。地域・経済格差で、能力があるのに進学できない子、やりたいことがあるのに叶わない子を支援して、小さな芽を大切に育てたいと思っています。

努力なしに成功を掴むことはできません。私はお金も人脈もないところから事業を立ち上げました。事務所を持つなんて夢のような話でしたが、階段を一段一段上がるように、課題を一つひとつクリアしてきました。情熱を持ち、進む方向を見誤ることなく、誠実に行動すれば、どんな目標も必ず達成できると確信しています。そして、仕事を好きになることです。愛情と感謝がないところに人材は育ちませんし、良い事業も生まれません。利他の精神で愛情を注げば、人も仕事も必ず応えてくれます。

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