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森井三郎
1949年生まれ。島根県出身。島根半島の漁師町で育つ。無線通信士の上級資格を取得するため上京するが、就職した企業で有線通信技術の開発に魅了される。アフリカ出張を機に84年、日本ドキュメントリサーチ社を設立。88年、エヌ・ディー・アール株式会社へ組織変更し、現在に至る。
http://www.ndr.ne.jp/
※本サイトに掲載している情報は2016年3月 取材時点のものです。

INTERVIEW

この世の森羅万象すべてに静と動の二面性があります。たとえば、海や山は穏やかなときは美しく見えますが、荒れると恐ろしく危険です。私たちは感性を研ぎ澄まし自然と対話することが必要なのです。人や社会の中にも同じように静と動があります。常々、状況を把握し変化に気付かなければいけません。日々、自分なりに考え続けることで事前の備えができるものです。そこに対話が働き、新しい発見が生まれ、感性として芽生えて身に付いていくのです。

有線通信技術の面白さに魅せられて

森井三郎

島根半島の小さな漁村に生まれ育ちました。子供の頃から海や山の自然、村の人々との対話を通じて多くのことを学んだと思います。私の家も昔から漁をなりわいとしていました。漁師たちは船に乗っている時間が長いのでコミュニケーション能力が優れていて、政治経済、社会など幅広い見識を持っているんですね。漁師の皆さんと関わる中で、私も社会を生き抜く感性を身に付けることができたと思っています。

私も船員を目指して無線通信を学んでいたのですが、働きながらもっと上の資格を取るために上京してNECに就職しました。腰掛けのつもりだったのですが、有線通信技術(電話交換システム)の開発に携わることになり、その仕組みの面白さにすっかりはまってしまいまして。世界中の通信網を作ることができる技術なのでやりがいを感じましたし、毎日が楽しく充実していました。海外出張も頻繁にある中、アフリカへ行った時は人生観が変わるほどのカルチャーショックを受けましたね。日本は高度経済成長期の最中、アフリカの人々は貧困にあえいでバラック小屋に住んでいるんです。その頃から、人や世の中のために役に立ちたいと思うようになりました。

そこで、若者がやりがいを持って働けるような会社を興して社会に恩返しをしようと決断したのです。当時はコンピューターもなく、通信技術はまだ分かりにくい分野だったので、若い人に技術とこの仕事の面白さを伝えたいと思いました。特に目を付けたのが、当時輸出量が伸びていたハイテク商品に添付する「説明書」。海外では説明書を「ドキュメンテーション」として重視していて、各分野の専門家を集めて制作しなければいけません。ところが日本にはそのような体制がなく、専門外のスタッフが翻訳した不備だらけの説明書しかなかったのです。それを私たちで作っていこうと考えたのが始まりです。

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迷ったら昔の格言やことわざに倣え

何か事業を立ち上げる時は、具体的にどんな準備が必要かをまず考えなければいけません。会社のポリシーや理念を考えなければいけませんし、お金や人材、お客さんも必要です。しなければならないことは次々に出てくるので、思いつきだけではなくストーリーを描くことが大切です。すべてにいえることですが、何か新しいことを始めるときはパソコンのように最初の環境設定が肝心なのです。

構築・設定・立ち上げの基盤さえしっかりしていれば大丈夫です。準備ができたら動き出すわけですが、日々の新しい情報にアンテナを張ることももちろん必要ですが、世の中の基本的なルールや一般常識をおろそかにしてはいけません。物事にはパターンがあります。何千年も前からいわれているような格言やことわざには普遍性があるので、現代社会にもそのまま当てはめればいいと私は思うのです。

判断に迷った時は、先人たちの長年の経験や知恵に倣って動くようにしています。うちでは人材育成にも力を入れていますが、人を育てる際にも環境設定は不可欠です。技術やマナー、一般常識など、どんな分野でも若い社員が学びやすい環境を整えてあげることで初めて立ち上がり、やがて自立できるのです。

知識は勉強して身に付けることができますが、感性はどんなに知識があっても良い大学を出ても身に付きません。そして、感性が伴わなければせっかくの知識も枯れてしまうのです。物事を様々な角度から見て考え、対話を重ねることで感性は育てることができます。

考え続けることは修行でもあるのです。努力を重ねれば、すぐに成果は出なくとも、社会を生き抜くための感覚や感性、判断力は自ずと養われていくでしょう。さらに成長するために、独り善がりではなく様々な分野の人と会って親睦を図り、対話を通して新しい知識を吸収しましょう。そうして発展していくものだと思います。

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