- ペトラ・ファーレ
- 2000年にイケア・スウェーデンに入社。IKEA Services Group Retailのセールスディベロップメントマネジャー、イケア・ポーランドの副社長等を歴任。その後、ベッドルーム部門のグローバルビジネスエリアマネジャーとして、商品展開に関する戦略立案、製品開発などの責任者として活躍。21年8月にイケア・ジャパン代表取締役社長 兼 CSOに就任。
- https://www.ikea.com/jp/ja/
私たちは1943年の創業当時から「より快適な毎日を、より多くの方々に」というビジョンを掲げて事業を行っているホームファニッシングブランドです。このビジョンに基づいて、優れたデザインと高い機能性を兼ね備え、丈夫でお手ごろかつサステナブルなホームファニッシングソリューションを人々にお届けできるように日々努めています。人々の家での暮らしを豊かにすることで、人々の人生そのものを豊かにすることができると考えています。
私は、イケアの発祥地であるスウェーデンのエルムフルトにほど近い町で育ち、子ども時代から日常的にイケアで買い物をしていました。ずっと海外に住んで働きたいとも思っていて、周囲の人にそれを言うと、「じゃあ、イケアで働くのがいいんじゃない?」と言われたことがあります。ただイケアは私にとってあまりに身近な存在だったので、当時はピンときませんでした。しかし海外旅行をしたり、海外で勉強したりするまでに成長したときに、イケアを外側から見つめて、そのブランドの価値を再発見し、非常に共感したのです。私と価値観を共にするイケアに入社する選択をしたことは、今振り返ってみても正しい決断だったと思います。
私の考え方は、母が示してくれたインクルーシブ(多様性の受け入れ)という概念に強く影響を受けています。母は世界で何が起きているのかということを理解し、自分事としなければならないと常々諭してくれました。ひとつ例を挙げると、80年にスウェーデンの原子力発電に関する住民投票がありました。当時、私は9歳だったのですが、母は「これはあなたの未来のことだから」と、この事について一緒に調べ議論をし、投票にも私の意見を取り入れてくれました。参加することの重要性、民主主義の特権を利用すること、そして私自身が見たい未来のために私も影響を与えることができると教えてくれました。この出来事は私にとって非常に大きなインパクトを与え、その後、私も人々に対してもそのように接するようになりました。小さく安全な村社会で生まれ育ちながらも、世界で起きていることについて、より深い関心を抱くようになったのです。
まわりの人々は自然を維持するための行動をとっていて、私は幼い頃からそれらに接していたので、自然や澄んだ空気は必ずしも保証されているものではなく、私たちが努力をして維持をし、守らなければならないものという認識がありました。私は自然が大好きです。そして美しい自然がある日本という国を愛してやまないのです。
イケア・ジャパンのCEO兼CSOに就任する機会を得たときに、私は世界で一番幸せ者だと思いました。一生懸命に働き、そして人々とよい関係を築いていけば、このような幸福が巡ってくるのかもしれません。アジアの国にいつか住んでみたいという希望を私と家族は持ち続けており、幸いなことにその機会が巡ってきたのです。日本は、世界で最も素晴らしい国のひとつですから、もちろんすぐにそのチャンスに飛びつきました。
日本に赴任してから最初に取り組んだのは、イケア・ジャパンのコワーカー(一緒に働く仲間)を知るために国内のすべての拠点を訪問することでした。この行動は日本人と日本の社会を理解するためでもありました。この地球上で暮らしを営む全ての人々をケアするという我々の目標があり、この規模は他の企業との違いでもあると感じています。
私がイケアで働く中で素晴らしいと思っている社風のひとつは、世界各地の様々な部門のコワーカーが、「より快適な毎日を、より多くの方々に」という会社のビジョンを共有し、それを実現するために、日々働いている点にあります。私がこれまで働いてきたどのセクションでもその意識は感じられ、一人ひとりのコワーカーを結び付けるものでありました。私自身、イケアで働いてきたこの20年もの間、常に頭の中に置いて意識してきたビジョンでもあります。そして私たちの強みである連帯感を、私たちは誇りに思っています。チームがハッピーであるならば、私自身もハッピーですし、チームとして目標を達成したならば、皆でお祝いをし、私自身もそのチームの一員として誇りに思います。イケアで共に働く仲間と親しい関係を維持し、協調しながら、一緒に未来を創っていきたいと考えています。
現在、お客さまの購買に対する考えが変わってきています。オフラインのショップのみならず、オンラインで購買行動が完結する場合もあります。そんな中にあっても、週末イケア店舗に行く、そんなかけがえのない体験を提供し続けたいと思っています。