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小路明善
1975年、アサヒビール入社。80年に労働組合専従、2000年に人事戦略部長、01年に執行役員を歴任。11年、アサヒビール社長を経て、16年よりアサヒグループホールディングス社長就任。18年にはCEOを兼務。現在に至る。
https://www.asahigroup-holdings.com/
※本サイトに掲載している情報は2019年7月 取材時点のものです。

INTERVIEW

私はアサヒグループホールディングスの社長に就任して以降、海外M&Aを積極的に手掛け、アサヒブランドのさらなる「グローバル化」に力を注いできました。グローバル企業としての第一歩を踏み出すきっかけを作ることができたと思っています。今後もスーパードライなど、ブランドとのシナジーを発揮しながら、国内事業をキャッシュ基盤に海外事業をグループの成長エンジンとしていきたい。前例踏襲や人まねではない、誇れる仕事ができる会社にしていくことが私の務めです。

原野に線路を引く人

小路明善

代表取締役に就任した2016年、イタリアの「Peroni」、オランダの「Grolsch」、英国の「Meantime」といった欧州のビール会社、17年にはチェコの「Pilsner Urquell」をはじめとする中東欧の有名ブランドを有するビール会社の買収を次々と敢行しました。19年7月には、ベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブのオーストラリア事業の買収も発表しています。
現在、グループの事業利益の海外比率は約40%を誇り、海外事業は大きな成長路線に乗っているところ。スーパードライの国際的な評価の高まりが、大きな後押しにもなっていると感じています。

海外事業を拡大させてきた中で、経営者である私が常々意識してきたことは、トップダウン型をやらないようにしようということでした。予測困難な時代に一人でビジョンを見据え、集団を引っ張るのは至難の業。だからこそ、トップマネジメント型のリーダーであることが重要だと考えています。

そして私の考えるリーダー像は、原野に線路を引く人です。目的地を見定めて先見性を持ち、線路を引きながら社会における「ミッション」を果たすこと。そして企業のあるべき姿である「ビジョン」を描き、それらを実現するための価値観や行動指針を戦略に落とし込んでいくことがリーダーの重要な役割だと考えています。

中でも我々の企業ミッションは、「期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造」。高い技術により担保される「おいしさ」だけではなく、「期待を超える」「生活文化の創造」という言葉に重要なメッセージが込められています。国内のビール市場は縮小傾向にありますが、シェア獲得ではなく、新顧客創出が必要とされる時代。その中でどのようにブランド価値を高めていくかは、品質などの物性価値を高めるだけでなく、いかに付加価値を高めていけるかが重要な鍵を握ります。

当然ながら、これらのミッションを実現していくためには、多くの失敗も覚悟しなければいけません。私自身も経営者として、一人のリーダーとして、これまで幾度となく失敗を重ねてきました。
しかし『見逃し三振』ではなく『空振り三振』をするからこそ、失敗は次につながります。社員が大きな挑戦に立ち向かい、たとえ失敗に直面したとしても、その失敗を決して責めず、次につなげていくことがとても大切なことなのです。
そのためにも当社は、高い能力の人間を採用することは一切求めていません。決して失敗を恐れず、非凡な努力ができる人物かどうか、その1点だけを求めているのです。

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なぜアサヒが求められるのか?

私自身も以前、スーパードライの姉妹品を出した経験がありました。当時スーパードライには銀色のラベルしか出しちゃいけないという固定観念があり、それはタブー視されていました。しかしスーパードライで大事にしなければいけないことは、銀ラベルを未来永劫(えいごう)大事にするのではなく、そのブランド価値をどうやって高めていくかということ。そこに着眼点を置いた私は、臆することなくピンク色のラベルでの発売を決断したのです。失敗を恐れず、挑戦することを選びました。

そうした挑戦を続けていくためには、誰よりもビールのことを考え、見識を持ち、スーパードライの良さも弱点も知る必要があります。
そのため毎週末にはスーパードライを扱う店へお忍びで訪れ、食事を楽しませてもらっています。この習慣は、もうかれこれ30年続けてきました。「なぜ長年にわたりスーパードライを選んでもらえるのか」、「なぜお客さまから愛してもらえるのか」、「なぜアサヒが求められているのか」という様々な「なぜ?」と向き合いながら、今日まで自問自答を繰り返しているのです。私は技術者ではありませんが、誰よりもビールを愛し、人に語れると自負しています。

当社はこれまでの世界進出により、「期待を超えるおいしさ」を目指す仲間とともに成長を続けてきました。スタッフとアサヒを楽しむ顧客、コミュニティー、すべてのステークホルダーが共創し、ブランドを育ててきたのです。これからも一丸となったチームスピリットで、空振り三振を恐れず邁進していきたいと思っています。

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