- 樋口一磨
- 1976年生まれ、千葉県出身。99年、慶応義塾大学法学部法律学科卒業、2002年一橋大学大学院言語社会研究科修了、07年University of Michigan Law School, LLM修了。日本とニューヨーク州の弁護士資格を保有。大原法律事務所を経て11年樋口国際法律事務所(現)設立。
- https://www.higuchi-law.jp/
法律事務所は、敷居が高く近寄りがたい場所だと思われがちです。しかし、体調が悪い時に早めに病院にかかったほうがいいのと同じで、困りごとがあれば早めに法律事務所に相談することで、解決の道が開けるということを多くの方に知っていただきたいです。町のかかりつけ医のように、ちょっと不安な時にすぐ駆け込める「かかりつけ弁護士」でありたいと思っています。法律に限らず、日常のささいな悩みも気軽に話せるような、ある意味で弁護士らしくない弁護士を目指しています。
大学は法学部に進みましたが、最初から弁護士になりたかったわけではなく、学問としての法律学に興味を持ちました。勉強を進めるうちに法律というツールを使って人を助ける弁護士という仕事に魅力を感じるようになり、司法試験を受けることを決意。勉強は大変でしたが、知識がどんどん身に付いていくのは楽しいことでした。弁護士になった今も日々勉強です。自分が成長することで人の役に立ち、対価をいただける素晴らしい仕事だと感じています。
就職して3年目に、渡米してミシガン大学のロースクールに通いました。留学は、弁護士にならなくてもいつか必ずしたいと思っていたことです。海外生活はすべてが刺激的でした。厳しくて有名なロースクールでしたが、様々な国から集まった仲間と寝食を共にしながら学ぶことで、一生の友人もたくさんできました。日本という島国を外から見ることで、今まで気付かなかった良いところも悪いところも分かりましたし、視野が広がったと思います。
帰国し、渡米前に在籍していた事務所に戻って働く中で、日本には中小企業の海外ビジネスをサポートする弁護士が足りないことに気が付きました。これから日本が国力と国際競争力を維持していくには、優れた技術力を持つ中小企業が海外で勝負することが必須です。弁護士としてそこに介入し、契約などの法的なサポートを通じて日本の中小企業を支えたいと考え、独立を決意しました。帰国して3年目のことです。クライアントが付くのか不安もあり、また準備中に東日本大震災が発生し、先行きが不透明な時期もありましたが「今より悪い状況はないだろう」と考え、開業を敢行しました。お陰様で多くのクライアントから様々な案件をいただき、経験を積むことでどんどん肝が据わってきたと思います。
自分の手掛けた契約書一通がお客様と従業員、その家族を守るのだという意識を常に持って仕事に取り組んでいます。今後は、私のように日本の中小企業の海外ビジネス支援に取り組む弁護士を増やしていきたいです。それは弁護士の業務領域を広げるためでもあり、この国のためでもあります。英文の契約書を見て「自分には無理だ」と怯む方もいるかもしれませんが、今の時代、AI(人工知能)の翻訳を活用することもできますし、英語堪能な同行者と組んでもいいと思います。目の前のクライアントのために、できることをやるべきです。
私は大手や外資系の事務所の出身でもありませんし、元々ネイティブ並みの語学力があるわけでもありません。それでも国際弁護士として独立してそれなりに活動しています。経済的支援や勤務先の紹介を受けることなく自費で留学しましたし、米国での勤務先も自分で探し、独立後の顧客も自力で開拓しました。業界でも私のようなタイプは珍しいので、日本弁護士連合会から国際活動を推進するためのプロジェクトに呼んでいただくようなことも増え、ありがたいことに業界内での認知度も高まってきたと思います。すべてのお客様の状況を把握し、お互いの顔が見える関係を維持するためにも、あまり事務所の規模を大きくしようとは思いません。いただいたご縁を大切にしながら発展していきたいです。
私は何の後ろ盾もコネもないところから、弁護士になる、留学する、独立するという目標をかなえることができました。志を強く持たなければどれも実現できなかったと思います。「こうありたい」「これがしたい」というイメージが固まったら、その思いを大切に育てていくのです。後はひたすら地道な準備をコツコツと積み重ねるだけです。大きな目標をかなえるためには犠牲も伴いますし、負けそうになることもあるかもしれませんが、強い志があれば自然と力が沸いてくるはずです。もし失敗したとしても、人生のマイナスにはなりません。失敗を経験した人は、何も行動を起こさない人よりもずっと魅力的です。みなさんも失敗を恐れずに頑張りましょう。