- 七村守
- 1955年、大阪府生まれ。79年に山口大学経済学部を卒業後、リクルートへ入社。北関東支社長を務めたのち、90年に独立しサブ・アンド・リミナル(現セプテーニ・ホールディングス)を設立。01年、ジャスダック市場上場。25年間代表取締役を務めた後、14年に名誉会長に就任。
- https://www.septeni-holdings.co.jp/
父が他界したのは、私がまだ10歳の時でした。4人兄弟を育てるために休みなく働く母の姿を見て、私も新聞配達を始めました。 生活は大変でしたが、そのおかげで自立心が芽生えたと思っています。母も私が26歳の時に亡くなってしまいましたが、 そのことが自分で生き方を選ぶきっかけになったとも言えます。 過去と他人は変えられないもの。「あの時あの大学に受かっていれば」とか「違う道を選んでいれば」とか、過去を否定するようなことを考えても仕方がありません。 なるべく過去を肯定して生きようと思っています。
生活が苦しかったので、大学も受験料から授業料、生活費まですべて奨学金とアルバイトで乗り切りました。かといってそんなに苦学生然としていたわけでもなく、 サークルにも入ったし自由な時間も楽しんでいましたよ。自分で生きることができるんだという自信も出てきた頃でした。
入学してすぐ、所持金がほとんどなかったので電話帳を片手に片っ端から仕事を探し、ピザ屋のアルバイトを始めました。 最初は皿洗いやウエーターをしていたのですが、3年目ぐらいから店の2階の空きスペースを使ってイベントの企画や運営を任せてもらいました。 これがなかなかうまくいき、お店からマージンも頂いていたので一般社会人の倍ぐらいは稼いでいましたね。 大学卒業後にリクルートに就職したのは、早く昇進できて責任ある仕事をさせてもらえると思ったからです。それ相応のスキルやノウハウを身に付けるために、 特に最初の2年ぐらいは毎日必死に勉強しました。リクルートには12年間在籍しましたが、今思い返してもかなり成長できた期間だったと思います。
独立したのは34歳の時です。当時、学生の間では大企業志向が強く、中小企業は人材の確保に難を抱えていたので、 こうした課題を解決する仕組みを作りたくて人材コンサルティングの会社を立ち上げました。 ところが事業は思うようにいかず3カ月目には資金も底を突いたので、社員に「給料が払えないので辞めてくれてもいい」と言ったんです。でも誰も辞めなかった。 うれしいけど、無い袖は振れないし借入もできません。悩んだ末、取引先に契約金の前払いをお願いしに行くしかありませんでした。 ありのままを正直に話そうと思い、わずかな残高の通帳のコピーを持参すると「お前はアホか」とあきれられましたが、 ありがたいことに事情を酌んで前払いを承諾してくださったんです。持ち直したのはそのおかげです。事業が軌道に乗るまで、 いろんな失敗を重ねながらルールや考え方を積み上げてきました。
その後も試行錯誤しながら次々と新しい事業に着手し、現在は主にインターネットのプロモーションを国内外に展開しています。 手法もデバイスも目まぐるしく変わっていく中で最先端のノウハウやアイデアを提供するために、日々注力しているところです。 新しいことを作り出すためには、私が指示を出すだけではなく、社員たちの自主性を引き出せる環境が必要だと思っています。 「うちにはこういうものがない」と嘆くのではなく、ないなら自分たちで作っていこうと社員たちには常々言っています。
一時は社員がなかなか定着せず、辞める社員を無理に引き留めていた時期がありました。しかし、それは本人のためでなく、会社のためじゃないかと気づいたんですね。 それから「今後は無理に引き留めることはしない」と宣言すると、社員が辞めなくなったんです。人が集まる会社というのは人が辞めない会社ではなくて、 辞めてもまた戻って来たくなる会社、あるいは中で働く人たちが自分の仲間も呼びたいと思うような会社だと思っています。それを目指せばきっとすてきな会社になるはずです。 業績が上がった時よりも、うちで働いている社員の満足度が上がった時のほうが経営者にとってはうれしいのです。 その結果として、社外の方からいい会社だと評価していただけたら良いと思います。
セプテーニグループを「強く偉大な企業」にしていきたいと考えています。世の中に必要とされることはもちろんですが、我々が発信することで社会が変わっていく、 そんな影響力を持った会社でありたいですね。 私は人と違う生き方をしようと思ってここまで来ました。新しいものを生み出し、世の中で突出するためには必ず人と違うところが求められます。 恐れずに新しいことにチャレンジして、世界を変えていくという気概を持っていれば、人生を最高のものにできると思います。 若い皆さんもぜひ、人と違う志とチャレンジで日本や世界を変えてください。
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