- 浜野徹也
- 1975年生まれ。杏林大学医学部卒業後、立川相互病院、東京女子医科大学八千代医療センター総合救急診療科、同内視鏡科を経て、21年に浜野胃腸科外科医院副院長に就任。東京女子医科大学八千代医療センター内視鏡科非常勤講師、東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科非常勤医師、千葉県がんセンター消化器内科非常勤医師。
- https://hamanoclinic.com/
大腸がんを患う人は年々増えていて、国内のがんによる死亡数は肺がんに次いで2位になりました。私たちのクリニックでも、最近は年間40人以上の方に大腸がんが見つかっています。その半数は現役の働き世代で、女性も多く含まれています。内視鏡検査の体制を充実させ、大腸がんで亡くなる方をゼロにすることを私たちは目指しています。医療従事者にとっては何万人といる患者さんの一人であっても、ご本人や家族にとってはかけがえのないたった一つの命。その命を預かっていることを噛み締めながら日々仕事をしています。
1983年に父がクリニックを開業しました。父や母から後を継ぎなさいと押し付けられたことはありませんでしたが、親戚など周囲からの期待は幼心に感じていました。多感な時期には反発心を抱いたこともありましたし、生物学を専攻する大学に一度入学したりもしましたが、「これで本当に良いのか?」と自問していました。結局受験には非常に苦労しましたが、最終的に医学部を再受験し、どうにか入学することができました。最初の動機こそ「親が医師だから」という安直なものでしたが、入学したからには立派な医師になりたいと思い、仲間と切磋琢磨しながら勉強に励みました。医師になり初期研修中にいくつもの診療科を回る中で私が選んだのは救急科でした。
初期研修を終えると、地元にできたばかりの医療センターに入職し総合救急診療科で仕事に没頭しました。救急診療のほか、時間外で専門外来に診てもらえなかった患者さんを代わりに診ていたのですが、その時に内視鏡検査を受ける必要がある患者さんが多いことに気が付きました。救急診療科の上司に「ここの消化器内視鏡科はレベルが高いから行って経験を積むといい」と言われたこともあり、医師5年目に消化器内視鏡科に移りました。気が付けば、導かれるように父と同じ仕事をするようになっていました。その頃から本格的に実家を継ぐことを意識するようになりました。
現在、父が40年積み上げてきたものを大切にしながら、自分なりの工夫を重ねてクリニックを経営しています。胃がんや大腸がんの早期発見のために、レベルの高い検査をたくさん提供することを私たちの使命だと考えています。クリニック側の体制を整えることはもちろんですが、検査を受けようと思ってもらえる方を増やさなければいけません。消化器の内視鏡検査に対して「苦しい」「こわい」といったイメージを持つ方は多いです。当院ではできるだけ患者さんの苦痛を軽減できるように鎮痛剤を使用したり、スタッフ一人ひとりのスキルを日々磨き続けています。特に大腸内視鏡は肛門からスコープを通すので、検査に抵抗を感じる方は少なくありません。当院では男性と女性の医師が検査を担当しているので、男女問わず安心して検査を受けてもらればと思っています。検査をたくさん行うことで、多くのがん患者さんが見つかります。がんが見つかった患者さんが治療を受けて元気になって戻ってきてくれることで、私たちも患者さんから元気をもらっています。
今の私は医師であり経営者でもあります。私たちの思いに共感して一緒に仕事をしてくれるスタッフたちに対する責任があります。一日の多くを占める仕事の時間をスタッフたちがいかにやりがいや楽しみを感じながら過ごせるか、そしてスタッフたちの生活を十分に支えられるかというようなことをいつも考えています。そして、子どもを育てる親がニコニコと気持ちよく働ける仕事をしていることが、その子どもたちが幸せに成長していくことにつながり、明るい未来が作られていくことにもつながっていくと信じています。経営者としてそんな感覚を大切にしたいです。
私は大学病院で膵臓や胆道に関する専門的な診療を担ってきました。その経験も生かして今後は、現在増加傾向で発見後の5年生存率が非常に低い膵臓がんの早期発見を目指していきたいと思っています。膵臓がんは糖尿病との関連も深いため、糖尿病診療をはじめとする生活習慣病診療を充実させて、MRIなどの画像診断まで行っていけたらと考えています。また、管理栄養士による栄養指導も行い、広く地域の健康維持に関わっていきたいです。
様々な失敗をしながら医師になりました。仕事をしだしてからは、駄目だった自分を思い起こしながら二度と駄目にならないように頑張ってきました。何事も投げずに最後までやり遂げる努力を続ければ思いは叶います。そして自己成長とは、自分の「憧れの存在」に近づくことだと思います。誰にでも、足りないものはあります。人生の岐路に立ち選択を迫られた時、自分の憧れに向かって歩みを進めるのは決して楽なことでは無く、平坦な道ではないと思います。それでも、敢えて険しい道へ一歩踏み出していきましょう!
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