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前田国見
1960年生まれ、東京都出身。85年順天堂大学医学部卒業後、88年、東京都立広尾病院臨床研修医修了。92年、順天堂大学医学部大学院卒業後、同大学附属順天堂練馬病院腎・高血圧内科科長、人工腎臓センター長を経て2016年から石神井公園じんクリニック院長。
https://www.maeda-irr.com/
※本サイトに掲載している情報は2022年8月 取材時点のものです。

INTERVIEW

診察の時には、患者さんを診察室に呼び入れるのではなく、私自身が直接待合室に出向き、患者さんに直接お声がけをしてから診察室に迎え入れるようにしています。これは医師になって以来ルーティンとして継続しています。患者さんの顔色や声のトーンを直接肌で感じることが、診療の第一歩になるからです。腎臓病の専門医として治療を行うことも、勿論大切ですが、患者さんの心と体を治療していく気持ちで、日々患者さんに向き合っています。人は心と体で成り立っているので、そのどちらにもアプローチすることを大切にしています。

「医師の家系もここまでか」祖父の言葉に一念発起

前田国見

代々医師の家系に生まれました。私は10代目です。長男なので、当然医師になるだろうと周囲には思われていたようです。しかし、高校で進路を決める際に、自分が一番勉強したかった海洋学の道を選ぼうと父に医学部の受験をしないことを告げました。父はしばらくの沈黙の後「自分の進路を自分で決めることが大切だ。信念をもって進みなさい」と背中を押してくれました。一浪の末、希望の大学に合格したことを祖父に報告に行った際に「医師の家系も父の代で終わりだな」とつぶやきました。この一言は心に響き、堪えました。自宅への帰路で悩んだ末、同時に合格していた医学部への進学(医師の道)を真剣に考えました。自分自身その後の進路については、この日が岐路になったと思います。翌朝に父に「医療の道を歩く」ことを伝えました。

最終的に父と同じ腎臓内科医を目指すことにしました。研修医時代は「いずれ腎臓内科を目指すのだから、吸収力が旺盛な時に多くを学びたい」という気持ちから24時間救命救急医療や脳外科などの外科系の医療も多く経験しました。様々な年代や境遇の患者さんとかかわる中で、何人もの人生を一緒に歩むことができる仕事なのだと実感しました。研修を終えると、大学院生として臨床医学の土台となる基礎医学の研究室に国内留学をし、医学博士の学位を取得した後、福島県・埼玉県の病院勤務を行い、地域医療について研さんを積みました。大学病院とは異なる臨床現場を経験し充実した時間を過ごす中で、患者さんとともに歩む臨床医療に魅了されました。2016年都内で人工透析専門のクリニックを立ち上げました。腎不全となり落ち込んでいる患者さんの体と心のケアを行うことのできるクリニックを目指しました。

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患者さんにもスタッフにも愛されるクリニックに

末期腎不全のために人工透析治療が必要になった患者さんは、時として医療者から突き放されたような絶望感を味わうことがあります。そんな気持ちに寄り添いながら、家庭や社会での役割、日々の楽しみなど患者さんが腎臓と引き換えに失ってしまった日常を一つひとつ取り戻すために毎日サポートし続けることが、私たちに与えられた使命だと考えています。スタッフたちも「患者さんにとって何が最善か」を常に考え、私が介入しなくても自分たちで動いてくれるようになりました。もちろん、スタッフも私も失敗し、反省する場面はあります。失敗したことを否定せず、失敗したことを受け入れて「改善すべき点、工夫していける点」にフォーカスして取り組んで改善していくことが成長のカギだと考えております。

患者さんに対しても同じです。一緒に「腎不全になり出来なくなったこと」を確認し、「最初にどんなことを取り戻したいのか」を考え、その実現には「何が障害になり、何を克服していけばよいか」の目標設定を行い、「どの様にアプローチしていくことが現実的に実践できるか」を提案していきます。小さなことでもできるようになれば「もっと良くなりたい」「次は何をしよう」と前向きな気持ちになるものです。その積み重ねが大切です。今後は、高齢化に伴い通院が困難になる患者さんの増加が予想されます。クリニックだけが透析医療を提供するのではなく、地域の在宅医療を支えている医療従事者の方々との緊密なネットワークを構築することで、クリニックが真の意味で私が目指す「地域の患者さんの安寧(あんねい)の地」になるものと信じています。

腎不全は一生涯続く大変な病気ですが、患者さんがもし来世で同じ病気になったとしても、「石神井公園じんクリニックがあるから大丈夫」と思ってもらえるようなクリニックでありたいです。そして、地域の方々にとって「腎臓に不安がある時には、石神井公園じんクリニックに相談にいけばいい」と心と体のより所にしていただける「安寧(あんねい)の地」を目指してこれからも、自分の歩幅で進んで行こうと思います。

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