お客様も私も、先行きが見えない中で日々事業を進めています。自然災害やパンデミック(世界的流行)など予期せぬ事態が相次いでいますが、自分でコントロールできないことを気に病んでも仕方がありません。できる限りの備えをしたら、あとは腹をくくって「なるようになる」と考え、その時々にできる自分のベストを尽くすだけです。結果ばかりに着目するのではなく、その過程を大切にすることが最終的にいい結果につながると信じています。
名もなき企業が数年後の未来を作る
大学院生の時、IT(情報技術)ベンチャー企業でインターン生として働いたことがあります。大学時代には弁護士を目指そうと決めていましたが、いずれ弁護士の数は飽和状態となり、仕事の奪い合いになるだろうという話をよく耳にしていたので、弁護士のクライアントになり得る一般企業のことも知っておきたいと考えたのです。先に就職した同期の友人たちがベンチャー企業で働いていて楽しそうだったので、憧れもありました。
インターン先は今では大きな会社になっていますが、当時は窓もない倉庫のような小部屋に社長も含めて4人だけ。無名の小さな会社が大きく成長していく様子を間近で見ることができたのは、貴重な経験でした。これがきっかけで、ベンチャー企業やスタートアップの成長を支援したいと考えるようになりました。創業間もない小さな会社は、世間の認知度も低く、軽視されがちです。しかし、数年後の未来を作るのは、そのような会社や事業かもしれません。弁護士として、企業の経営を軌道に乗せる手助けをしていこうと決意しました。
大手法律事務所で経験を積み、自分のやりたいことを実現するために独立しました。外部の弁護士というよりも、クライアントが目指す最終的なゴールを共有し、そこへ向かって伴走するようなイメージで仕事を進めています。クライアントの社内チャットツールに常駐し、社員の方たちと同じ目線で社内法務に取り組んでいます。このスタンスが評価され、お客様を紹介していただく機会も増えました。
自分の経験とノウハウを生かす「水先案内人」でありたい
企業だけではなく、フリーランス向けのサービスも提供しています。フリーのエンジニアをしている友人がいて、大企業とも取引しているのですが、これから彼のような働き方は増えるだろうと思います。フリーランスの方にも、企業と同じように法務やビジネスのアドバイスで支援してくれる弁護士がいれば、心強く感じていただけるのではないかと思います。また私自身、法律事務所とは別にメタバース(コンピューターネットワークの中に構築された、3次元の仮想空間やそのサービス)の普及促進事業を運営しています。今後、サイバー空間やVR(仮想現実)空間でも知的財産権や著作権などの法律の問題が浮上するでしょう。裁判所や規制当局は保守的なので、メタバースのような最先端で前例のない分野には苦慮するかもしれません。法律とメタバース、どちらも扱う立場として、その対極な位置にいる双方の橋渡し役になれればと思っています。
以前在籍していた法律事務所は海外にも拠点を置いていたため、国内のクライアントが海外に進出する際、法律のアドバイスだけではなく、現地の特色やリアルタイムな情報を提供し、困った時に助け船を出すことで、慣れない海外での事業展開をサポートしていました。法律の知識以外にも、お客様のためにできることはあるのだなと思ったものです。今も、お客様が法務にかかわる時、メタバースに進出する時、私自身の経験を通じて有益なアドバイスができる「水先案内人」でありたいと思います。企業に守ってもらう道を選ばずに自分で事業を立ちあげるのは、夢のある話ですが、リスクも伴います。そこをサポートしてくれる頼もしい専門家がいれば、もっと前向きにいろんなことにチャレンジする人が増えるはずです。そんな社会を作っていきたいと思います。
法律の知識だけでできることには限りがあるので、今後は資金調達やM&Aの分野もカバーしたいと考えているところです。そのためにも、マンパワーが必要です。今は私と1人の秘書のみですが、共感してくれる仲間を集めて事業を拡大し、支援できるお客様を増やしていきたいと思っています。「早く行きたければ一人で進め。遠くまで生きたければみんなで進め」という言葉があります。仲間を増やすことで、世の中に提供できる価値の質や幅も広がると思います。数年後の未来を作るお客様を支援し続けるために、私たちもクオリティーを向上させ、できることを増やしていきたいですね。