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野澤靖久
1974年生まれ、静岡県出身。97年、慶應義塾大学商学部卒業後、りそな銀行(旧あさひ銀行)入行。 企画部、個人営業部長、支店長などを経て2020年コンサルティング会社入社。21年NOZAWA代表者取締役社長に就任。
https://www.nozawa-corp.com/
※本サイトに掲載している情報は2025年2月 取材時点のものです。

INTERVIEW

幼い頃から父に「スポーツと勉強、どちらか一つだけではだめだ。文武両道を目指しなさい」と言われて育ち、子どもの頃はサッカーと生徒会、学生時代は勉強と陸上部、銀行員時代は本部と現場、法人と個人、貸出金と預金と、常に対比の中で幅広い経験を積んできました。一つの強みだけで生き残ることが難しい時代です。二足の草鞋は決して楽ではありませんが、それぞれの強みを掛け合わせることで初めてシナジーと付加価値が生まれます。みなさんもいろんなことに挑戦して、複数の強みを身に着けてみてください。

資金繰りに苦しむ運送業界を救う一手

野澤靖久

新卒で銀行に就職すると、勉強して宅建士や証券アナリスト、ファイナンシャルプランナーなどいろんな資格を取得しました。どれか一つを持っている人は珍しくありませんが、複数持っていることでより複合的なサービスや知識をお客様に提供できると考えました。銀行員の仕事を“潰しが効かない”などと言う人もいますが、決してそんなことはありません。若いうちから様々な業種の経営者の方と接する機会に恵まれましたし、個人・法人問わずいろんなお客様と出会うことで得た経験や知識は今のビジネスの土台になっています。銀行員を経験できて本当によかったと思います。

ただ、お客様に対して「こんなサービスがあれば」というアイデアがあっても、一行員としてできることには限りがありました。特に気がかりだったのが、運送業のお客様のことです。運送会社は、景気が低迷すると真っ先にあおりを受け、配送料の値下げを余儀なくされてしまいます。また、運送業界を苦しめる要因の一つが、資金繰りの難しさです。配送トラックは本来20年近く長持ちするにもかかわらず、税法上の耐用年数はわずか5年。運送会社のお客様がトラックの設備資金として銀行から受けた融資を5年で返済しなければならないのを目の当たりにして、心苦しく思っていました。本来の耐用年数に応じて返済年数を伸ばしてあげられる仕組みがあれば、運送会社の資金繰りも安定しキャッシュフローも改善するはずです。銀行の枠組みを超えてお客様の困りごとを解決するために、入行から23年目に運送業向けのコンサル会社に転職しました。コロナ禍で低迷していた日本の経済を懸命に支えてくれた運送業界の力になりたい一心でした。

会社を立ち上げたのは4年前です。運送会社や業界団体などの方と会ってヒアリングすると、経営努力をしているにもかかわらず業績に結び付いていないケースが思った以上に多いことが分かりました。ヒアリングからくみ取ったニーズをもとに、まずトラックのリースバック事業を開始しました。運送会社が資金調達のためにトラックを売却後、リース契約を結ぶことで、引き続き車両を使い続けることができる仕組みです。

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金融商品として投資家向けに展開も

リースバックシステムと並行して、運送会社が売却したトラックを減価償却資産として購入できる投資家向けのサービスも開始しました。運送会社にとっては車両を手元に残したまま資金調達できることで財務バランスや収益の改善につながりますし、投資家にとっても車両を投資の運用対象とすることによって利益の平準化のコントロールができます。双方にとってメリットがあるというのは、ビジネスを続けていくうえで大切なことです。

現在、トラックドライバーの時間外労働が大幅に規制された“2024年問題”に対応するべく、新たな取り組みを進めているところです。ドライバーや輸送能力の不足に備えて、複数の運送会社とパートナー契約を結び、ドライバーが足りているところから不足しているところへ人繰りができるようなシステムを考えています。少人数で効率良くトラックを活用するためには、GPSでの運行管理などITの力が不可欠ですが、いまだにアナログで運用している企業がたくさんあります。たとえばリースバックした車両にGPSをつけて金融商品としての付加価値を加えれば、投資家にとっても運送会社にとってもさらなるメリットが生まれ、発展性のあるビジネスになるでしょう。物流と金融とITという今までにない3つの掛け合わせを実現できれば面白いと思います。

日本は金融リテラシーの面で遅れを取っていると言われています。金融機関が扱う商品がきわめて限定的であることがその一因です。世の中には多種多様な金融商品があることを日本でも多くの人に知ってもらい、税や金融の知識を習得する機会を増やしたいと考えています。実現できれば、日本の経済はもっと強くなるでしょう。年を重ねると新しいことを学びにくくなりますが、いろんな知識を貪欲に吸収し、その中で腹落ちしたものを試してみることで、新しい世界が開けます。

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