- 岩谷直幸
- 1977年生まれ、島根県出身。一橋大学経済学部在学中にテック企業HENNGE創業に関わる。99年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2006年カーネギーメロン大学経営学大学院(テッパースクールオブビジネス) MBA修了。21年、同社日本代表に就任。
- https://www.mckinsey.com/jp
この国の未来を考える時、ともすれば問題ばかりが目につきますが、ネガティブな面ばかり見ても自信を失うだけです。日本が世界に誇る素晴らしい歴史や文化、国としての底力にも目を向け、それを生かすために前向きにアクションを起こすことが大切です。一人でできることには限界があります。日本全体が一つのチームとなり、メンバー一人ひとりがお互いを尊重し合いながら、前に進んでいければいいと思います。
島根の田舎で生まれ育ちました。喘息持ちで体が弱く、小学校低学年ぐらいまでは学校も休みがちでした。小学校高学年から中学まではバスケットボールに打ち込み、万年補欠でしたが体力はずいぶんついたと思います。高校時代は受験勉強の思い出しかないので、大学では何か人と違うことをしようと考えていました。大学の一年上の先輩の誘いで、学生ベンチャー企業(現HENNGE)の創業メンバーとして、勉強そっちのけで起業活動に奔走しました。各大学でアルバイト募集のビラ配り、飛び込み営業、社員の給与体系の設計など、学生なりに手探りで組織運営を学んでいきました。
3年生の夏休みに、外資系コンサルティングファームのマッキンゼーでインターンシップ生として1週間働く機会がありました。同じインターンシップ生と2人1組になって様々なケースの経営課題を与えられます。私は「テーマパークの入場者を増やすにはどうすればいいか」というお題を与えられ、オフィスにこもって議論するだけではなく、外に出てフィールド調査やヒアリングも行いました。刺激的で気付きも多く、実りのある1週間でした。その時に出会った社員の方たちも親身にアドバイスや応援をしてくださる方ばかりで、魅力的な組織だなと思いました。学生ベンチャーを続けるか悩みましたが、より自分の成長を感じられそうなマッキンゼーに入社することにしました。
入社1年目から、様々なクライアント企業の経営課題にかかわる機会をいただきました。時には「今の事業内容ではこの先の成長は難しいかもしれない」といった相手にとって耳の痛いこともお伝えしなくてはならず、先輩に何度も助けていただきました。クライアントのオフィスや工場に何カ月も張り付いて一緒に仕事をしていると、特別な連帯感が生まれます。自分が介入することでクライアントが目標の数字を達成したり、新しいことをできるようになったりすると、大きな達成感がありました。
入社5年目にMBAを取得するために渡米しました。最初は英語に苦戦しましたが、多文化の中で自分の意見をはっきり主張することの大切さを学びました。日本がどれだけ恵まれた素晴らしい国であるか気付いたのと同時に、国際社会で日本の存在感が薄れつつあることへの危機感を覚えました。自分の手で日本企業の国際競争力向上に貢献したいという思いが強くなりました。MBA取得後はシカゴオフィスで経験を積み、帰国後はグローバルチームの一員として仕事をする機会が増えました。
日本代表の大任を拝命したのは昨年末です。私のような若輩者に務まるのか不安でしたが、ありがたいと思いましたし、クライアント企業により良い支援ができるように社内でコミュニケーションを密にしてチームワークを強化していこうと考えました。そのためにメンバー間の相互サポートの仕組みを導入し、役割分担やミーティング方法も改善しました。全体定例会にはマッキンゼーOBをゲストスピーカーに迎え、プロフェッショナルとしての心構えをお話しいただいてメンバーのモチベーションを上げる工夫をしました。社内には様々な役割のメンバーがいます。コンサルタントの性別や国籍も多様で、それぞれの持ち味や得意分野があります。何か光るものを持って入社してくれた一人ひとりの強みと情熱を引き出し、輝かせることが私の役割だと思っています。私が目立つ必要はありません。リーダーだからこそ、奉仕の精神を大事にしたいですね。AI(人工知能)やロボットが進化し、活用が進んでいますが、最後は人の力が大事です。たくさんの方に「ここで働きたい」と思ってもらえるようなエキサイティングな組織を作っていきます。
若者のみなさんと一緒に日本をより良い社会にして、子供たちの世代につないでいきたいと思います。日本に生まれたことに誇りを持ち、高い目標を掲げること、謙虚に学び続けること、異文化を楽しみ良いものを積極的に取りこむことで、唯一無二のアイデアやイノベーションを生んでください。いろんな課題がありますが、前向きに行動し続けることが大切です。現状に甘んじることなく、向上心を持って頑張りましょう。
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