profile
古川智昭
1952年、福岡県出身。1970年、松下電器産業(現パナソニック)入社。30代前半に研究開発企画業務の5年間を挟んで知的財産権業務に従事。50歳を目前に、定年までの10年間は松下幸之助氏の経営理念を実践してみたいとの思いが強まり、2003年にアイ・ピー・ファインを設立し、代表取締役社長に就任。現在に至る。
http://www.ipfine.com/
※本サイトに掲載している情報は2022年12月 取材時点のものです。

INTERVIEW

前職は松下電器産業(現パナソニック)で、知的財産権業務に長年、従事してきました。中でも私は特定の業務に特化することなく、あらゆる専門的な業務を網羅できたことが幸いし、その知見を生かして50歳を目前に起業することができました。特許業務の効率化を図るソフトウエア開発と、そのサービス提供を主に行っています。小さな会社ですが、日本の企業の知財部門、研究開発部門のDX化に貢献するのが私の使命だと考えています。

特許業務を大幅に効率アップさせる「THE調査力AI」

古川智昭

多くの企業の研究開発部門や知財部門では、研究開発と並行して、日々特許データベースの中から自社技術に関連する特許を調査し、新技術・新製品の開発や出願戦略が練られています。しかしその数は国内外合わせて一億数千万件、各種条件を組み合わせた検索条件によって関連するものを抽出しても、そのほとんどが必要のない「ノイズ特許」です。そして、そのノイズ特許を人力で一つひとつ取り除く労力は途方もない無駄な作業で、研究開発を阻害する一因となっています。私たちは創業以来、その業務効率化を図るべく、様々な知財管理システムの開発を行ってきました。特にこの約10年は、特許業務の効率化を目的とした「THE調査力」のサービス提供に力を入れてきました。中でも特に、知財部門と研究開発部門それぞれの業務の連携をスムーズにするグループウエア化や、海外特許の日本語データベースとの連携、AI(人工知能)による公報の自動選別機能の追加など、毎年改良を重ねてきました。

そのサービスを現在はR&D知財グループウエア「THE調査力AI」として提供しています。他にもこれまでバラバラだった出力形態の統一化、海外特許の日本語自動取得、大量に含まれるノイズ特許のAI判定機能など、複雑な業務の大幅な省力化を実現させました。日本には約50万人の研究者がいると言われており、彼ら一人ひとりの作業を効率化させ、発明創造に集中できる環境を整えることができれば、自ずと企業の競争力が強化され、この国の技術発展のスピードが増すことは間違いないでしょう。今の日本に足りない挑戦的な企業、事業、技術を創出する風土の醸成に貢献できると信じています。

今後は、現在のサービスの普及拡大が目標です。国内には大企業が3000社ほどあり、まだその数パーセントにしか導入されていませんが、毎年順調に導入社数は増え続け、ニーズが高まってきているのが肌で感じられます。既に次のプロジェクトも進行中で、2023年度には知財情報に限らず、論文や文献、各種開発情報、特許出願、開発テーマ管理など「THE調査力AI」の拡張版となる「R&D情報ステーションIIC」の運用開始を予定しています。このサービスで研究開発部門のDX化がより進むことと期待しています。

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若者に告ぐ。「強い信念を持ち、行動あるのみ!」

今取り組んでいる課題で、もう一つ重要なものは若手育成です。昨年度から、挑戦する若者の応援の一環として、ロードレース世界選手権「moto3」に参戦しているバイクレーサーの山中琉聖プロの公式スポンサーになっています。若者にエールを送るとすれば、常にポジティブでいてほしいということです。ポジティブであることは人生の節目で利点となります。私自身も倒産寸前の危機の時でも、全く不安にさいなまれることがなかったほどで、超がつくほどのポジティブ人間でした。私の前職の松下電器産業の創業者である松下幸之助氏の言葉にあるように、人生には波があり苦しい状態が永続するわけではありません。そのような時こそ、今できることを見極め、適切に対処できるよう、冷静に思考することが肝要です。多くの人は、そういう場合、焦って考えが整理できないまま間違った方向へ突き進んでしまいがちです。一度立ち止まってみることで、見えてくるものが必ずあります。

そして有名な「為せば成る、為さねば成らぬ何事も…」という上杉鷹山の言葉にあるように、私は”強い信念を持って行動すれば何事でも成し遂げられる”という思いを大切にしてきました。超ポジティブだったことも功を奏して、他人の言動や不安な精神状態などで信念が揺らぐことはありませんでした。また仕事への信念が人より強いためか、気がつけばいつも仕事のことを考え、人の3倍は考え続けることが習慣となっていました。そこまで考え尽くすと、ある時、その物事についての解決策が見いだせる瞬間が訪れます。恐らくあらゆる方法を試行錯誤した結果、そのアイデアや情報の断片が、別の形に組み立てられ新たな発想につながったのだろうと思われます。知識がなかったとしても人よりも何倍も調べて勉強して考えること、それが必ず武器になります。

いつの時代も若者が活躍し世の中を変えてきました。そうした歴史を振りかえっても、今日ほど恵まれている時代はないと思います。チャンスは常に目の前にあって、それを捕まえるかどうかは自分次第です。これからの日本を背負う若者には、強い信念を持って、とにかく行動してほしいと思います。必ず何かを成し遂げることができるはずです。考え尽くして分析して、挑戦してください。挑戦するものだけに与えられる可能性は無限大です。

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