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大久保拓馬
神奈川県出身。2008年、鶴見大学歯学部卒業後、名古屋第一赤十字病院、岐阜県立多治見病院、碧南市民病院、佐藤歯科医院を経て18年にしろやま歯科開院。
https://shiroyamashika.com/
※本サイトに掲載している情報は2023年6月 取材時点のものです。

INTERVIEW

全国に歯科医院は無数にありますが、私は歯科医師を目指し始めたころから誰もやっていない独自の歯科医院を地方で立ち上げたいという思いを常に持っていました。「やるぞ」と思ったら、具体的な道筋を描いて行動に移さなければ意味がありません。本気ならば時間がかかっても必ず実現できるはずです。私はこの先もそうやって挑戦を続けるつもりです。そんな人が歯科業界に増えれば、日本の歯科診療はもっと良くなると信じています。

父の遺志を継ぎ、25歳で歯学部へ

大久保拓馬

歯科医師の父の姿を見て育ちましたが、子どものころは自分も歯科医師になろうとは思いませんでした。私は会社経営に興味がありました。しかし地域の人に慕われ頼りにされる父のことは尊敬していました。そんな父の訃報が飛び込んできたのは、私が経営学を学ぶために米国留学していた時のことでした。死因は心筋梗塞であまりにも突然のことでした。周囲から口々に「継がないのか」と言われ、初めて自分が歯科医師になることを真剣に考えました。会社経営の夢は簡単に捨てきれませんでしたが、考えてみれば歯科医師も開業すれば経営者です。翌年25歳で歯学部に入学し、歯科医師の道へ進むことにしました。歯科医師になるまでに数年はかかり、父の医院を継ぐことは現実的に難しかったので、せめて歯科医師になることで父の遺志を継ごうと決めました。

卒業後は地元を離れ、名古屋第一赤十字病院の口腔(こうくう)外科で研修医として働きました。口腔外科は専門性の高い分野です。後から勉強することは難しいため、研修医のうちに経験しておきたかったのです。開業したら複数の医師と協力しながらやっていくつもりでいたので、私に経営と口腔外科のノウハウがあれば、他の優秀な医師もついて来てくれるだろうと考えていました。

現在岐阜県多治見市で開業して5年目になりました。虫歯や歯周病などの一般的な歯科治療、インプラントや歯列矯正、口腔外科に加えて、送迎、訪問診療まで幅広いサービスを展開しています。地域の人にとって「しろやまに行けば大抵の歯の悩みは解決する」と思ってもらえるような唯一無二のクリニックを目指しています。経営者を目指していたころから誰もやっていないことをやるということにこだわっていました。それを地方で先駆けてやることに意味があります。周辺のクリニックが私たちの取り組みをまねしてくれればうれしいです。それで地域の医療が充実すれば住民にも喜んでもらえるはずです。

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「地方都市でもこんなことができる」モデルケースに

スタッフが増えて40人を超えたころから「訪問部門」「メンテナンス部門」「インプラント部門」とチームに分け、それぞれで課題意識を持って成長を目指しています。複数のチームが一人の患者さんにかかわることもあるので、チーム間の連携も欠かせません。大学病院にも診療科ごとにチームはありましたが、みな自分の専門領域で忙しく、横のつながりは希薄なために齟齬(そご)が生じることもありました。私たちは大学病院のような大きな組織ではないので、毎朝数分でも全員で顔を合わせて情報を共有するようにしています。歯科医院では珍しい文化かもしれませんが、クリニックという一つのチームとして機能するために大切にしている取り組みです。最初の1年は一つにまとめるのに苦労しましたが、時にもめながらもお互いの考えを根気強く擦り合わせていくうちにようやく全員が同じ方向を向けるようになってきたと感じています。

今後は専門分野に特化した医師の数を増やしてさらに独自性を高め、「地方都市でもチャレンジングなことができる」というモデルケースになりたいです。地方都市で歯科医院の開業を目指す人から助言を求められることがあれば包み隠さず何でも伝えるつもりです。特に患者さんのニーズが高い訪問診療に関しては見学や研修を積極的に受け入れたいと考えています。訪問診療でやれることは限られているという先入観を持つ人が多いのですが、私たちは訪問先で虫歯も歯周病も治療し、入れ歯の作成も口腔リハビリもやります。壁を作らず、何でもやってみる姿勢をぜひ間近で見てもらいたいと思います。

一緒に働いてくれているスタッフたちを幸せにすることも私の役割だと考えています。もちろん患者さんのことは大切ですが、まずスタッフがやりがいや向上心を持って快適に働けることが大切です。もしもスタッフが事務的な態度で嫌々働いていたら、患者さんはどう思うでしょうか。スタッフが楽しく幸せに働くことは患者さんの幸せにもつながるのです。私にとってスタッフはみな家族や教え子のような存在です。一人ひとりの良さを生かしながら大切に育てたいと思っています。ここで経験を積んだスタッフたちがいつか他の場所で開業して、ここで学んだ取り組みを展開してくれたらこれほどうれしいことはありません。

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