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保科純一郎
1968年生まれ、東京都出身。帝京大学卒業後、91年に証券会社に入社し、個人営業を行う。その後27歳でエスケイに入社し、14年間社員として働く。その間現場や営業、生産管理等を経験し、2010年代表取締役就任。自動車に使われる金属製品のプレス加工やプラスチック製品の加工も手掛ける。
https://www.esukeinet.jp/
※本サイトに掲載している情報は2021年8月 取材時点のものです。

INTERVIEW

10年後、20年後、自分がどうありたいのかを考えて生きることが大事です。私は部下と話をするとき、いつも「10年後の自分を想像できているか?」と聞いています。若い人には「自分が50歳になったときにどういう人になっていたいか想像してごらん」と話します。なんとなくではなく、具体的な将来像に向かって日々生きてほしいのです。

現場を体感したからこそ、現場に過度な要求はしない

保科純一郎

エスケイは、自動車の車体に使われる金属製品のプレス加工や溶接加工、プラスチック製品の加工をしている会社です。トヨタや日産と直接取引する1次下請けの部品メーカーを「ティア1」と言いますが、私たちはティア1に製品を納入する「ティア2」に属します。同業他社が多くある中で、弊社の強みは大型部品の加工ができることです。最大1500トンの大型油圧プレスで加工でき、トラック部品の加工もお手の物。また、約20年前からプレスの自動化を進めてきたことも強みです。元々は工場の立地などが理由で労働力を集められずに講じた策でしたが、人件費がかからないぶん製品の価格を抑えられていますし、多く出た利益を更なる設備投資に回すこともできています。地の利の悪さがむしろメリットを生んでくれたと感じています。

弊社の創業者は妻の祖父で、私は3代目社長です。東京の大学で法律を学び、卒業後は東京の証券会社で個人営業をしていました。当時はバブルがはじけかかっていて、株価がどんどん下がっていた時代。お客さんから門前払いされたり、既存客に取引を継続してもらうことに苦労したりと、とても営業しにくい環境でした。会社からのプレッシャーも残業時間も膨大でしたから、あの厳しい環境を思えば今の苦労なんて何ともありません。証券会社時代は製造業に危うさを感じていて、まさか自分が将来製造業の会社を継ぐなんて思っていませんでしたが、あのころ財務諸表の見方や税金関係の知識を仕込まれたことは、経営者になってからとても役立っています。

義父に声を掛けられて27歳でエスケイに入社し、そこから14年間は社員として現場、営業、生産管理の仕事を経験しました。現場では夜勤もやりましたね。現場で働いた経験はとても貴重で、うちにはどういう機械があるのか、どういうものは作れてどういうものは作れないのか分かりました。現場の本当の実力を知っているからこそ、私は現場に過度な要求をしたり、大風呂敷を広げたりすることはしません。営業の仕事をする中で弊社に対する外部からの評価を目の当たりにし、直すべき部分を知れたことも良かったと思っています。

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正しい仕事をしていれば、利益は後からついてくる

2010年の社長就任直後、東日本大震災が発生しました。自動車業界全体がストップし、弊社も地震の翌日から3カ月間仕事がゼロに。社員を失業させないために細々と工場を動かしたり、あちこちの金融機関からお金を借りたりと、苦しい時期を過ごしました。しかし、私は本当に人に恵まれていて、苦境に立たされたときはいつも先輩方が助けてくれました。取引先の社長さんが設備導入資金を貸してくれたり、取引先の役員さんが勉強会を開いてくれたりしました。客先の幹部の方から言われた「お前の使命は関わる人全員を幸せにすることだぞ」という言葉は常に頭にあります。まわりの方々のおかげで今日も無事に経営できていることに、心から感謝しています。

弊社は社員からの提案で、毎日10分間の清掃時間を5年前から設けています。終業10分前に全ラインを止めて、90人全員で掃除と機械の点検をしているのです。製造業的には一見ロスに見えますが、機械の故障にいち早く気付けたり、翌朝万全の状態で始業できたりすることで、トラブルの発生率が大幅に減り、結果的に生産性が上がりました。一つひとつの仕事を丁寧に、正しい仕事をしていれば、利益は後からついてくると実感しています。また、私は数年前から売り上げや利益の目標を掲げるのをやめました。もちろん会社は利益無しに存続できませんが、私は利益の上げ方と使い方を大切にしたいのです。実は一時期、かなり無理をして営業活動していたときもありましたが、売り上げは上がっても仕事の質が悪くなりましたし、労力の割に報われませんでした。もう、背伸びしたり無理したりせずに、今の取引先との関係を大切にしていきたいと思っています。

今後の目標は、ティア2のモデル会社になること。今の従業員が自分の子どもを就職させたくなるような会社にしたいですね。そのためにも、時代の変化に対応しながら力強く生き残っていきたいと思います。若者の皆さんには、10年後、20年後、どうなっていたいかを常に考えながら行動してほしいですね。特に弊社は製造業なので、会社に来れば何かしら仕事はありますが、だからこそ社員たちには「今日も明日も同じ仕事をして、家に帰っていっぱい飲んで……その過ごし方を一生繰り返すのか?」と話しています。常に高みを目指して、なりたい姿から逆算した行動をしてください。

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