- 大久保麗
- 1994年、東京女子医科大学卒業。同大学形成外科に入局。2002年から東京医科大学にて研修を受けたのち、学位取得。広尾病院、府中病院、災害医療センター、女子医大八千代医療センター等、複数の医療機関での勤務を経て、13年「三鷹の森皮フ・形成クリニック」を開業。19年には武蔵野市に「あらた形成スキンクリニック」を開業。
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自分のことを客観的に見られて、好きなことと仕事のバランスを取りながら、日々頑張って生きている人はすてきですよね。それでいて、ちゃんと余裕がある人にあこがれます。私は苦手な分野よりも得意な分野を伸ばしていく方が大事だと思っているので、これからも好きな分野の経験を積んで人生を豊かにしていきたいですし、若者の皆さんにもそうあってほしいです。
東京都三鷹市で地域密着型の皮フ・形成クリニックを開業しています。診療科目は、一般皮膚科・形成外科・美容皮膚科です。形成外科では、患者さんの外見を元通りにすることで以前と変わらない生活を送ることを手助けしていて、分野は皮膚炎・腫瘍・ケガ・顔面骨骨折の治療・癌の術後の再建・先天奇形など多岐に渡ります。当院は特に日帰り手術やレーザー治療が得意で、縫合技術も優れており、ケガや術後の傷も限りなく目立たないように縫合することができます。皮膚科の診療では、保険の範囲内で適切な治療を選択することも可能です。
もともと数学や科学が得意で、母方の祖父が医師だったこともあり、母から医学部受験を勧められました。本格的に進路を考えたのは高校2年生になってからでしたが、当時流行っていた医療ドラマの影響もあり、その素晴らしい職業にあこがれを抱きました。形成外科を選んだのは、医学部5年次の実習で形成外科を回ったことがきっかけです。見た目の治療を通じて患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上させられることに魅力を感じましたし、特定の部位だけではなく、頭から足まで全身を扱える点も医師として魅力でした。私は以前から刺繍も得意でしたし、これからの時代は傷を綺麗に縫って治す形成外科がますます必要になると聞き、この道に進むことを決めました。
大学病院での勤務経験を生かし、2011年の東日本大震災後に、生まれ育った東京都三鷹市で開業しました。それまでも、いつでも開業できるように皮膚科や先輩のクリニックで経験を積んでいましたが、なかなか踏ん切りがつきませんでした。自分で開業するということは、経営や人事など治療以外の業務が伴うからです。しかし、開業するなら弟と一緒に働けることになり、ようやく覚悟することができました。開業場所もとても悩みましたが、当時の教授から「実家のそばで働くのが一番」とアドバイスをもらい、今の場所に決めました。バス停が近く交通の便が良いので、患者さんたちからも喜ばれています。
開業してみると、皮膚腫瘍・ほくろ・ケガ・ケロイドなど、何科に行けば治療できるのか分からず困っている人が想像以上に多いことが分かりました。例えば皮膚腫瘍は皮膚科でも治療できますが、外科的に切除するなら形成外科が最適なのです。開業して良かったことは、このように患者さんのリアルなお悩みをダイレクトに引き出せて、治療の成果までダイレクトに見えることです。患者さんのお悩みは千差万別なので、一人ひとりの悩みや問題点を理解し、最適な治療を提供することを心がけています。皮膚の改善には日常生活における適切な栄養摂取や睡眠が不可欠なので、その知識もできる限りお伝えしています。患者さんに迷惑をかけないために、私自身のセルフマネジメントも大切にしています。
やりがいを感じる瞬間は、患者さんから「ここに来て本当に良かった」と言っていただけるときです。自分の技術で患者さんの悩みを解決できたことに、大きなやりがいを感じます。今後は、正しい傷の治し方や顔の洗い方など、日常生活における基本的な知識をさらに広めていきたいです。形成外科の認知度を高め、必要なときに適切な治療を受けられる環境づくりに貢献していきます。私自身が良い状態であることも非常に大事なので、仕事もしながら好きなこともして、周りの人も一緒に幸せになれる生き方をしていきたいです。健康に気を付けながら元気に毎日仕事して、クリニックを長く開き続けることが目標です。
今はインターネットやSNSのおかげで良くも悪くも情報が氾濫していますが、人は実際に自分で見たり経験したりしたことが身になっていきますから、興味があることは実際に体験することが大切だと思います。形成外科も、教科書で学んだことと実習で体験したことは全く異なりました。あのころ形成外科で実習していなければ、形成外科に入局しようとは思わなかったです。今でも、できるだけ新しいことを取り入れるために学会等には積極的に参加していますし、興味があることはまず体験することを心掛けています。若者の皆さんは特に時間があると思いますので、今できることに一生懸命取り組んで、今後の人生に生かしてください。
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