profile
仲暁子
1984年生まれ、千葉県出身。08年、京都大学経済学部を卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。2年目で退職し、漫画家を目指す。10年にフェイスブック ジャパンに初期メンバーとして参画。同年、現ウォンテッドリーを設立し、ビジネスSNS『Wantedly』を開発。12年2月にサービスを公式リリース。
https://wantedlyinc.com/
※本サイトに掲載している情報は2020年3月 取材時点のものです。

INTERVIEW

幼い頃は、工作道具を駆使してボードゲームなどを作って遊んでいました。テレビや漫画は禁止でしたが、代わりにインターネットやPC、カメラは早くから家にあって触らせてもらえたので、小学生の頃にはホームページを作ったりコミュニティサイトを運営したりしていましたし、動画を撮って編集して短編映画も作りました。とにかく何かを作ることが好きで、消費より生産という感じの子供時代でしたね。

外資系投資銀行を辞めて漫画家を目指す

仲暁子

高校生の時に、ニュージーランドに留学しました。若い頃って「ここじゃないどこかに行けば自分は輝ける」みたいな幻想を抱きがちですが、結局自分自身が変わらないと、環境が変わるだけじゃダメなんですよね。世界は広くていろんな考え方の人がいて、生まれ育った街にずっといるだけでは分からなかったことがたくさんありました。ずいぶん視野が広がったと思います。
帰国して大学に入る頃、ビジネスに興味を持ち始めました。大学の友人たちと一緒に、地元企業のホームページ制作をしたり、新規事業をあれこれ考えたりしたんですが、結局どれひとつ形にならず、終わりました。今思えば、何か目的があって起業するというより、起業が目的になってしまっていたんですね。

事業を諦めて就職した外資系投資銀行は優秀な人ばかりで、学ぶことも多く刺激的でしたが、会社が大きいほど自分の仕事は分業化されて末端の一部になります。ゆえに、自ら事業を作った時の手応えや実感と比べると当然薄くなり、自分が会社に与える影響も微々たるものです。それだけが理由ではありませんが、一度きりの人生、自分が面白いと思うことをやろうと思って会社を辞めました。

絵を描くのが好きなので、退職後は漫画家を目指してひたすら漫画を描き、雑誌に応募しました。鳴かず飛ばずでしたが、半年ぐらい続けた頃、一つのアイデアが頭に浮かびました。私のように漫画家になりたい人は日本中にごまんといてみんな必死で作品を応募しますが、採用される人はほんの一握りで、大半は没原稿となって眠っています。中にはレベルの高い作品もたくさんあるはずなのに、このまま日の目を見ないのはもったいない。それなら、没原稿を投稿できて世界中の人に見てもらえるようなサイトを作ろうと思ったわけです。それを宣伝するために参加したカンファレンスで出会ったのが、フェイスブックジャパンの方たちでした。まだ日本では無名だった頃です。その時にお誘い頂いて、フェイスブックに入社しました。

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仕事に夢中になれる人を増やしたい

漫画投稿サイトは最終的に閉じてしまいましたが、フェイスブックのように人と人とのつながりを活用して何か新しいサービスが作れないだろうかと考えていました。最初に作ったのは、知人に質問ができるサービス。ただ、プロトタイプの段階で「できる質問の幅が広すぎて質問をしづらい」というフィードバックがあったので、お勧めの本やレストランの情報ではなく、人探しに絞って質問できるというコンセプトに変えました。例えば「妹が家庭教師を探しているんだけど誰かいませんか」といった具合です。そうやってPivotをしながらたどり着いたのが、今のWantedlyです。
エンジニアが見つからないので、プログラミングも自分で勉強して立ち上げまで全部一人でやりました。貯金も減っていく一方だし、リリースまで本当に先が見えなくて大変だったのですが、若かったのでそれほど怖くはありませんでしたね。
Wantedlyは一見いろんな企業の求人情報を並べたサイトに見えますが、一般的な採用プラットフォームと違うのは、給与や福利厚生といった条件だけではなく企業のミッションやビジョンにもフォーカスしている点です。企業側は小さく無名でも中身で勝負できるので多くのユーザーに見てもらうことができますし、仕事を探す側も企業が目指すビジョンに共感でき、自分の価値観と合う企業を選ぶことできます。そして、嫌々働くのではなく、仕事自体が面白くて没頭ができ、結果的に経済力や社会的地位が身につく。そんな企業や人をどんどん増やしていければと思っています。
現在240万人ほどのユーザーの方に使って頂いていますが、1千万人を超えないと社会にインパクトを与えているとは言えません。事業は安定していますが、私にとってはまだまだ道半ばです。組織として一流になるためにもビジネスモデルを強化して優秀な人材を集め、さらにそこから新しい事業やプロダクトといった価値提供が生まれる循環を創りたいと思っています。

世の中ではどの分野でも次々にイノベーションが起こり、企業が出てきては消え、状況が刻々と変化しているので、綿密に計画を立ててもその通りに進むことはほとんどありません。ですから、何かやってみたいことがあるけどなかなか踏み切れない人がいるのなら、あまり考え過ぎずにまずはやってみることをお勧めします。大きく息を吸い込んでぐっと止めて、水の中に飛び込むイメージです。やってみることで問題点も分かってくるし、一つひとつ対処していくうちに、気がつけばかなり遠くまで進んでいたりします。まずは、一歩を踏み出してみてください。

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