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小畑秀之
1971年5月兵庫県西宮市生まれ。95年3月関西大学経済学部卒業後、食肉メーカーに就職し、売れる企画提案を重ねてZ型営業に目覚める。社員研修・経営コンサルティングの提案営業を通し、「人をそだてる」経営の重要性に気づきそだてるを設立。従業員参加型の会議や研修など、現場に参加してもらい、現場から変わっていくコンサルティングスタイルを確立している。
https://www.sodateru.co.jp/
※本サイトに掲載している情報は2023年3月 取材時点のものです。

INTERVIEW

働くことに対してネガティブなイメージを持つ若者が多いのは、大人が「仕事はしんどい、つらい」と子供に伝えていることが原因です。これは働く大人の責任です。それを変えないと、この国は良くなりません。私たちは企業研修やコンサルティングを通じて、人が幸せになる企業を増やしたいと考えています。働く人一人ひとりが輝き、それを見た子どもたちが「早く仕事をしたい」「早く社会の役に立ちたい」と思える。そんな社会になればすてきだと思っています。

育てることは、人間の本能

小畑秀之

大学を出ると、食肉メーカーの営業として就職しました。配属先の営業所長は変わった人でした。成績の良い部下には「他の営業所に移って、もっと上を目指しなさい」と言って次々に送り出し、パッとしない部下には「俺が面倒を見るからあと1年ここで修業しなさい」と言って手元に残すのです。優秀な部下を残したほうが営業所の目標を達成しやすく、所長自身の評価も上がるはずです。自分の評価よりも部下のキャリアアップを優先する所長に会って「こんな人がいるのか」と驚いたことを覚えています。優秀な部下がどんどん異動していくので営業所の数字が飛躍的に伸びることはなかったのですが、所長の元で育った部下たちは後に重要ポストに昇格していきました。そして彼らは「部下を育てる」という所長の価値観を全国の営業所で広めていったのです。私が所長のもとで働いたのはわずか2年でしたが受けた影響は大きく、自分も他人の成長に寄与したい、人を育てたいと考えるようになりました。

経営コンサルティング会社に転職してマネジメントを学び、36歳で人材育成のコンサルティングや研修を行う会社「そだてる」を立ち上げました。現代社会では、役に立ちそうな人だけを育てて、できが悪い人は切り捨てるようになってしまいましたが、本来、育てることは人間の本能だったはずです。社名の通り、誰ひとり見捨てることなく育てようという思いで始動しました。

私たちが特に力を入れているのは管理職とされるリーダー層への教育です。人は高額な給料をもらうだけでは働く幸せを感じることはできません。働く人が輝くのは仕事でやりがいや喜びを得られたり、必要とされたり、感謝されたりする時ではないでしょうか。幸せな従業員を増やすためには経営者の意識を変えるだけではだめです。経営者の意向を現場に落とし込む管理職、リーダー層の育成こそカギなのです。

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「条件」より「思い」で仕事を選んだっていい

組織を変えるには、制度よりも風土を変えることです。上司が部下に感謝の念を持つことも、お互いの価値観を認め合うことも風土です。リーダー層が育つと組織の風土は劇的に変わります。私たちの研修は1日では終わりません。習慣化するために何カ月も時間をかけてマネジメントの基本から部下とのコミュニケーションの取り方、育て方などを丁寧に伝えていきます。クライアント企業に毎年新人の9割が辞めてしまっていた部署があったのですが、リーダーが私たちの半年間の研修を受けてからは離職者がゼロになりました。

今後は「個が輝く企業をつくり、子どもたちが早く大人になりたくなる社会をそだてる」という経営理念の実現に向けて本格的に取り組んでいきたいと思います。私たちだけの力で社会を動かすことは難しいので、20年にEH経営研究会(EH=Employees Happiness)を立ち上げ、同じ志を持つ全国の経営者やリーダー、講師、コンサルタント仲間たちと定期的に勉強会を開催しています。また、これから社会に出る学生や子どもたちに向けて、働くとはどういうことかを伝えていきたいと思っています。毎年インターンシップで多くの学生を受け入れていますが、彼らと話していると就職先を福利厚生や給料などの条件で選ぶ学生が多いと感じます。就職や仕事は、幸せな人生を歩むための手段です。条件で選ぶことが悪いわけではありませんが、自分がどんな人生を送りたいかという「思い」を優先して仕事を選んでもいいということを多くの若者に知ってほしいと思います。

幸せは一気に訪れるものではなく、日々の積み重ねから得られるものです。常に「今日が人生自己ベスト」と思えるように過ごしていくことが大切です。毎日すごいことを成し遂げる必要はありません。ささいなことでいいので「昨日を超える今日」を積み重ねることで、気がつけばすごいところにたどり着いているはずです。若者のみなさんも自己最「幸」記録を毎日更新していくことで、より幸せな人生を送ってください。

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