- 太田裕之
- 関西大学経済学部卒業。フルコミッション営業と販売マネジャーを経て、土木建設業に転身。地盤改良工事・推進工事等の非開削技術工事の導入・施工管理、営業、新規事業インターネットサポート会社設立に携わる。同業他社に移籍。人財育成・営業・インターネットによる施工管理共有仕組みづくり・新工法企画開発に携わる。新工法部門では特許技術を取得、フランチャイズ展開、設計積算図書編集・発刊。2012年、特殊非開削施工会社としてドゥ・マイ・ベストを起業。
- https://doomybest.com/
小売業から縁あって飛び込んだ土木建設業。転職を経て独立したものの、心のバランスを崩し、うつ病になってしまいました。一度は逃げ出した 土木業界にもう一度関わろうと思ったのは、自分が一番役立てる業界だと思ったからです。業界の嫌な部分を外側から変えていきたい。そんな思いで、コンサルティング事業を立ち上げました。目指すは「世界正福」。土木業界だけにとどまらず、自分を含めたあらゆる人たちが、平和と幸せを享受できる世界を実現したいと思っています。
コンビニエンスストアで雇われ店長をしていたころ、ある土木会社の社長の息子さんから「うちにきませんか」と誘われたことを機に、経験したことのない土木の世界に足を踏み入れることになりました。 土木業に興味があったというより、その人と一緒に働きたいという思いが強かったのです。「売るのも作るのも同じようなものだろう」と思い、誘われた翌日には退職の手続きを始めました。
土木の世界はカルチャーショックの連続でした。初日に「真砂(埋め戻し用土)取ってきて!」と言わ れ、面食らいながらもやるしかありませんでした。初めて重機を操作し、同じく初めて4tダンプ車に土を積んで運ぶ。「危険な仕事をしているはずなのに、こんなやり方でいいのか?」と疑問を抱くことばかり。私の理想の仕事とは駆け離れたものでした。そうした風習を変えるには、まずは仕事が分かるようにならなければ話になりません。そのため、みんなが仕事を終えたあと重機の練習をし、誰もやりたがら無い面倒な書類仕事をし、積極的にできる仕事の幅を広げていきました。「この新しい仕事をしてくれる人は?」と言われたときには、果敢に手を挙げる。そうすることで、この仕事の一番は自分だと思えるものも増えていきました。
社長の突然死がきっかけで、他の土木会社に転職することにしました。当時、新規特殊工事のひとつ目の特許を取得した頃でした。転職は自分の創り出した工事を続けるための選択でした。しかし、中小企業の土木会社の多くは同族会社。その同族の壁は高く厚い、ワンマン体質。私は、利益だけを追求する体制の歯車の一部で居続けることができず、自分で開発した工事が納得してできる環境を創るために起業しました。
施工会社を起業した私が直面したのは、取引先企業から強いられる不正でした。公共工事の数値の改ざん等の強要です。断りましたが、その様な人たちと仕事をすることが堪えられず、心のバランスを崩しうつ病になりました。
心療内科に通院し快復してからは「もうこんな業界は関わりたくない」と考え、新しい人生の出発点探しに異業 種交流会、セミナー、ボランティア活動に参加し、さらにはインターネットやSNS等ですてきな仕事をしている会社やすてきな人生を歩んでいる人を見つけては逢いに行きました。うつ病になってやっと分ったことは、「人生は幸せであることが正しいこと」「人の幸せは自分独りだけでは得られないこと」。これからは人のためになる正しい生き方をしたい、そのために何ができるだろうと考えたとき、辿(たど)り着いた答えは自分が嫌だと感じた土木業界を変えたいと言う思いでした。そうして選んだのが、現場をサポートするから幸せに働ける組織環境に変えるお手伝いとしてのコンサルタント事業でした。現場職員さん向けに人財育成講座を開きます。人材育成と呼んではいるものの、何かを教えるというより、現場の悩みや会社への不満を聴き出す亊が一番の目的です。その結果を経営者に伝え、現場改善へとつなげて行きます。例えば、若い職員から「仕事終わりは泥だらけだからそのままデートに行けない」と言う不満を匿名アンケートから得られました。講座後の社長への報告の一つとして「簡易シャワールームの設置」を提案させていただきました。簡易シャワールームが設置されることで会社は従業員からの小さな信頼度を上げることに成功。この小さな信頼度=職員の満足度の積み重ねが信頼関係を作り、職員の仕事への向き合い方も変わっていくのです。最大の生産性向上は職員の幸せを実現する組織環境を作ることです。
私が目指しているのは「世界正福」。人として正しい選択をすることで幸せな人生を送る亊。そのために、自分は正しいを見極め、行動し続けたい。今後は土木業界にとどまらず、地域活性化にも挑戦して行きたいです。あたらしい人生の出発点探しの中、縁あって、中学生と地域の大人が同じ課題に対し話し合うプログラムを開催するNPO法人に関わる機会がありました。そこで感じたのは、中学生の可能性を摘んでいるのは我々大人だと言うこと。子どもたちの可能性を潰すことのない大人として、社名「ドゥ・マイ・ベスト」の文字由来通り、全身全霊ベスト尽し「世界征福」を目論んでまいります。