- 大門弘治
- 1971年生まれ、三重県生まれ。96年、大阪歯科大学卒業。奈良県藤井歯科医院を経て、桔梗が丘大門歯科医院へ。2006年から三重県歯科医師会学術委員長、21年、医療法人育人会桔梗が丘大門歯科医院理事長に就任。デンツプライシロナのアストラテックインプラントの講師も務める。
- https://daimon-dc.jp/
歯科医として、細部にこだわりながらも大胆に進むということを大事にしています。目新しいものには興味がありますしどんどん挑戦したいのですが、「最新=最善」とは限りません。本当にエビデンスやバイオロジーに基づいた治療であるかを自身の臨床経験と合わせて十分に考えた上で取り入れます。判断基準は「自分の家族にも受けさせたい!」と思う治療法であるかどうか。決断するまでは慎重ですが、ゴールまでの道筋を頭の中で描けたら後はスピード感を持って迷いなく突き進むようにしています。
歯科医の父を見て育ったので、私も自然な流れで歯学部へ進学しました。子供の頃は料理人や設計士のようなものづくりの仕事に魅力を感じたこともありました。自分の手先を駆使して患者様に喜んでもらう歯科医の仕事は、ある意味ものづくりと似ているかもしれません。学生時代はクラブ活動やアルバイトに明け暮れていましたが、最後の1年は国家試験に向けて猛勉強しました。合格して最初の2、3年は基本的な技術を身に着けるために高名な先生のもとで修業させていただきました。
毎日同じことの繰り返しで、あまり楽しくないと思った時期もありました。しかし、ある講演で「後ろ向きな気持ちで仕事をしていればそれはスタッフや患者様にも伝わってしまうし、誰も幸せになれない」と話すのを聞いて、まさにその通りだと思いました。歯科医を目指し始めた頃の自分が腕を上げることで患者様に喜んでほしいという気持ちを思い出し、一層勉強と技術の向上に励むようになりました。初めてインプラント治療に出会い、治療成績のすばらしさに感動したのもその頃です。父のクリニックで一緒に働き始め、インプラント治療に注力するようになりました。患者様の体の内部に異物を埋め込むのは、歯科治療の中でインプラントだけです。失敗は絶対に許されません。それでも取り組んだのは、審美的にも機能的にも優れた結果を出せる治療法だと確信したからです。自分が歯を失ったら、迷わずインプラント治療を選ぶでしょう。ところが、顎の骨の厚みが足りないためにインプラントができない患者様も少なくありませんでした。当時は、顎骨を再建してまでインプラント治療を行える医院は日本には少なく、なかなか解決できずにいました。
その後、研修でインプラント発祥の地スウェーデンに赴き、顎の骨を増やす骨造成術を見学して感銘を受けました。この方法だと、今までインプラントを諦めざるを得なかった患者様でも、治療を受けていただける!と、自分もこの道を極めたいと思い、現地の先生方に師事しました。この頃から時間さえあればインプラントの勉強会や海外研修に参加するようになりました。趣味の釣りがほとんどできなくなってしまいましたが、苦になりませんでした。むしろ、釣りに代わる新しい趣味のようで楽しかったです。
最初は、インプラント手術の予定があれば何日も前からそのことで頭がいっぱいでしたし、就寝中に夢に出てくることもありました。しかし私には、ありがたいことに師匠と呼べる先生方が国内外にいて助けてくださったので、失敗もなく実績を重ねることができたと思います。そんな私が教える立場となった今、若い医師たちには「自分にも余裕のない時期があった。不安なことがあればいつでも力になるから相談してほしい」と話すようにしています。最近は一般の患者様だけでなく、他院からの紹介で来院する患者様も増えてきました。今後は、自身の技術の向上を図るだけでなく、インプラントの技術を後進に伝える活動や臨床研究にますます力を入れて、歯科界に貢献したいと思います。
あとは、パフォーマンスを十分に発揮できるよう、健康に気を付けながら人生を楽しんでいきたいですね。自分が元気じゃないと患者様を幸せにすることはできません。健康のためには、仕事もプライベートも楽しく過ごすことが大切です。休日もいつもと同じ時間に起床し、趣味の料理やガーデニング、大好きなお酒を楽しんでいます。だらだら過ごしていると一日を損した気分になるので、何もせず1日を終えることはありません。休日前夜に「明日は何をしようかな」と考えるひとときが好きです。引退したら、釣りを再開し、旅行やアウトドアを楽しむのが夢です。
若い人の可能性は無限大です。少しでも気になることがあれば、まずやってみてください。「どうせ無理」だなんて思わずに、どうすればできるかを考え、どんなことにもチャレンジしてほしいと思います。その中で本当に好きなことを見つけ、それが仕事につながれば最高です。人生は一度きり。人生を思う存分楽しんでください。
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