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中村喜美恵
1988年3月京都大学薬学部卒業後、「臨床を仕事にしたい」という想いから大阪大学歯学部に学士入学(専門課程編入)する。その後卒業。大阪大学歯学部の勤務を経て、2003年姫路市に「きみえ歯科」を開業し院長となる。また日本ホームヘルスコーチ協会認定ホームヘルスコーチとして、お口のメンテナンスはもちろんのこと、「健康に美しく!」をテーマにたるみ予防の指導や講演活動を精力的に行っている。
https://www.kimie-shika.com/
※本サイトに掲載している情報は2025年3月 取材時点のものです。

INTERVIEW

“町医者”という言葉が好きです。歯科医師ですが、全身の状態を診たうえで治療を行います。口と全身はひとつながりです。悪いところを治療するだけではなく、全身を健康にするためにできるケアを惜しみなく伝え、患者さんに心身ともに元気になっていただく。そんな“町医者”として、お口からみなさんのトータルの健康を守っていきたいと思っています。誠実に接すれば、患者さんは根気強く継続して下さいますし、遠方からも通って下さいます。「先生に診てもらうと、なんだか調子がいいのよね」と言っていただけることが何よりうれしいですね。

大学進学が叶わなかった両親への思いが原動力に

中村喜美恵

父は農家、母は漁師の家の出身。歯科医とは無縁の家系に生まれました。父が製鉄会社から独立して鉄工所を立ち上げ、母と一緒に忙しく切り盛りする姿を、幼いころから見て育ちました。両親から直接聞いた話ではありませんが、父は「農家の長男に学問は不要」、母は「女に学問は不要」と言われ、大学進学が叶わなかったそうです。両方の祖母からその話を聞かされた時、そんな時代の理不尽さへの憎悪なのか、言いようのないやるせない思いがこみ上げてきたことを覚えています。つらい時や自分に負けそうになった時には、この強烈な悔しさとも憎しみともいえぬ感情を思い出すことで、乗り越えてきました。

今思えば、父が私のやることに口を出すことは一切ありませんでした。受験勉強をしていたある夜、父が「はかどっているか」と声をかけてきたことがあったのですが、一言だけ「男に遠慮をすることはない。力いっぱいやれ」と言ってくれました。両親が行きたくても行けなかった大学に、私は2度も行かせてもらいました。

1度目は薬学部に進学しました。高校の先生に「化学と英語が得意だから薬学部が向いているかもしれない」と勧められるままでした。高い志があったわけでもなく、そこは今の若い人のほうがよほどしっかりしていると思います。ただ、何かやりたいことが見つかった時に、勉強していなかったばかりに選択肢がないという状況にはなりたくないと思っていた気がします。薬学部の4年生になり将来の仕事を考えた時、研究よりも臨床の現場で患者さんと向き合いたいという思いが強くなり、手先を動かす作業も好きだったことから歯学部に編入しました。

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自分がいいと思うことをする、してほしくないことはしない

30歳を過ぎた頃、次女の出産を機に地元に戻り、2人の幼い子どもを育てながらクリニックや診療所でパート勤務をして過ごしていました。開業など考えたこともなかったのですが、転機は突然訪れました。父が倒れたのです。父の所有するビルは負債を抱えていました。私のパート代ではとても支払いが追いつきません。ビルを潰すにもお金がかかりますし、何より父の積み上げてきたものまで潰すような気がしてできませんでした。最終的に、私が父のビルで開業して蘇らせるしかないと思い、覚悟を決めました。子育てで手いっぱいで何の準備も自信もありませんでしたが、夫が全面的に支えてくれました。もう前しか向いていなかったと思います。開業セミナーに参加し、準備に奔走するうちに、いろんな人が手を差し伸べてくれました。経営のことは何も分かりませんでしたが、とにかく誠実に、「自分がいいと思うことをする」、「してほしくないことはしない」ということを心がけていました。これは今も大切にしていることであり、私の信念です。

患者さんには、正しい姿勢や歩き方などについてよくお話しします。「歯と何の関係があるのだろう」と思われるかもしれませんが、頬杖やうつぶせ寝など日頃の姿勢の歪みが、歯並びや顎関節の不具合にもつながるのです。歯だけを治療しても、根本の原因を解決しないことにはいずれまた同じ不具合に悩むことになるでしょう。しっかり咀嚼するためには首から上の筋肉を正しく使うことが大切で、そのためには土台である首から下も正しい姿勢を保つことが必要なのです。当院では、まずは呼吸や安静時の姿勢の確認をして、お口のポジショニング、正しい咀嚼や嚥下の指導へと繋げていきます。また、口の中の良い菌まで殺してしまう薬剤はなるべく使わず、天然の材料を使用して、人が本来持っている免疫力を高めて予防していくことにこだわっています。

お口の健康を通して全身を意識することで、これからも患者さんと一緒にトータルな健康美、健康長寿を目指していきたいと思います。患者さんに前向きにホームケアを頑張っていただくためにも、私も健康や美容に有益な情報を常にアップデートして提供し続けていきます。患者さんに「やってくださいね」と丸投げするのではなく、「私もやっているので、一緒に頑張りましょうね」と伴走するスタンスが大切だと考えています。

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