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牧 弘之
1956年生まれ、愛知県出身。79年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、システム開発会社に就職。91年にユートピア企画を設立し代表取締役に就任。情報システム化へのコンサルティング業務、特にパッケージソフトの商品企画と開発支援業務を展開し、多岐にわたる企業を支援する。2022年から農業の6次産業化プラットフォームを支える実務統合型IOTネットワークシステムの開発へ舵を切る。
http://www.utopia-kikaku.co.jp/
※本サイトに掲載している情報は2024年10月 取材時点のものです。

INTERVIEW

たとえ目立たなくても、自分にしかできないことを淡々と積み重ね、成果を出し続ける人生に憧れます。たとえば1400年以上前に創建された法隆寺の五重塔は現在も信仰の対象であり、世界中から観光客が訪れます。かつて、これを手がけた名もなき職人たちがいたことでしょう。世の中には、人知れず仕事を遺した人が大勢います。そんな人たちの仕事を見ると、勇気がわいてきます。私がシステムを手掛けたロジスティクスの分野もまさにそうです。目立たない仕事だけれど、ないと世の中が回らないのです。そこに名を残す必要はありません。名を残すより、仕事を遺すほうがカッコいいと思います。

気の遠くなるようなミッションに挑むことが私のロマン

牧 弘之

90年代初頭にシステム開発の会社を立ち上げました。バブル崩壊で景気が後退した時期で、IT産業は斜陽だと言われていました。私が着目していたのは景気に左右されにくい物流業界のシステム構築でした。現場を大切にする日本のカルチャーが根付いたこの業界をシステムで手助けしたいという思いも根底にありました。そんな時、縁あって大手家電メーカーのグローバルサプライチェーン構築事業に参入する機会が舞い込んできたのです。世界中の物流センターをつないで世界どこでも使えるシステムを開発するという、当時としては気の遠くなるようなミッションでしたが、ロマンを感じずにいられませんでした。

面談で「私にできないなら無理なので諦めてください」と訴えると、熱意が伝わったのか晴れてメンバー入りすることができました。もちろん簡単にできるわけがないことは分かっていましたし、何度も失敗して当たり前だと思っていました。それでも私には、依頼されたことは必ずやり遂げる覚悟と自信、結果を出すという信念がありました。失敗は「このやり方ではだめだ」と確認できたということですから、無駄ではないのです。諦めなければ必ず結果は出ると確信していました。

壮大な夢や理想があるなら、そこを一気に目指そうとするのではなく、何段階も区切って成果を出し続けることです。物流システムの構築も、まずメーカーの倉庫管理システムや輸送管理システムを仕上げるという成果の先にありました。完成した物流システムを、国からの依頼でパッケージソフトに仕上げたのも一つの成果。それが今の日本の標準システムになっています。また同じ頃、金融機関からの依頼で金融システムを構築したことが、その先の融資診断システムの開発にもつながっていきました。物流システムも金融システムも正当な取り引きが行われていることを証明する機能が必要になってくるので、セキュリティーシステムを手がけるきっかけにもなりました。そして今まで手がけてきたものを統合化することで、包括的なプラットフォームが完成しました。

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技術と経験の集大成で6次産業のプラットフォームを

振り返ってみると、一貫して「日本初」のものを手がけてきたように思います。夢中で取り組むうちに、膨大な技術と経験の引き出しができていました。これをベースに現在、6次産業化(農業生産者が下流や流通販売まで行うこと)のプラットフォーム構築に挑戦しています。起業当初から目指していたことです。今の農業は巨大な圧力で生産者を支配する構造になっています。生産者は価格を決定する自由がなく、生産物は等級で縛られ半分は廃棄されているのが現状です。この構造から生産者を解放するために、6次産業のプラットフォームを提供して農家と卸業者、レストランのシェフなど幅広いステークホルダーのマッチングを可能にし、より新鮮でおいしいものが流通する仕組みを作りたいと考えています。

今の時代、どれだけ稼げるかということが価値基準になっている気がしますが、これからは価値を生み出せる人が評価される世の中になってほしいと思います。そのためにも、私たちは淡々とものづくりに励む人の隠れた「名人芸」を見落とさないようにしなければいけません。価値あるものを作る人、それを評価できる人をマッチングして、かかわる人すべて幸せで明るく健康になるような仕組みのベースを提供できればと思います。

若者の皆さんには、夢を持ってほしいと思います。それも、容易に達成できないような途方もなく大きな夢です。そこに向けて、一つひとつ成果を積み上げていってください。失敗するのは当たり前です。決して諦めないでください。そして、6次産業化の新しい経済を作る私たちの夢に賛同してくれる方がいたら、ぜひ仲間になってください。一緒に未来を作りましょう。

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