profile
長南収
山形県出身。鹿児島大学水産学部卒業。1980年にキユーピー株式会社に入社。生産工場に配属。8年後に営業へ異動し広域家庭用営業部長、支店長、常務などを経て、2017年からキユーピー代表取締役社長執行役員に就任。現在にいたる。
https://www.kewpie.co.jp/
※本サイトに掲載している情報は2020年11月 取材時点のものです。

INTERVIEW

皆さんが当社をイメージする時に思い浮かべるのは、おそらくマヨネーズやドレッシングといった商品になるでしょう。実際に当社はマヨネーズの製造販売から創業し、今日にまで食品業界の中で力強く成長を続けてきました。しかし現在、マヨネーズの売り上げ比率は全体の約2割。マヨネーズだけでなく、ドレッシングや調理食品、ファインケミカル、そして海外など、幅広く展開しています。当社の創始者の思いである「良い商品は良い原料からしか生まれない」との原点を引き継ぎながら、今後も邁(まい)進を続けていきたいと考えています。

地を知り、人を知ることの大切さ

長南収

幼い頃はいたって平凡な子どもでした。小学生の頃は外で遊ぶことが大好きで、中学高校ではサッカーに興じました。どちらかと言えば学業よりも体を動かすことが好きなタイプで、山形県の鶴岡という雪国に生まれ育ち、学生時代を謳歌(おうか)してきました。高校卒業後は鹿児島大学の水産学部へ進学。サッカーを続けたい気持ちもあったのですが、先輩の誘いを断れず、カッター部(救命艇)に所属することになります。とても過酷なスポーツで上下関係も厳しかったものですから、私にとっては地獄のような日々でした。その後、大学4年生で進路を考える時期に差しかかり、たまたま当時の担任教授から誘いを受け、夏休みの期間を利用したキユーピーのアルバイト実習に参加することになったのです。その実習を機に採用面談にこぎつけ、内定をいただいたのが入社のきっかけでした。
実習現場となっていた生産工場は、働く従業員が地域に根付き、地元でイベントを催しては社内外問わず仲の良い関係を築くなど、非常に家族的で親切な先輩方ばかりでした。実習を通じてキユーピーという会社を改めて知る機会にもなり、そうした人の良さを体感できたことが私の入社を後押しする要因にもなっています。
入社後は希望通り生産工場への配属でしたが、8年目には大阪支店の営業に異動になりました。当時、営業経験は全くなかったのですが、なぜか支店の大得意先となる、関西を拠点に43店舗を展開する大手量販店の担当になりました。しかし、すぐにはセールスの結果が出ず、心労も重なる中で夜も眠れない日々がしばらく続きました。一時は退職した方がいいのではないかと思い悩んだこともあったほどです。
まずは自分なりにできることをやろうと心に決め、店舗の開店前に品出しを率先して手伝ったり、閉店後は陳列のお手伝いするといったことを毎日続けていきました。すると、そんな姿をずっと見ていた、販売力No.1の店舗の責任者の方が、「一度催事をしてみてはどうか」と声をかけてくださったのです。私にとってはまたとないチャンスでした。そして実際に同僚達の力も借り催事を行うと、期待以上の売り上げの結果を出すことが出来ました。
それがきっかけとなり、大阪支店の目標売り上げをカバーできるようになりました。その統括マネージャーには大阪を離れてからも良いお付き合いを続けさせてもらっています。
我々のような商いを継続的に繁盛させていくためには、地を知り、人を知ることが大切だと思い知らされました。当社の転勤者には、売り上げや商売に走るのではなく、まずはその土地を知り、人を知ることから始めなさいと伝えています。

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情熱のない所に、花は咲かない

我々の最大の成長の原動力は何かと聞かれれば、それはやはり経営理念を大切にすることでしょう。当社の社是には「楽業偕悦」という言葉がありますが、これは志を同じくする人が、仕事を楽しみ、困難や苦しみを分かち合いながら悦びをともにするという考え方です。社長就任後もそうした文化や教え、理念を大切にした経営を心がけてきました。
私は1980年に当社へ入社しましたが、それから約10年は名刺に肩書きは付いていませんでした。当時は社長も部長も名刺には役職名を記載していなかったのです。今は役職名こそ記載されましたが、現在も社内では役職名で人を呼ぶことはなく、全員がさん付けで呼ぶことが当たり前。社長室もなく、私自身はフリーデスクで仕事を続けさせてもらっています。「肩書きで仕事をしない」というのが創始者から代々引き継がれてきた教えでもあったからです。そうした点にも、当社ならではの「楽業偕悦」の文化が見て取れるかと思います。
またマヨネーズのような商品はこれまで、料理の名脇役として役割を果たしてきたように思います。決してメインディシュではありませんが、これほど様々な料理に生かされる名脇役はないと思っています。
しかし、我々の事業におけるマヨネーズの売り上げ比率は全体の約2割。他にも多くの事業や魅力ある商品があることも事実です。キユーピー=マヨネーズというイメージから昇華させ、「名脇役から主役へ」ということを社長就任後のテーマの一つに据えてきました。
2019年には創業から100周年を迎え、7期連続で過去最高益を更新させていただくことができました。2020年はコロナの影響を受け収益減となりましたが、次の100年もより良い姿を追求していきたいと考えています。
キユーピー3分クッキングも50年以上続く1社提供の料理番組で、ギネスにも認定されているほど。そうした永続的なブランドを育てていきたいと思いますし、社会変化に即した創意工夫と挑戦を続けながら、成長していければと考えています。
人生はマラソンかもしれませんが、経営はゴールのない駅伝です。皆さんも社会に出たということは一人の経営者です。会社の歯車にならずにタスキに汗をかき、次の方へ受け渡していってほしいと思っています。
そして、いかなる才能や知識があっても情熱のない所には花は咲きません。自分に与えられた環境の中で不備や不満があっても一生懸命に取り組むことで、諦めない先に初めて見える世界があるはずです。

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