
- 肘井一也
- 1963年生まれ、福岡県出身。88年東北大学卒業後、オリンパス入社。内視鏡関連製品の研究開発、マーケティング、海外調達などに従事。2007年に米国系の認証機関UL Japan、14年に欧州系の認証機関DEKRAサーティフィケーション・ジャパン入社。医療機器認可に必要なCEマーク、QMS、薬事第三者認証、各種規格、海外法規制に従事。20年mk DUO合同会社設立。
- https://mk-duo.com/
私は50代後半で起業したこともあり、長く経営を続けてきた方々とは考え方が少し異なるかもしれません。経営者として甘いと言われることもあるでしょう。自分の中では、経営者25%、コンサルタント50%、エンジニア25%という割合で役割が構成されています。最も大切にしているのは、あくまで「カスタマーの問題解決」。長い時間をかけて課題を解決し、最終的にゴールを達成した瞬間に、カスタマーと一緒に喜びを分かち合えることに何よりのやりがいを感じています。

医療機器メーカーを対象としたコンサルタントをしています。医療機器は規制産業で、世の中に医療機器を出す際は各国の規制をクリアしないと市場展開できない決まりがあるので、その規制要求を満たす製品開発の方法をコンサルティングしています。具体的な方法としては2つ。1つ目は、医療機器の製造ルールをそのメーカー社内で展開するための「品質マネジメントシステム」の構築。2つ目は、その医療機器の「目的定義」と「目的通りにモノができているかの検証作業」を、製品開発段階で構築していくことです。一言に医療機器と言っても、絆創膏から心臓のペースメーカーまでと幅広く、患者さんに与えるリスクも様々ですが、弊社はそれらを全体的にサポートしています。
私はこれまで日本を代表する医療機器メーカーに在籍し、開発者として製品企画・販売支援・設計変更対策といったプロダクトライフサイクル全般を経験してきました。その後は医療機器の規制を審査する米国系・欧州系の認証機関に在籍していたため、医療機器をつくる側・審査する側の視点を併せ持っています。また、世界進出を目指す中小規模の医療機器メーカーに対して、世界基準の製品をつくるための相談に乗れることも強みです。ポリシーは、「有用性」と「安全性」を両立させること。その医療機器を使うメリットを患者さんにしっかり感じてもらえる製品をつくること、同時に、関連するあらゆるリスクを抽出して提言し、可能な限りのリスクマネジメントを徹底しています。
私は学生時代から技術志向が強く、メーカーの同僚だったエンジニアたちも研究畑の人間だったので、「業界一」「世界一」の製品をつくろうと皆で意気込んでいました。強く影響を受けたのは、医療業界でも著名な大学教授との出会いです。当初は業界一の製品をつくっても市場で評価されないことが多く、葛藤していましたが、その教授から医療現場の困りごとやどういう製品なら受け入れられるのかを教示していただき参考にしたところ、医師たちの受けが非常に良くなったのです。約20年経過した今でも、その製品を使った治療がスタンダード。この体験は、今の私の価値観をつくってくれました。


最も注力していることは、相手の期待を超えるアウトプットを出すこと。「カスタマーファースト」「テーラーメイド」「ワンストップサービス」で、カスタマーにとってのホームドクターであり続けたいと思っています。また、コンサルティングは無形商材だからこそ、議事録・提案書・計画書・解説資料・サンプル文書などで情報を可視化することを大切にしています。最終ゴールは、弊社が伴走しなくなっても、カスタマーが自ら考え行動できる力を養うことです。カスタマーとは最初の段階でゴールのすり合わせをしっかりして、何をするのか、どういう成果を出すのか、リスクは何かを明確にした上でスタートします。場合によっては、国内外にいる弊社のパートナーをおつなぎすることもあります。
今後は、弊社がサポートできる範囲をもっと広げていきたいです。現在はいろんな方にスポットで協力してもらっていますが、私も60歳を超えましたし、パートナーたちもそれなりの年齢になってきたので、会社の今後を任せられる人材を探している最中です。近年は医療分野にAI(人工知能)などの最新技術も導入されているので、そういった情報のキャッチアップにも余念がありません。安易に規模を拡大するのではなく、今のポリシーを守りながら成長させていきたいです。
私の信念は、期待を超えることです。せっかく依頼をいただくからには、期待を超えるサービスを提供することが全て。そのためにも、相手の意見をしっかり聞いて理解し、自分の意見をしっかり持ち、それを相手にしっかり伝えることですね。今は生成AIが情報を集めてまとめてくれる時代ですが、最終的に判断して行動するのは人間です。また、人が最も感銘や影響を受けるのは言葉なので、将来的に人間がどのような形態に変化しても、人と人とのコミュニケーションの重要性は変わらないでしょう。若者の皆さんには、好きなことを探し、理想の自分像を持ってほしいです。また、最初に就職する会社から受ける影響はその後の人生に大きく影響するので、慎重かつ大胆に選んでもらいたいと思います。
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