profile
荻野誠
1961年2月生まれ、愛知県豊橋市植田町出身。酪農家の長男として生まれる。83年名城大学農学部農芸化学科卒業後、中央製乳に入社。技術職にて経験を積み、2018年に常務取締役、21年代表取締役社長に就任、22年には、新潟県燕市所在する第一食品株式会社の代表取締役会長にも就任し、現在に至る。
http://www.chuomilk.co.jp
※本サイトに掲載している情報は2023年4月 取材時点のものです。

INTERVIEW

学生時代学んだ専門知識は就職後あまり必要ではないことが多いです。必要なのはその会社、部署、業務のことを知ること、記憶すること、実践すること、そして創造することです。それができれば、どこでも通用する人になれると思います。そのために自己評価ではなく自己啓発を行い、洗い出された改善点の解決方法を考え、受動的ではなく能動的に実行していきましょう。

地産地消にこだわる

荻野誠

私たちは愛知県の乳製品メーカーで、牛乳、乳製品、清涼飲料水、プリン、アイスクリームを製造販売しています。地産地消にこだわり、地場に根付いた企業であることを大切にしています。当社には「酪農と乳業は両輪のごとく」という教えが受け継がれており、「一円融合」を社是にしています。これは、酪農家がいてはじめて我々のような乳業が生まれ、乳業があってはじめて酪農家はお客さんを獲得できるという意味です。この辺りの酪農家たちは当社の株を保有していますが、これも一円融合の表れでしょう。酪農家たちとは定期的に会合をして、良好な関係を保っています。

私は酪農家の家に生まれ育ち、幼少期は搾った乳を2斗缶に入れ、父に連れられて中央製乳に持っていっていました。中央製乳に小さいころから親しみがあり、将来は中央製乳の研究課に入りたいと思っていました。大学卒業後、中央製乳に入社したものの、製造現場の職人気質な人たちとのギャップに長年悩まされました。基準がない作業手順、課題の多い衛生管理、考え方などをいかに改善していくか、研究課での作業をしながら考える毎日でした。先代の社長が急逝したことで、引継ぎもないまま7代目社長に就任しましたが、生前に今後の会社や従業員のあり方について話し合っていたので、迷うことはありませんでした。

就任当初目指したのは、従業員が会社に来るのが楽しい会社、地域の方たちにとって親しみのある会社です。究極の理想は従業員の子供や孫からも当社に勤めたいと思ってもらえることです。そのためには商品を売ることは大事ですが、人の心に刺さる魅力づくりも欠かせません。そのためのブランディングも強化しています。社外に商品や会社の魅力を発信するためには社内へのブランディングができていなくてはならないので、専門家の力を借りながら実践しています。また、酪農乳業はだんだん右肩下がりになっているので、食育やPRも欠かせません。学校で出前授業をしたり、私自身がキャラクターの着ぐるみを着てイベントに出たりしています。スタッフが「中に入っているのはうちの社長です」と言うと、盛り上がります。

  • 荻野誠
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能動的な仕事と自己啓発を

目先の売り上げと利益を追求するだけでは会社の発展は成し得ません。発展は人、施設設備、情報に投資した結果得られると考えています。私は特に主体性を育む人材教育に注力していて、社員に自己啓発の重要性を伝えています。会社から指示されて受けるセミナーは受動的で身につきにくいですが、自分から志願して参加したセミナーは良く覚えているものです。人材教育は社員に自らやろうとする気概がないと効果がないということです。だからこそ私は情報は与えますが、その後は社員がそれにどう反応して動くかを見守っています。仕事とは自ら想像し、考案し、実行していくことです。ただ言われたことをやるのは「作業」に過ぎません。それでは面白くないでしょう。

これからも地産地消を貫き、地産物を守っていく姿勢は変わりません。愛知県民750万人が当社の商品を年間2000円買ってくれたら、それだけで150億円の売り上げになるので、当面はそれをゴールにステップを踏んでいくつもりです。私はいつか社長を退任して副社長になりたいと夢見ています。社長が言うと命令になりますし、従業員も意見を言えないでしょうが、副社長なら言いやすいと思います。社内で一番動きやすく、従業員にとって一緒に取り組みやすい最高上司こそ、副社長なのです。今後社長を任せられると思える人材が育ったら、それを実行して会社を益々発展させたいと思っています。

私の道しるべは、「至誠天に通ず」「温故創新(おんこそうしん)」「3C」の三つです。一つ目の「至誠天に通ず」は一般的には真心を込めてやっていれば最後は天が認めてくれるという意味ですが、私はそうではなく、まわりの意見に左右されずに自分の誠を通していけば自分のやりたいことができるという意味に解釈しています。二つ目の「温故創新」は造語で、変えてはいけないものはしっかり伝承しつつも、外的環境に応じた新しいものを創っていくという意味です。三つ目の「3C」は、チャンス、チャレンジ、チェンジの頭文字です。自らチャンスを探しに行き、そのチャンスにチャレンジし、必要に応じてチェンジするという意味です。若者の皆さんもこれらを心がけてみてください。

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