- 藤城瑞人
- 1973年生まれ。兵庫県出身。前職では一般社員で入社し、後に常務取締役などを務める。2015年、株式会社ヤマタカの代表取締役に就任。
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事業で大切にしているのは、人からいくら取れるかだけではなく、人にどれだけのことをしてあげられるかを考えること。客先も利益を出し、協力業者も利益を出し、弊社も利益を出す。利益の一部は税金となり国家のためになり、回り回って自分たちに返ってくる。そのような「三方良し」、WIN-WINの関係を保ち続けることによってはじめて、事業は継続していく。そのことを肝に銘じ経営に取り組んでいきたいと考えています。
私の少年時代は、どこにでもいる平凡な子。勉強やスポーツなど、強い意志をもって打ち込む対象もありませんでした。進路もさほど真剣に考えず、建設の専門学校卒業後、求人雑誌を見て「初心者可」と書いてあった建設関係の中小企業に応募し、社会人生活をスタートしました。その会社は解体が主業務でしたが、それすら調べておらず、何も知らないままの入社でした。入社後、数年間は現場監督員として働きました。現場で辛かったのは、ベテラン解体作業員との関係。何も知らない新入社員ということで軽く見られ、仕事の指示をしても誰も聞かず、全く動いてくれない。実際に、自分自身に何の知識、能力もないことがわかっているだけに、なんともいたたまれない気持ちでした。「こうして現場に突っ立っているだけでは絶対に認められず、給料が上がるはずもない」とも思いました。
転機となったのは、当時の建設業界の流れで、解体業でそれまで必要とされていなかった工事計画書等の資料作成が客先から求められることが多くなったことです。そこで会社の中での新規部署として工務部という部署を立ち上げ、工事の施工内容に伴う工法資料を積極的に作成し、資料を基にした工法を採用してもらえる機会が増えました。さらに、直接的に売り上げに結び付く営業活動も開始。工事計画や工法検討の資料は営業の説明資料としても大いに使えるため、受注することに大きく役立ってくれました。
特に大きく評価をしていただいたのが、解体作業が困難な大型プラントの解体工法やダイオキシン類を含む、有害化学物質の対策工事の処理工法で、大阪だけではなく、北は北海道、南は沖縄までの各地で大型プロジェクトや、解体案件を受注するにいたりました。また、そうした成果から自分の中で将来への期待や夢が広がることになりました。
約20年間在籍し、常務取締役まで勤めたが辞任をし、起業したのは2015年。自分の意志というより、仲間たちから求められ、押し上げられた面が強かったように思います。起業にあたって考えたのは、社員の能力や成果が正当に評価され、報酬に反映される会社にすること。そして、時代の変化に合わせ、業務改善、事業創出に積極的にチャレンジできる、生産性の高い企業を作ることでした。
現在、昭和40年代、50年代に作られた建物やプラントなどの解体需要が高まっています。一方で、解体作業における知識不足や技術不足により、有害化学物質が流出したり、 環境を破壊しかねない事態という事故が後を絶ちません。あらゆる建物やプラントの解体の方法に最適解を見つけ出すためには、対象を調べつくし、探究し、問いかけ、熟考する姿勢が必要です。限られた国土を有効に、環境にやさしく、安全に活用するお手伝いをするため、知識と技術を磨き上げ、社会に貢献していきたいと考えています。
また、現在は積極的に取り組んでいるのが海外展開です。英国・ロンドンに営業所を置き、 ロンドン市の建築物に対しての規制緩和から起こっているロンドンの再開発事業への参入を 進めています。日本同様に国土が狭く、建て替えが必要とされ、数百年経過した建物が多く 存在する建物が多いロンドン市で、専門的な工法に応えられる弊社の技術が役に立っています。 また、日本に対して影響力が強い英国の文化を日本で展開したり、英国のデザイナー発掘する といった事にも挑戦しています。 社員から「ロンドンの営業所に配属してください」との声をもらうことも多く、スタッフの 好奇心や関心から新たな展開が生まれることに期待しています。
これからの経営で大切なのは、固定概念を破ること。「この建物やプラント設備はこの工法でなければ解体できない」といった凝り固まった考えから自由に、あらゆる方面から工法を検討、実践していきたいと思います。また、業界の枠にも捉われず、独創的なビジネスを作っていきたいと考えています。人に笑われるようなアイデアでなければ、独創的な発想とは言えません。私の理想は、固定概念を「解体」し続ける経営者なのです。
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