- 今井大介
- 1975年生まれ、千葉県茂原市出身。2000年、埼玉医科大学病院眼科学教室入局、埼玉医科大学大学院入学。05年、医学博士取得。13年、埼玉医科大学病院講師就任。15年、今井眼科医院院長就任、埼玉医大眼科学教室非常勤講師就任。保有免許・資格に日本眼科学会専門医、眼科PDT認定医、オルソケラトロジー認定医、身体障害者福祉法第15条指定医、難病指定医がある。
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できないことは諦めてしまった方が楽ですが、後からそれを取り戻すことは簡単ではありません。もし取り戻そうとしたら、当初の何倍もの努力が必要になるでしょう。だからこそすぐにはうまくできなくても、まず一度やり抜く方向に顔を向けて、一歩一歩進んでみることが必要だと思います。
千葉県茂原市にある今井眼科医院の4代目院長をしています。茂原市は都心から電車で約1時間半の場所にあり、都心の病院に通うのは一苦労なので、なるべくこの地域の中で完結する医療を目指しています。大学病院並みの充実した設備はもちろんのこと、手術にも力を入れています。2024年度は白内障手術1,842件、網膜硝子体手術98件など、実績も年々増えています。以前は今の半分くらいの規模でしたが、患者数の増加と設備のアップデートに伴い、この10年間で2度の増築を行いました。患者さんの緊張を少しでも和らげたいと、モダンな外装と公園のように開放的な内装に仕上げており、「リラックスできる」と患者さんからも好評です。
幼少期は昼夜問わず水泳に打ち込んで、オリンピック選手を夢見ていました。練習はきつかったですが、当時の経験が我慢強さを鍛えてくれました。父が眼科医だったこともあり、気付けば私も眼科医を目指していましたが、実は学生時代は成績が悪く、大学病院で働き出してからも出来が悪く、さらに並行して通っていた大学院でも劣等生で、同期よりも遅れて卒業しました。当初は手術中も緊張して手が震えてしまい、上司が横から手を押さえてくれていたほどです。まわりの人が当たり前にできることが自分にはできない。情けなくて、何度も眼科医を諦めようと思いました。結局、先生方のサポートのおかげでなんとか大学院も卒業でき、この経験は今の自分の後ろ盾になっています。
大学院の先生が卒業時にプレゼントしてくれた治療用レンズは、今でも診察室に置いています。それを見ると、人生で一番辛かった時期を思い出して、また頑張れるのです。先生には心から感謝しています。人間が取り入れる情報の8割は視覚から入ると言われているほど、目が見えることは生きる上で重要です。もちろん聴覚も嗅覚も大事ですが、視覚を失うことは死活問題です。その意味でも、眼科医は大きな責任を伴いますが、その分やりがいもあります。多くの経験を積んできた今は、自信を持って患者さんの眼をお預かりできています。
院長就任から10年。今は一番責任ある立場なので、私が一番忙しく動いているべきだと思っています。大事なことを言葉で伝えるのが苦手なので、スタッフには行動で道しるべを示しています。とは言え、スタッフはすでに良い仕事をしてくれているので、心の中ではとても頼りにしています。心掛けているのは、医療の浦島太郎にならないこと。大学病院に勤務していた頃は嫌でも最先端の情報が入ってきましたが、今の私はそうではありません。地域から求められていることにアンテナを張りながら、常に自分にプレッシャーをかけて、自主的に勉強会に参加したり、自ら情報をキャッチしたりして、情報をアップデートしています。現状に満足することなく、常に次のことを考え続けています。
私、そして当院スタッフが共にこの地域で医療をやることは、必要なことだと自負しています。これからもうまくいかないことや嫌なことがあると思いますが、「やっていけば何とかなるさ」と気負わずに続けていきたいです。課題を見つけ修正し、当院ができることを一つひとつ増やしていくつもりです。無理して一気にジャンプすると後から皺寄せがくるので、あくまで無理なく一歩ずつ。できることを探しながら今より高いところを目指していって、少し高いところから違った景色が見えるようになれば、また新たに足りない部分が見えてくる。この繰り返しだと思います。
私のMy Roadは、継続することです。幼少期から何をやっても人並みにできなくて劣等感を感じてきたからこそ、まずは人並みを目指して、人並みになれたらさらに上を目指す、その繰り返しでここまで来ました。結局はやってみるか、「やっぱりいいや」と投げ出すか、その違いでしかありません。今でこそチヤホヤされることも多いですが、元来の自分が何者かを知っているからこそ、前を向いて継続することの大切さが分かります。多くの人は最初からうまくできないと顔を背けてしまいますし、できないことはやらない方が楽です。でも、そこで頑張らなければ、今をピークにどんどん落ちていくだけです。何より、できていないことに挑戦していく方が、人生楽しいじゃないですか。
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