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久保勝義
1974年生まれ、京都府出身。94年吉川工務店入社し経験を積んだ後、久保建設にて8年間勤務。08年に誕生した長男の皮膚がひどく荒れているのを見て、アトピー性皮膚炎で苦しんだ自分と同じ思いはさせられないという思いでファイン.住宅を創業。住宅業界で多用している新建材に囲まれた家ではなく、自然素材を使い換気設備にもこだわった家づくりを行っている。
https://fine-jyutaku.jp/
※本サイトに掲載している情報は2021年12月 取材時点のものです。

INTERVIEW

快適な家を建ててお客様の喜ぶ顔を見ることが私たちにとって一番大切なので、お客様のためにできることは利益度外視ですべてやり切りっています。常に、身内の家を建てているような思いです。建築の仕事はクレーム産業だと言われているようですが、うちではクレームがほとんどありません。お客様の気持ちにとことん寄り添えば、クレームをゼロにすることは不可能ではないと思っています。

親会社の倒産を乗り越えて

久保勝義

京都で建築業を営む家に生まれました。そっくりな双子の弟がいますが、なぜか私だけ重度のアトピー性皮膚炎でつらい思いをしました。幼い頃から父の跡を継ぐことが夢で、たびたび現場に連れて行ってもらったことを覚えています。中学生の夏休みには現場を手伝うようになりました。引き渡しの時にお客様のうれしそうな様子を見て、いい仕事だなと実感したものです。専門学校で建築を学び、鉄筋コンクリート造のマンションなどを手掛ける大阪の会社に入社しました。3年ほど経験を積んだ頃、鉄筋コンクリート造と木造の混構造に出会い、木造の良さに改めて気付きました。木造を極めたいという思いが年々強くなり、7年で地元に戻ってきました。父はとても喜んでくれました。

実家で働き始めて8年ほど経った頃、長男が誕生しました。へその緒が首に巻き付き仮死状態で生まれ、1週間集中治療室で過ごしました。面会した時に皮膚がひどく荒れているのを見て、自分が幼少期にアトピーで苦しんだことを思い出し、子どもに同じ思いをさせたくないと強く思いました。そして幼い子どもをアトピーや喘息(ぜんそく)から守るために、住宅業界で多用している新建材に囲まれた家ではなく、自然素材を使い換気設備にもこだわった家づくりを目指したいと思い、起業を決意しました。引き止めようとしていた父も最終的には応援してくれました。

メンバーは私ともう一人の社員だけ。何の伝手(つて)もないので、最初は父の会社の下請けとして始動しました。ところが、起業5年目に父の会社が倒産してしまったのです。お客様は一気に離れていきました。この時ばかりは夜も眠れませんでした。しかし、ついてきてくれた社員や下請け会社の人たちを絶対に守ると腹をくくりましたし、自力で何でもやっていこうという覚悟もできました。鉄筋、足場、型枠、塗装、何でも自分たちでやるようになったのはこの時からです。お客様への感謝の気持ちも一層強くなりました。どんなご要望にもできる限り応えるようになりましたし、引っ越し作業も無償で手伝います。搬入の時は、家電のモーターに付着したほこりまで丁寧に拭き取ります。手間を惜しまず、真摯に向き合う事で、お客様も家をいつまでも大事にしてくださいます。

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リノベーション住宅や地方活性化の取り組みも

日本の住宅は、築30年ぐらいで建て替えることを前提に作られています。これでは世界の住宅事情から後れをとる一方でしょう。この流れを変えるために、私たちは中古住宅のフルリノベーションにも取り組んでいます。耐震性も気密性も今の新築住宅と遜色ないレベルまで上げることができます。最近は築120年の住宅をリノベーションしました。家は古くなったら壊すのではなく、手を加えながら何世代にもわたって住むことが当たり前になればいいと思います。SNSも活用しながら、リノベーション住宅の選び方や魅力を発信しているところです。

また、時間を見つけて舞鶴市の休耕田をニンニクやサツマイモ畑に生まれ変わらせる取り組みも始めました。畑仕事は私の性に合っているようで良い気分転換になっていますが、地方の活性化に貢献したいという思いも込めています。実は私の甥が発達障害なのですが、姉が「この子を残して死ねない」と将来を案じる姿を見て、障害のある方や高齢者の方が安心して働ける環境や自立して生活できる場所を地域に作りたいと思ったことが始まりでした。舞鶴での取り組みが、日本全国の休耕田や休耕地を蘇らせ、雇用を創出する地方活性化のモデルケースになることを目指しています。建築業の枠を超えていろんなことに挑戦していますが、どの取り組みも心から楽しんでいます。楽しむ気持ちがないと、新しい発想は生まれません。若い社員たちにもやりたいことをどんどん提案してもらっています。何が起こるか予測がつかない世の中ですが、どんな時代でも大切なのは常に笑顔で相手の心に寄り添うことではないでしょうか。あなたが輝き、優しくなるほど人が集まります。あなた自身が変わらないと周囲も変わりません。

若者のみなさんには、自分の好きなことを最優先で取り組んでほしいと思います。ネームバリューだけで就職先を決めるようなことはしないでください。好きなこと、楽しいと思うことはどれだけやっても苦になりませんし、長続きするはずです。

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