profile
小笠原羽恭
1994年、青森県出身。新卒で野村総合研究所に入社、エンジニアとしてシステム開発や新規事業開発に従事。ベイカレント・コンサルティングに転職し、戦略コンサルタントして新規事業戦略立案・営業戦略立案などのプロジェクトをリード。2021年、CrossBorderを4人で共同創業し、代表を務める。日本初のセールスインテリジェンスSales Markerを提供。
https://cross-border.jp/
※本サイトに掲載している情報は2023年2月 取材時点のものです。

INTERVIEW

「自分のアイデアで社会課題を解決したい」という思いは、子供のころからありました。小学生の時は地球温暖化問題に関心を持ち、子供なりにいろんな解決策を考えて書いた作文が入賞しました。社会人になってから、仲間とハッカソン(テック系のコンテスト)に出場してアジア大会で優勝した時は、「これが自分にとって人生で一番喜びを感じる活動だ」と心から思いました。まだ誰にも解決できていないことに取り組む時のわくわくする気持ちは、今も変わりません。

ビジネスコンテストに挑んだメンバーたちと起業

小笠原羽恭

父がシステムエンジニアだったので、子供のころからパソコンに触れる機会が多く、便利なテクノロジーが次々と世に出てきているのを感じていました。大学ではソフトウエア工学を専攻しました。不便なこと、非効率なことが嫌いなので、たとえば役所などの煩雑な手続きを効率化するような、生活を便利にするシステムを開発したいと考えるようになりました。

やりたいことが決まっていたので、大学2年生のころには3、4年生に紛れて就職説明会に潜り込んでみたりインターンシップに参加してみたりして、就職活動に取り掛かっていました。そのかいあって新卒で野村総合研究所(NRI)に就職することができました。社内のプロジェクトは既存システム関連の仕事が多かったのですが、私は必ず新規事業に携わりたいと考えていました。特にブロックチェーン技術に関心が高かったので、社内で最も専門性が高い技術者になろうと決意しました。日本初のプラットフォームを構築するプロジェクトに立候補して参画の機会を得たことで、貴重な経験を積むことが出来ました。2年目には専務が推進するプロジェクトにブロックチェーンの専門家として抜擢(ばってき)され、入社時の目標を想定より早く達成できました。

プロジェクトを通じて、社会課題を解決するには技術だけではなく、ビジネスも学ぶ必要があると考え、戦略コンサルタントに転身しました。休日は、同僚や大学時代にインターンシップで出会った仲間3人とチームを組んでハッカソンに出場し、アプリ開発に明け暮れました。その結果、私たちが開発したデリバリーアプリは3冠を獲得し優勝することができました。メンバーはみんな頼もしく、それぞれ異なる得意分野を持っていたので、このチームなら社会の課題を解決する新しい仕組みを生み出せると確信し、起業に踏み切りました。コンサルタント時代に、大手企業の営業戦略の立案にかかわったのですが、ターゲット顧客の情報収集は地道にヒアリングを重ねるというアナログで非効率的な方法しかなく、苦労しました。同様の課題を抱える企業は少なくないですが、ターゲット企業のニーズを基軸とした分析ができるツールは国内ではほとんどありません。チームの強みを生かせることもあり、事業領域をセールステックの分野にフォーカスしました。

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誰もが課題解決に取り組める世の中に

国内企業500万社の行動履歴を分析し、どの企業がどんなことに興味があり、どんな課題を解決したいのかをリアルタイムに分析して営業アプローチができる「Sales Marker」というサービスを開発しました。ユーザーのニーズを取り入れながら改良を重ね、ターゲット顧客ごとに自社製品へのニーズをスコアリングする機能や、部署・担当者情報も搭載するなどして、より確度の高い見込み客に絞って効率的な営業ができるようになりました。「相手がちょうど検討していたタイミングでアプローチできた」「すぐに成約が獲得できた」というユーザーの喜びの声を聞いた時は、私たちも嬉しい気持ちになります。

いまだに営業の世界は何件も断られながらも泥臭く数をこなすやり方が主流です。そのために「営業の仕事だけはしたくない」「必要ないのに押しかけられて迷惑だ」と、営業職にネガティブな印象を持つ人が多いのは残念です。本来、営業はお客様の課題を解決し、喜んでもらえる素晴らしい仕事です。私たちのシステムで営業する側もされる側も快適に商談ができるようになり、営業職のイメージを変えることができればいいと思います。誰もが既存の枠組みにとらわれずに新しいことに挑戦できれば、社会課題の解決はよりスムーズになるはずです。「この課題を解決する方法はないか」と思ったことに対して、瞬時に情報を集めて必要なことを提案してくれるような仕組みを作ることが、この先の目標です。テクノロジーやデータを駆使して、誰でも社会の課題解決に取り組むことができる世界を作りたいと思っています。

何かに挑戦しようと思った時、多くの人が常識や固定概念にとらわれて「やっぱり無理だ」「やめておこう」と諦めてしまっていると思います。そのハードルを越えるには、「できる」を前提にすることです。そして、どうすればできるのか、何をクリアすれば成し遂げられるかを考えていけば、糸口はきっと見つかるはずです。若者のみなさんには、既存の枠組みにとらわれることなく挑戦を続けてほしいと思います。

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