profile
小林正博
1937年新潟県長岡市生まれ。61年、京都大学経済学部卒業。在学中、田杉競教授のゼミナールにて経営学を学ぶ。卒業後、化学会社、コンサルティングファームを経て、73年、経営システム研究所を創設。ゼネラルコンサルタントとしてトップマネジメントを中心に経営指導、診断、講演、研修、執筆と活躍中。88年5月、ホロンシステムを設立し、代表取締役会長として現在に至る。
https://www.holon.co.jp/
※本サイトに掲載している情報は2023年2月 取材時点のものです。

INTERVIEW

私たちの仕事は一般に知られることがほとんどありませんが、見えないところでみなさんの暮らしに寄り添っています。来たるべきAI(人工知能)と共存する未来にも、このノウハウを持って30年先を見据えた経営を行い、よりよい社会づくりに貢献できればと思っています。

会社を飛び出し、経営コンサルタントに挑戦

小林正博

私は新潟県の六日市村(現長岡市)という越後平野の先端に位置するごく片田舎の農村に生まれました。見渡す限り田んぼの続くのどかな所です。高校2年生の3月、修学旅行で初めて京都を訪れたことが、私の人生を決定づけることになりました。嵐山を流れる桂川(大堰川)に架かる渡月橋は155mもの橋で、向こう岸の山並はキラキラと光り輝き、桂川の水はさざ波を立て静かにゆっくり流れていました。我が古里の風景とはまったく違い、印象派の絵のように美しく、強いカルチャーショックを受けたのです。この時私の頭に浮かんだのは、大学生活は京都に住んでみたいと言う強烈な思いでした。そんな決意を秘めて京都大学に進むことができ、大学時代は正に青春そのものでした。「フレンチカンカン」という喫茶店に通いフランス語の歌を習ったり、スキー部の活動費を稼ぐダンスパーティーの企画の手伝いをしたり、やることは盛りだくさんでした。

3回生から田杉競教授のゼミで教授の専門である米国経営学を専攻し、2年間討論中心の勉強をしました。卒業後は地元の中堅企業に就職し、人事や経理の実務をたっぷり叩き込まれました。その後、経営学を生かす職業は経営コンサルタントだと知り、30歳の時コンサルティングファームに入りコンサルタントの卵となりました。そして34歳の時「経営システム研究所」を設立し、独立しました。最初のクライアントは建設会社、化学会社、染工場、食品会社、商社等々でした。

クライアントの社長は皆私より20歳以上も年上で人生経験豊かなオーナー経営者ばかりでした。私は米国経営の知識と人事、経理の実務経験を武器に相談に応じました。3年もすると私の力もぐんと伸びたことを実感するようになりました。40代になり、著書がブレークして大ベストセラー、ロングセラーとなり一躍有名人になり、以降多忙な人生となりました。

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急速に発展するAI(人工知能)化を見据えた30年先の経営を読む

現在会長をしているホロンシステムは、1988年に51歳で創業したIT(システム開発)を中心とした会社です。ソフトハウスの社員研修を委託された会社の若手3人が新しい会社づくりを目指し、私のもとに相談に来たのがきっかけで、非常勤社長を引き受けました。私が半額出資をしてのスタートでした。創立3年目にバブル経済が破綻して大不況となり、7000社あったソフトハウスは1年で約1000社が倒産、合併、廃業等で消えました。4年目には米国発のダウンサイジングが日本を襲い、業界は国から構造的不況業種の烙印(らくいん)を押されました。当社も40%近く売り上げが落ちましたが、リスク分散と資金繰りの強化を創業時から図っていたため、それが防波堤になり危機を乗り越えました。

システム開発はいずれAIに取って代わられると考えています。それに対応するため、2023年から社員へのAIの知識を蓄積するための研修に取り組んでいます。最終的にAIプランナーを育成し、会社の看板にしたいと考えています。同時にロボットの開発も手がけたいと思っています。これからの10年間は二刀流の技術者を増やし、システムとAI技術者を必要とする企業にコンサルできる体制づくり、同時に二足歩行、5本指、人間と同じ皮膚の手触りの素材使用のヒト型ロボットづくりの研究です。30年先の社会で最も高い評価と尊敬される企業は社会貢献度がキーポイントになると思っています。我社の30年先は人間の日常パートナーになるロボットを世に送り出すことです。

当社のビジネスは裏で世の中や会社を動かしている縁の下の力持ちです。これを全ての人々がありがとう、助かっていますと言ってもらえるビジネスに変身させること、その基礎づくりをして次世代に伝えるのが会長の仕事と心得ています。
私の人生のモットーは「生涯現役、生涯前進、生涯青春」です。一歩一歩休むことなく前に進むという「常歩無限」の思想に基づいています。30年先は独りぼっちの人に寄り添うロボットメーカーに会社が変身していることが私の夢です。夢は語るだけではダメで、実現して初めて世の中から評価され、価値が高くなるのです。そんな夢を後世に託して筆をおきます。

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