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永野毅
1952年生まれ、高知県出身。75年、慶應義塾大学商学部卒業後、東京海上火災保険に入社。ロサンゼルス駐在員、執行役員、常務、専務などを経て13年に社長に就任。
http://www.tokiomarinehd.com/
※本サイトに掲載している情報は2016年10月 取材時点のものです。

INTERVIEW

社長に就任して以来、「“良い会社”を創りたい」ということを言い続けています。“良い会社”というのは単に売上や規模が大きいという意味ではなく、お客様に「この会社がなくなったら困る」「何かあったら真っ先に相談したい」と思っていただけるような会社のことです。私たちの存在意義は、お客様や地域社会の「いざ」という時に役に立つこと。会社が長く存続することで、世の中に価値を提供し続けていくことが私たちの目的なのです。利益を上げることは、存続するための手段にすぎません。

上京し遠泳に打ち込んだ学生時代

永野毅

高知の田舎で生まれ、子供の頃は勉強よりも川で泳いだり舟を漕いだりして過ごしました。2歳の時に父が亡くなり、母と祖母が育ててくれました。中学生になる時、一家で東京に移住することになったのですが私は住み慣れた高知に残って寮生活を送りました。卒業後は上京して慶応高校に進学。周りは田舎では出会ったことがないようなタイプの人ばかりで、何もかも刺激的でしたね。漫然と過ごすと流されてしまいそうだったので、水泳部に入って遠泳に打ち込みました。慶応大学の学生と合同で練習するのですが、水泳の道を諦めて大蔵省に就職したり、医者を目指したりといろんな道を歩む先輩たちの姿を間近に見て、こんな進路があるのかと勉強になりましたね。

保険会社を志望していたわけではないのですが、東京海上に就職した水泳部の先輩が熱心に誘ってくださったのです。紹介してくださった会社の方たちがいきいきと仕事を語る姿に感化され、入社を決意しました。下北沢の古く小さな支店に仮配属されて3カ月後、本店で営業部に配属され、ゼネコンを担当しました。高度経済成長期のまっただ中にあり建設ラッシュだったおかげでお客様に恵まれ、若い頃からたくさんの貴重な経験を積むことができたと思います。

海外にも何度も足を運びました。香港の地下鉄や台湾のダム建設、海底トンネルの工事現場など危険と隣合わせの工事現場で汗を流す人たちの姿を見て、彼らを支える保険の重要性を痛感したものです。営業の仕事は好きでしたね。どうすればお客様の役に立ち信頼されるようになるのか、毎日必死に考えました。入社して20年近く営業をしましたが、その時の先輩やお客様とは今でもお付き合いがあります。出会いに恵まれたのは運としかいいようがありませんが、その運をやり過ごすことなく出会いを大切にしたことが良かったのだと思います。

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いざという時にお客様を守るために

社長就任を打診されたのは2013年、前任社長との食事の席でのことでした。これまで失敗も成功も含めていろんな分野を経験させてもらったことが評価されたのだと思います。この会社が大好きでしたから、腹をくくりその場で引き受けました。

私たちの商品が真価を発揮するのは、「いざ」という時です。お客様は、「いざ」という時に自分を守ってくれると信じて保険という目に見えないものを買ってくださるのですよね。私たちはまさに信用を売っているわけです。日本は特に自然災害が多い国。「いざ」という時にお客様を守るためには、大災害や経済危機など有事にも揺らぐことがない事業構造を確立することが不可欠なのです。今は世界38カ国・地域で事業を展開し、損害保険だけではなく生命保険事業にも着手しています。そうやって拠点と事業を分散することで、安定的な構造を築き上げているところです。

社員たちには会社の将来を自分のこととして考えてほしいですね。どうすれば会社がもっと良くなるかというようなマジメな話を、日常の中で気楽に語り合えるような社風が浸透してほしいです。社員のやりがいや生きがいこそが会社の原動力になると思っています。会社がルールを作って社員たちをコントロールするよりも、社員たちが自分の言葉で会社の将来を語り、自分の意志で前に進むことが大事なのです。そうすれば私や役員がいなくなっても社員たちが会社を創り上げていくことができるでしょう。

若い人たちに「Today is the first day of the rest of my life.」という言葉を送ります。「毎日がこれからの人生の初日だ」という意味です。生きているといろんなことがあるし、決して良いことばかりではありません。だからといってくよくよしているのは本当にもったいないですよ。昨日までの嫌なことは忘れて、新たな気持ちで一日一日を過ごしてほしいですね。その積み重ねが充実した人生につながると思います。人生に遅いということはありません。何度でも仕切り直して始めればいいと心の底から思っています。

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