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過能史光
1976年生まれ、福岡県出身。卒業後システムエンジニアの会社に就くが、当時社長であった父が倒れたことにより、1989年に浜新硝子に入社。その後、硝子開発に精を出し、2003年に社長就任。海外にも足を運び、日本のガラスにはない新たなデザインを取り入れ、「STYLE GLASS」という新たなガラスブランドを作った。「ガラスの料理人」という独自の技術コンセプトのもと、新たなスタイルの硝子空間を作り出している。
https://hamashin-g.co.jp/
※本サイトに掲載している情報は2020年8月 取材時点のものです。

INTERVIEW

私は自分たちのことを「ガラスの料理人」だと思っています。ガラスというのは一枚の材料に過ぎません。これをお客様の多様なニーズやお好みに合わせて専用レシピを編み出し、調理するのが私たちの役割です。安全で安心して使っていただくのと同時に、美しく心地よく使ってもらえるようなガラスを提供していきたいですね。

家業を継ぐことに抵抗があった

過能史光

私はガラス屋の長男として生まれました。子供の頃からスポーツ全般が得意で、中学の頃から野球に夢中になり、高校でも甲子園を目指して野球に明け暮れていたのですが、病気や怪我が重なり断念。初めての挫折を経験しました。周りからは「自分で選んだ道を簡単に諦めていいのか」とか「そんなことでは社会で通用しないぞ」とか言われましたが、今思えば私には必要な挫折だったのだと思います。挫折がいけないことだとは思いません。人生の中で、真剣に追い求めたのにうまくいかないことなんていくらでもあります。この時挫折を経験したからこそ「次は二度と諦めない」と思いましたし、将来のことを冷静に見直すきっかけにもなりました。長男なら家業を継げと言われて育ったので、反発心もあって自分なりにいろんな道を模索し、大学卒業後はシステムエンジニアとして就職しました。忙しく充実した社会人生活を送っていたのですが、実家で父が倒れたのを機に、無理やり連れ戻されるようなかっこうで家業に入ったのです。

「社長の息子だからできて当たり前」「人の倍仕事をしてやっと認められる」そんな言葉を浴びては受け流し、言われるままに仕方なく働いていました。しかし、もし本当にこのまま社長になるなら、こんな気持ちでいては従業員や会社と関わる人たちに対して失礼ではないかと思ったのです。それなら自分がやりたいことを本気でやろうと思ったことが、転機になりました。

ガラスで今までにない面白いことができないだろうかと知人に相談すると、イタリアに行くことを勧められました。すぐにミラノを訪れ、日本とはまったく異なるガラスの文化に衝撃を受けました。日本のガラス業界は決められた仕様のものを大量生産する工業的な要素が強いのですが、欧州にはベネチアングラスやステンドグラスのような美しい工芸ガラスが文化として根付いていたのです。日本にもこんな文化を作ってみたいと思い、帰国してすぐに取り掛かりました。私たちが手掛ける「スタイルガラス」の原点です。

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「失敗したっていい」風土の会社にしたい

若い社員たちとはよく将来の話をします。彼らからは漠然とした不安はあるけど何をすればいいか分からないと思っている声を多く聞きます。2050年頃までに、人口は減って社会も大きく変わっていくでしょう。その目まぐるしい変化の中で自分がどう存在しているのか、想像してみてほしいですね。不安視するのではなく、地に足をつけて生きていくすべを学んでいくことが大事です。2050年に私がまだ生きているか分かりませんが、どんな時代であっても生き抜く人材を今から育成することが私にできることだと思っています。そのためにも、社員たちにはやりたい仕事をさせてあげたい。自分がやりたい人生をストーリー化して、一日も早くその道を歩んでいってほしいです。2050年というと壮大な話のようですが、そこへ向けて今から1年1年、計画性を持って確実に前に進まなければいけません。

もう一つ、現代教育の弊害かもしれませんが、失敗を悪だと思って恐れている人が多いと感じます。いい点数をとって褒められないと価値がないと思ってしまう。だから新しいことに踏み出すのに躊躇(ちゅうちょ)する人が多いのでしょう。失敗しても点数が悪くても、そこからどうするかが大事です。この会社では「失敗してもいいんだよ」という風土を作っていきたいですね。まずは自分がやりたいことを口に出すことが第一歩だと社員たちには話しています。有言したら、あとは実行あるのみです。

社員だけではなく、これからの日本を背負う若者のみなさんにも常に諦めない気持ちを持っていてほしいですし、勇気を持って行動してほしいと思います。誰だって失敗を恐れるものですが、まずは行動を起こさないと、失敗に気づかないまま人生を歩んでしまうことになります。それが一番怖いことです。
どうか、勇気を持ってたくさんの失敗をしてみてください。それを経験値として次の成長につなげることができれば、きっと良い人生が歩めると信じています。

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