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久野義博
埼玉県生まれ。外資系企業、国会議員秘書、夜間トラックドライバー、コンサルタント会社などを経て、2004年株式会社日本ヒューマンサポート代表取締役就任。2018年一般社団法人全国介護事業者連盟副理事長および関東支部長就任。2019年全国介護事業者政治連盟会長就任。他、社会福祉法人博心会理事長、株式会社理想ケアサービス代表取締役、株式会社グランツ代表取締役、株式会社つくばアカデミー代表取締役を兼任している。
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※本サイトに掲載している情報は2020年12月 取材時点のものです。

INTERVIEW

人生100年時代はすぐそこまで来ています。みなさんにとっても他人事ではありません。私は介護事業を通じてすべての高齢者が安心して生活できる世の中にしたい、介護で人に感動を与えたいと考えています。まずは国全体で介護の質を上げて、介護の産業化と生産性の向上を実現したいですね。高齢化が進んでいるのは日本だけではありません。介護先進国としてビジネスモデルを確立したら、次は世界中にそのノウハウを広げていけたらいいと思っています。

相続対策コンサルタントから介護業界への転身

久野義博

人の役に立てるような大きな事業をやってみたいという夢は学生の頃から持っていました。初めて勤めた会社は外資系の企業で海外を飛び回りました。社会人として覚えなければいけないことは予想以上に多く、学生の頃よりも勉強した気がします。その後、国会議員の秘書として働いていた時期に父の会社が破綻。秘書を辞めてすぐ実家に戻りましたが手遅れで、財産も何もかも失ってしまいました。しばらく夜間のトラックドライバーをしながらどうにか生活をつないでいました。

生活を立て直すと、相続対策のコンサルティングの会社に転職しました。コンサルタントとはいえ赤の他人にお客様の大切な資産のことを相談していただくわけですから、「この人になら何を話しても大丈夫」という安心感と信頼感が不可欠です。人と信頼関係を構築することの難しさと大切さを痛感しましたし、クレームが発生した時には、どのように対応すれば相手の痛いところに手が届くかということも非常に勉強になりました。この時の経験は今の経営にもつながっています。

ある時、お客様の相続対策として介護付き有料老人ホームの運営を提案したところ、運営はすぐに軌道に乗り、大変喜ばれました。ちょうど介護保険法が施行され、民間に介護の市場が開放されたことで、介護業界が従来の役所主導から民間主導へと変わろうとしていた時期でした。これからますます高齢化社会が進む中で、私も介護業界に参入して社会に貢献したいという思いが強くなり、起業を決意しました。コンサルタントとして何カ所もの施設の立ち上げに携わり、現場に入り込んで満床になるまでかかわった経験があるので、自信はありました。

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認可を得るために市長に直談判

一番苦労したのは資金集めでした。父が事業に失敗して周囲に迷惑をかけたので、私は保証人を立てず、必ず自力で資金を調達しようと考えていました。財産も社会的信用もなければ保証人もいない中、事業計画だけを携えて金融機関や投資会社を回りました。何もない私にいきなり何億円も出資してくれるところなど当然ありません。3年かかりましたが、埼玉県の住宅供給公社の連帯債務保証制度を利用することでどうにか資金調達がかないました。

ところが、試練はそれだけではありませんでした。埼玉県幸手市に1号店となる施設を立ち上げようと介護保険の認可の手続きを進めていると、窓口で「市の事業者はもういっぱいです」と断られてしまったのです。どうにか食い下がり、あらゆるつてを駆使して市長に直談判することになりました。許された面会時間はわずか10分。そのために入念な準備をし、熱意を持って市長に事業内容を説明すると、結果的に30分以上も話を聞いていただき、認可を得ることができたのでした。当時、どの高齢者施設でも入居時に高額な入居金が必要で、裕福な方しか施設には入れませんでした。そこで、私たちは入居金をいただかないシステムで生活弱者や年金受給者でも安心して入居できるビジネスモデルを確立したのです。また地域医療と連携し、介護度が重度の方や医療的処置が必要な方でも入居できるようにしました。今はこのビジネスモデルを基に、全国に事業を展開しているところです。

平成30年には全国介護事業者連盟という団体を立ち上げました。介護業界の団体はたくさんありますが、多すぎて国に声が届きにくくなっているのが現状です。サービスの種別や法人格の壁を取り払い、介護事業者すべてが入れる大きな団体となって、国に現場の声を届けていきたいですね。

若い方たちに伝えたいのは「疑うな、信じるな、確認しろ」ということです。身の回りには様々な情報があふれています。特に今はコロナ禍で先行きの見えない世の中になっていますが、決して流されてはいけません。自分の目と耳で確認して、「これは間違いない」と思うことを実行していけばそう大きく外れることはありません。百聞は一見にしかず、百考は一行にしかずです。あとは目標が明確になれば、向かっていくだけです。たとえ失敗しても、諦めなければ必ず道は開けます。若い世代の人たちに率先して国を引っ張っていってほしいと思います。頑張りましょう。

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