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江幡哲也
1965年神奈川県生まれ。武蔵工業大学(現東京都市大学)を卒業後、株式会社リクルートに入社。「キーマンズネット」など様々な新規事業の立ち上げに参画した。2000年6月に株式会社リクルート・アバウトドットコム・ジャパン(現オールアバウト)を設立し、総合情報サイト「All About」をスタート。05年9月にはJASDAQ上場を果たした。著書に「アスピレーション経営の時代」(講談社)。
https://corp.allabout.co.jp/
※本サイトに掲載している情報は2019年2月 取材時点のものです。

INTERVIEW

2001年にサイトをスタートさせたAll Aboutは、世の中で『見せる広告』が全盛であった時代から先駆けて、広告の情報化にこだわり、発信者の顔が見える総合情報サイトを確立してきました。現在では、会社をグループ体制にし、Eコマース(電子商取引)や生涯学習といった複数の事業を展開しています。生活者、ユーザーの皆さんの多様化が進む中で、サービスを提供する僕ら自身も、色々な個性が集まっていなくてはと思っています。複数の人間の良いところが紡がれてつながることで、事業に弾力性や多様性をもたらすことが成功への要件だと感じています。個々人が活躍する環境を作った上で、一人ひとりが仕事を楽しめるかどうかは、会社の中で社員が力を発揮するための重要な鍵であり、同時に事業も収益を上げていくという両立をかなえながら、これからも長く日本の環境変化に役立つような事業体、プロダクトを作っていかなければと思っています。

人が生み出し、人が使う情報を広告に。

 江幡哲也

All Aboutを立ち上げた時代は、インターネットの草創期と呼ばれる時代で広告の考え方も今とは異なるものでした。例えばWeb広告ではバナー広告がはやっていて、たとえ読み手が求めていないバナーであっても、見せた時点で売り上げになるというものが主流でした。そういう時代であっても、そこに疑問を持ち「本当に役立ついい情報を、使いやすい形で出来るだけ無駄なことなくユーザーが使える仕組みを作りたい」と思い、広告も一つの貴重な情報になり得るのではと考えたのがサイトスタートのきっかけでした。

当時から「インターネットによって、個人が情報を自由に発信できるようになっていく反面、情報が溢れかえる社会になるだろう」ということを見据えており、そこで問題になるのは〝情報の信ぴょう性〟であると考えました。広告も、〝選ばれる情報〟にならなくてはいけないと考え、雑誌のタイアップ広告のように、編集型の広告というものにこだわり、事業をスタートさせました。とはいえ、当時の時流は違いましたので、新しい広告の概念をゼロから説明し浸透させていくことは一足飛びにはいかず、ある程度の時間も必要でしたし、苦労した時期でもありました。それでも、僕らは、それが本質であると信じ、現場が一丸となってやってきて、ようやく数年たって軌道に乗り始めたのです。

All Aboutの強みである「顔の見える専門家が、生活者のスタンスに立って情報を発信していくこと」は、時代が変わっても普遍的に必要とされ続けるでしょうし、新しいものを喚起したり、理解してもらう、という広告の一つの役割について考えた時、広告そのものを役立つ情報とすることで、生活者の皆さんに使ってもらえる接点が生まれることは非常に貴重なことです。こういったことがいわゆるコンテンツマーケティングと呼ばれるものであり、その分野で我々がトップバッターかつ、リーディングヒッターとしてやってきているゆえんはそこにあると思っています。インターネットやテクノロジーは、皆さんが見聞きされる以上に進化のスピードが上がっています。しかしどんなにテクノロジーが変わろうが、使う側も、企業活動をする側も人間です。人の欲求というのは変化していくものですから、人の部分を軸に置くということは理にかなっているのです。All Aboutの理念は、「システムではなく、人間。」。長く続いていく事業のコアはそこにあると考えています。

  •  江幡哲也
  •  江幡哲也

グループ化と、新たな事業への挑戦。

All Aboutが新しい変化の時期を迎えたのは2011年でした。2008〜2010年は、リーマンショックによりインターネット業界も足踏みをした時期。メディアビジネスとしては、ある程度の規模にもなっていた中で、それまで売り上げの9割が法人のお客様に偏っていたところを、個人のお客様からいただく事業の割合も増やしながら事業全体を大きくしていくことを考え、新規事業を立ち上げ始めました。一つは、現代まさに問題視されている超少子高齢化社会について、当時から予測をたて、生涯学習やヘルスケアの分野に着手しました。そして、もう一つの事業分野がEコマースです。インターネットビジネスの分野で、圧倒的に伸びていくであろうと予測していたこの分野で、自分たちのビジョンにあったものをまずは創ろうと考えました。そこでサンプル百貨店というサイトを運用するベンチャー企業をM&A(合併・買収)させていただき、同時に会社全体を事業ごとにグループ体制に変更しました。通常、こういったケースでは一事業部として取り込むことが多いのですが、あえてグループ会社化として独立させたのには、そこで働く社員と事業にとって大きなメリットがあると考えたからです。

まず一つ目のメリットは「仕事を自分ゴトにし楽しめること」。自分の事業への関与度が大きかったり、お客様の役に立っている実感を持てることは、仕事をする上で高揚感や楽しさにつながると考えた時、組織が小さい単位の方が実感しやすいと考えました。

二つ目は、専門性を強化できることです。インターネットの進化スピードが上がり、各分野も専門性が増します。すると、一事業部が全体を俯瞰(ふかん)して見ていくことは難しくなります。組織を細分化することで、専門性を高め、事業内の意思決定スピードを上げました。

三つ目は、多くの人間が社長になれるということです。社長というのは、ほかの役職と異なり、決まった役割があるわけではありません。関わること360度すべてが自分ゴトになります。最初は社長という役割に不安を感じる者もいましたが、みんな良い変化と良い成長を遂げたように思います。

よく会社は人を育てるといいますが、僕は人というのは育つものでしかないと思っています。会社が出来るとしたら「育つための環境を作ってあげて、伴走してあげること」でしょう。もちろん、環境だけあれば全てうまくいくわけではないし、本人が火をともし、楽しいと思うところまで努力することが必要です。小さいことでもいいから成功体験を重ねていけば、それがきっと楽しさを支えていきます。仕事は楽しめば、楽しんだ分だけ力を生み出します。All Aboutでは創業時から、自立した活躍のできる個人を増やしていくことを目標としてきました。人を軸においた事業の成長を目指すらしく、これからも日本の社会システムに少しでも役立つものを作り、人とITの変化スピードのギャップを埋める「人に優しいプラットフォーム」を提供し続け、中・長期的に続く事業を2020年に向けて作っていきたいと思っています

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