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宮内義彦
1935年生まれ、兵庫県出身。60年に日綿実業(現在の双日)に就職。64年、オリエント・リース(現オリックス)に出向。社長室長、取締役などを経て80年、代表取締役社長・グループCEOに就任。2014年代表執行役会長、グループCEOを退任し、シニアチェアマンに就任。日本プロ野球球団オリックス・バファローズのオーナー、関西学院理事も務める。
https://www.orix.co.jp/grp/
※本サイトに掲載している情報は2015年2月 取材時点のものです。

INTERVIEW

業界の何位になろうとか、マーケットシェアを拡大しようとか、そういうことはまったく頭にありませんでした。ただ、どこにもないユニークな会社をつくりたかったんです。「よく分からない会社」なんて言われると、「なるほど……そういう会社になってきたか」と思いますね。経済的な富を社会に提供することが企業の役割だと思っています。だから、常に社会から評価されるものをつくり上げていきたいですね。我々が「イノベーション」をつくり上げられるかどうかにかかっています。

「ビジョン」は持たない

宮内義彦

大学卒業後にアメリカに留学してMBAを取得したので、海外で仕事をしたい気持ちがあり商社に就職しました。今でいう「グローバルな仕事」をしたい一心でしたね。出世したいなんて思いませんでした。毎日、やるべき仕事を一生懸命こなすという事の連続ですよね。

入社4年目で、新設のオリエント・リース(現オリックス)への出向メンバーに選ばれ、米国直輸入のリース業を始めました。リース業は当時アメリカで急成長していたビジネスで、日本では未知の分野でした。すべてが手探り状態の中、十数人が集まって新しい事業に着手するわけです。メンバーの中で私が最年少でしたが、若さ故か、不安はなかったですね。好奇心のほうが勝っていました。

私は、「ビジョン」というものを持ったことは一度もないんです。今日に至るまでずっとです。とにかく心を込めて目の前の仕事に取り組むだけでした。やらないといけない仕事が常にあったというのはありがたいことですよね。それをずっと続けて、ここまでたどり着いたわけですから。

代表取締役への就任を打診された時は驚きましたが、じっくり考えて「自分がやるしかない」と少しずつ思うようになりました。

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ただ今シニアチェアマンの訓練中

代表取締役に就任して、企業の基本の部分である「財務内容」でより強い会社を目指しました。同時に、世の中から高く評価されるということも目標の一つでした。この二つは連動していて、世の中の評価が上がれば、財務内容はおのずと良くなるものだと思います。

そして何より、社員が「この会社で働いてよかった」と思ってもらいたい。これらのことが一体になるのが良い会社だと思うんですよね。

経営とは、取り組むべき課題に優先順位をつけるのではなく、すべてに目配りしながら動かしていかなくてはいけません。今日一番力を入れたことがあれば、明日はまた違うことに力を入れている。その時々でいろんな課題が出てきて、そのつど全力で取り組むことが大事なのだと思います。

また、何か決断を迫られることがあって「二つに一つ」というような場合は、社内のありとあらゆる知識と知恵を全部駆使して決めるのですが、決めた以上は絶対にブレない。「こっちにしておけば」ということは一切考えないようにしています。

2014年に代表を退き、シニアチェアマンの役職に就きました。「今かな」と思えたタイミングだったんです。しんどい時に交代するのは、後の人のことを考えると良くない。楽な時なんてありませんが、特に大変な時は避けるべきです。しんどい時は自分の責任だと思っていますから。自分じゃないとできないものをつくり上げていくということが一番楽しいと思うんですよね。そういうことを若い人たちには伝えていきたいですね。

「シニアチェアマンって何するんですか」って聞かれますが、私にもよく分からないんです。だから何をしても良いのかなと思っています。まだまだ訓練中というところです。若い時って、その日々が果てしなく続くような気持ちでいる場合が多いのですが、今思うと若い時というのは大変短いんですよね。あっという間です。このあっという間に過ぎていく一日一日が非常に貴重なのです。一日たりとも無駄にしないで、前向きに、深みを持って物事に取り組めば、有意義に過ごせると思います。

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