- 松石翔
- 1982年生まれ、岡山県出身。2002年、飛び込み専門の営業会社へ入社。岡山県内のハウスメーカーや工務店を経て19年にE-dith株式会社を創業。24年にはM・Dホールディングス株式会社、RiLiHa株式会社を設立。企業の柔軟性や女性の活躍のできる組織、家庭環境にとらわれず豊かに暮らせる世の中をつくることを目標に掲げ、規格住宅専門店、不動産、エクステリア工事、結婚相談所、歯のホワイトニングなど多岐にわたる事業を展開中。
- https://e-dith.info/
自分が生まれ育った町を豊かにしたくて、地元で起業しました。身内や、子供の頃からなじみのある人たちに応援してほしい気持ちもありました。家づくりや不動産業を手がけていますが、規模の大きな事業をやるよりも、目の前にいる一人ひとりを大切にする会社でありたいと思っています。 いつか、私たちの事業で喜んでくれたお客さんがうちで一緒に働いてくれるといいなと思います。会社のファンであるスタッフに囲まれて仕事ができれば幸せです。
父はほとんど家におらず、母と祖母に育ててもらいました。家業の飲食店に小さな頃から出入りしていたので、お客さんにいつも可愛がってもらった記憶があります。工業高校を出ると、同級生の大半が就職する中、バンド活動で身を立てるために一人大阪に行きました。バンドは本気でしたがそれだけでは食べていけないので、いくつもアルバイトをしていました。その一つがスポーツ用品の営業の仕事でした。何となく始めましたが、商品にまるで興味のないお客さんが1時間後には買って帰る様子を目の当たりにして、プロの営業力や言葉の力というものに圧倒されたのをよく覚えています。
3年でバンド活動に見切りをつけ地元岡山に帰ると、給湯器の飛び込み営業の会社に就職しました。入社初日からいきなりインターホンを押す日々の始まりです。やるからには厳しい環境に身を置きたい、日本一の営業マンになりたいという一心でした。ひたすら場数を踏み、辛い思いもたくさんしましたが、知識が乏しくても相手の心を掴めば売れることを学びました。
数年経験を積んだ後、人生で一番高い買い物である住宅の営業をやってみたいと思いハウスメーカーに転職しました。飛び込み営業とは違い、家がほしいと思って展示場に来る人を相手にするので、「ありがとう」と感謝される機会が増え、純粋にうれしかったです。その後、大手工務店に転職した頃から独立を意識するようになりました。地場の工務店なので、広告よりも口コミや紹介が頼りです。お客様に満足と感動を与えることができれば引き渡し後もお付き合いは続きますし、新しいお客様を紹介してもらえます。そこにやりがいと充足感を見出していました。7年間働き、プレイヤーとして動ける年齢のうちに独立したいと思っていたので、37歳で新たなスタートを切りました。
起業してすぐ家づくりをするには資金力やブランド力が足りないので、まず不動産業やエクステリア業から取り掛かりました。初めは銀行もなかなかお金を貸してくれませんし、8人のスタッフにお給料を支払うので精一杯でした。それでも高齢の方の家の電球を交換したり世間話に花を咲かせたりと利益に関係なく小さなことからコツコツ取り組み、地域とのつながりを築いていきました。若いスタッフたちも私と同じ熱量で取り組んでくれ、ここ1年で新築事業も始動しました。近年は資材や土地の高騰で家づくりのハードルが上がり、共働き世帯のお客様が増えています。そのような世帯が建てやすい家として、注文住宅の自由度と建売住宅の手軽さのいいところ取りをした「規格住宅」を提案しているところです。今後は結婚相談所の事業も考えています。家庭を持つ人が増えることで不動産事業や新築事業にもプラスになるのはもちろん、地域の活性化にもつながります。他にも、地域の飲食店と連携してクーポンなどを発行し、家を建てる人以外とも接点を持てるような取り組みにも挑戦しています。地域全体で楽しいことを共有できれば、町はもっと活気づくはずです。
起業当初からスタッフの働きやすさにもこだわってきました。育児などでフルタイムで働けない女性スタッフも積極的に雇用し、急な欠勤や遅刻早退もみんなでカバーし合っています。スタッフ一人ひとりの強みを生かしたポジションやチャンスを与えているので、それぞれが主体性をもって働いてくれていますし、どこへ行っても活躍できる人材に成長してくれたと思います。スタッフやお客様、地域の人たちに幸せになってほしいという思いは、年々強くなっている気がします。
振り返ってみると、ずいぶんたくさんの失敗も経験しました。若者の皆さんも、やりたいことがあるなら何も考えず貪欲にチャレンジしてみてください。成功もあれば失敗もあると思いますが、それを糧にいろんな場所で自分のカラーを出して活躍してください。その姿はきっとあなたの親御さんや地域の人たちに喜びと元気を与えるでしょう。